TOPアメリカン・プロレスTNA 2008年→TNA:Lockdown 4/13/08

TNA:Lockdown 4/13/08の分析


名勝負 TNA王座戦、ケージ・マッチ:カー ト・アングル(ch)vs.サモア・ジョー
好勝負 なし

@Xディビジョン王座戦、エクスケープ・マッチ:ジェ イ・リーサル(ch)vs.カレー・マンvs.ソンジェイ・ダットvs.ジョニー・ディバインvs.シャーク・ボーイvs.コンセクエンスズ・クリード
 まともに試合をせずスポット頼みながら
 各自の立ち位置を上手く活かせている展開ではあります。
 平均レベル。

Aクイーン・オブ・ケージ:ベルベット・スカイvs.サリナスvs.ラカ・カーンvs.ロキシー・ラヴォーvs.アンジェリーナ・ラブvs.ジャクリーンvs.トレイシー・ブルッ クスvs.クリスティ・ヘミ
 リング・サイドから始まりケージに入った2人が
 シングルで激突し勝者がクイーン・オブ・ケイジの称号に輝くというもの。
 何もないまま2分持たずにシングルへ移行する辺りしょぼすぎますが
 シングルになってからも特別見所はなかったですね。
 悪い試合。

Bケージ・マッチ:キップ・ジェームスvs.BGジェームス
 今更なカード。
 どうせ組むのならディベート・マッチにでもしておくれ・・・。
 悪い試合。

Cカフド・イン・ザ・ケージ:MCMG vs.スーパー・エリック、カズvs.LAX vs.スコット・スタイナー、ピティ・ウィリアムスvs.ロックン・レイブ・インフェク ションvs.ブラック・レイン、レリック
 手錠でケージに繋がれたら脱落というルール。
 とにかく人が多い上、脱落してもリングに残ったままなので邪魔になるだけ、という
 これまたギミック・マッチの失敗。
 悪い試合。

Dケージ・マッチ:ゲイル・キム、ODB vs.オーサム・コング、ライシャ・サイード
 チアリーダー・メリッサがサイードというギミックをまとってデビュー戦。
 試合自体は良かったのですけれど
 あのサイードというギミックはメリッサにとって邪魔ですね。
 黒装束に身を包んでいるキャラの割りに
 メリッサはスタイルが激しいしプロレスができすぎる。
 平均より少し上。
 
Eケージ・マッチ:ブッカーT、シャメールvs.ロバート・ルード、ペイトン・バンクス
 単にブルックスがバンクスになっただけで
 いつまで同じ事をやっているんだという感じ。
 ブルックス<バンクスなだけまだ見れる物はありますけれど・・・。
 少し悪い試合。

Fリーサル・ロックダウン:トムコ、AJスタイルズ、チーム3D、ジェームス・ストームvs.クリスチャン・ケイジ、ケビン・ナッシュ、ライノ、スティング、 マット・モーガン
 ケージ上ダイブを2回やったりピンポイントの技の使い方で
 見せ場を作ろうと一部で見られましたが
 面子が面子ですし所詮リーサル・ロックダウンという事で
 どうも面白くない。
 最後のケージ上の上にラダーを立てるスポットも
 事前にケージ網が破れるというアクシデントのせいで凄いの前に危険という印象を抱くし・・・。
 まあこういうハードコアに走るなら
 試合形式をHIACとかトリプル・ケージ・マッチにしてくれないかな、と。
 まあまあ良い試合。
 
GTNA王座戦、ケージ・マッチ:カー ト・アングル(ch)vs.サモア・ジョー
 まず試合前にカートがカレンを退場させた事を評価します。
 不透明決着が多いという事を
 番組内で暗に認め改善する意思を示しました。

 さて試合ですが・・・
 カートよ、天晴れ。
 MMAスタイルでやると予告されていたとはいえ
 MMAを要素としてではなく
 風景として直輸入するとは思いませんでした。
 まずマウントを取って
 のりかかってパンチするなりサブミッションを狙いにいったりというアレですね。
 その間に純プロレス・ムーブをハイ・スポットとして挟む。
 言うなれば今までの物が
 プロレスで持って格闘を表現した物ならば
 これはMMAで持ってプロレスを表現しています。

 TNA信者に媚びて大外れになるかと穿った見方をしていましたが
 これは衝撃的且つ革新的なアイデアです。
 観客は微妙な反応で只騒いでいる感がいつもより強いですし、
 つまらないなんて声も聞かれますが
 そんな奴は放っておきなさい。
 時代の先端を行く芸術家が大衆に理解されるとは限りません。
 ゴッホしかり。カフカしかり。
 カート・アングルよ。
 この試合を誇りに思いなさい。
 この日TNAはTrue Wrestlingになったのですから。

 もう1つ素晴らしい点を書きとめておかねばなりません。
 MMAに合わせダメージ値を見せずに
 決定打という要素を取り入れた
 アンチ・クライマックス方式を取っているのですけれども締め方が妙手であります。
 この特異な空間を切り分ける境界装置として使っていたケージを
 最後の最後で原点回帰させ武器として1回だけ使います。
 ああ、真に素晴らしい。

 次に欠点を振り返ります。
 まずジョーが敗北したらプロレスをやめると宣言しています。
 このストーリー・ラインは頂けません。
 純プロレスならともかく
 ここまでMMAを取り込んだ試合には合いません。
 拒否反応も予測できた状態で
 会場の観客の注意をリングに向ける要素を取り除くのは危険です。
 観客は試合を殺し得るという事は
 毎度のようにWWEを見上げているTNAなら理解していたはずです。

 そして何より最大のミステイクは、
 いやこれを過ちと表現するのは酷でしょうか、
 では最大の惜しむべらく点は、と言い直しますが
 この舞台に立つべき者はジョーではなかったという事です。
 ジョーは幾多の格闘表現をし
 その中でムーブをMMAからデフォルメさせましたが
 そこで表現しているのはあくまで
 強さを欲するという原初的欲求による格闘であり
 格闘競技ではありませんでした。
 それ故プロレスラーである彼が
 MMAの定型的攻防をそのまま真似する事が要求されるこの試合で
 完全に力を出し尽くせたか、それは大いに疑問です。
 彼は最善を尽くしましたが
 非選定者のトップに過ぎませんでした。

 では選ばれし者は誰か。
 このアイデアが自身を完全に成就できる人間は2人います。
 1人はプロレス、アマレス双方の
 最高の経歴を持つゴールド・メダリスト、カート・アングルでした。
 折りしもWWE脱退後彼はMMAに興味を示します。
 それは経歴を利用したアングルである可能性は多分にありますが
 実際にMMAのトレーニングをしていた事は間違いありません。
 そしてこの世界には”二重の歩く物”が存在します。
 それこそブロック・レスナーその人でした。
 アマレス、プロレスのキャリア、
 MMAへの興味(彼は実際に行動に移したという点で異なりますが)。
 それは非常に酷似しています。

 カート・アングルとブロック・レスナー。
 この舞台でこの2人が闘っていたならば
 名勝負というレベルを越えて歴史になっていたでしょう。
 私はそれを試合中常に想像してしまうのです。
 ジョーはレスナーの存在に破れ
 運命を覆すことができませんでした。

 Lockdown 2008の一戦は
 カート・アングル対サモア・ジョーの数え歌のトップに位置すると共に
 2008年の年間最高試合候補に挙げられる試合となりました。
 TNAの歴史の中でヘビー級の試合としてはトップにランクしますし
 プロレスという歴史の中でも進化の1つを示したという点で特筆に価します。
 ぎりぎり名勝負。
 私はカート・アングルがインディーの野に降りた事を初めて感謝したのでした。


@TNA王座戦:サモア・ジョー(ch)vs.カート・アングル(4/24/08)
 Impactという事で深く突っ込みはしませんでしたが
 序盤の執拗なヘッド・ロックや
 終盤前の場外落下でジョーが脚を痛める筋など
 意外にしっかりした内容です。
 試合時間も16分+CM×2ですからね。
 中々良い試合でした。

他ファンとの交流会時のインタビューを収録。

総評
 前半がひどく全体の評価は低くなりますけれども
 メインだけで手に入れる価値はあります。
 特典の1戦も結構良いですし。 
 (執筆日:7/4/08)
DVD Rating:★★☆☆☆

注目試合の詳細

GTNA王座戦、ケージ・マッチ:カート・アングル(ch)vs.サモア・ジョー

  カートがカレンを退場させゴングが鳴る。
  打撃で牽制。
  カートがロー・キックを放つ。
  ジョーがロー・キックを打ち返す。
  受け止められるや脚を取りに行く。
  カートがアンクル・ロックを狙うも
  ジョーの方が早くアンクル・ロック。
  カートがロープを掴む。
  カートが押し倒し倒すもロープ・ブレイクで離れる。
  カートがタックルからマウント・ポジション。
  パンチを入れるもロープをつかまれる。
  カートがタックルを狙いに行く。
  ジョーは頭部を蹴り飛ばすとマウントにいこうとする。
  カートは下になりながらも不利にならないようにもって行きロープを掴む。
  ジョーがカートの足を踏みつけ腰投げも次にいけず逃してしまう。
  もう1度腰投げで倒そうとする。
  カートが耐えバック・ドロップ。
  上にかぶさり変形のチキン・ウィング・クロス・フェイス。
  ジョーがロープに脚をかける。
  ジョーを殴りつけフロント・ヘッド・ロック。
  逃れられるもベリー・トゥー・ベリー。
  カバーするもジョーがロープを掴む。
  アッパーカートで倒すとマウントでパンチ。
  アーム・バーを狙う。
  ジョーがカバーの体勢に持っていこうとする。
  カートがロープを掴む。
  ジョーが殴り返しロープに走る。
  カートが脚にラリアット。
  4の字を決める。
  ジョーが苦しんでいる。
  何とか反転させるもカートがすぐロープを掴む。
  ジョーの脚を蹴りつけレッグ・ロック。
  同時にヘッド・ロック。
  ジョーは起き上がるとロープに走る。
  カートがベリー・トゥー・ベリーを狙う。
  ジョーが耳を叩きラリアット。
  両者ダウン。
  カートがコーナー上へ。
  ジョーがマッスル・バスターを狙う。
  カートがサンセット・フリップに切り返しアンクル・ロックへ。
  ジョーは体を反転させ蹴飛ばすと突進してきたカートにSTO。
  カバーするもカウント2。
  カートがサミング。
  ジョーがパワー・ボム。
  カウント2で返されるやストロング・ホールド。
  ロープに這い寄るカートを中央に戻しSTF。
  カートが決められたままアンクル・ロックを決める。
  ジョーが痛みの余りロックを外す。
  ジョーが体勢を入れ替えクロス・フェイス。
  カートが何とか逃げロープを掴む。
  レフェリーと言葉を交わしているジョーに突進。
  ジョーがクロス・フェイスに捕らえる。
  カートは起き上がるとアングル・スラム。
  カバーするもカウント2。
  アンクル・ロック。
  ジョーが反転して蹴飛ばそうとするも防がれる。
  反転させるとスリーパーに引きずり込む。
  カートはレフェリーを掴んで動きロープを掴む。
  レフェリーに文句を言うジョーにカートがアングル・スラムを狙う。
  ジョーは逃れるとケージにぶつけスーパー・キック。
  そしてマッスル・バスターで1,2,3!
  ジョーが新チャンピオンに!

試合結果

@Xディビジョン王座戦、エクスケープ・マッチ:ジェイ・リーサル(ch)vs.カレー・マンvs.ソンジェイ・ダットvs.ジョ ニー・ディバインvs.シャーク・ボーイvs.コンセクエンスズ・クリード
Aクイーン・オブ・ケージ:ベルベット・スカイvs.サリナスvs.ラカ・カーンvs.ロキシー・ラヴォーvs.アンジェリーナ・ラブvs.ジャクリーンvs.トレイ シー・ブルックスvs.クリスティ・ヘミ
Bケージ・マッチ:キップ・ジェームスvs.BGジェームス
Cカフド・イン・ザ・ケージ:MCMG vs.スーパー・エリック、カズvs.LAX vs.スコット・スタイナー、ピティ・ ウィリアムスvs.ロックン・レイブ・インフェクションvs.ブラック・レイン、レリック
Dケージ・マッチ:ゲイル・キム、ODB vs.オーサム・コング、ライシャ・サイード
Eケージ・マッチ:ブッカーT、シャメールvs.ロバート・ルード、ペイトン・バンクス
Fリーサル・ロックダウン:トムコ、AJスタイルズ、チーム3D、ジェームス・ストームvs.クリスチャン・ケイジ、ケビン・ナッシュ、ライノ、スティング、マット・モーガン
GTNA王座戦:カート・アングル(ch)vs.サモア・ジョー(新チャンピオン!)
@TNA王座戦:サモア・ジョー(ch)vs.カート・アングル(4/24/08)