TOPアメリカン・プロレスPWGPWG 2011年 →PWG:Steen Wolf 10/22/11

PWG:Steen Wolf 10/22/11の分析


名勝負 PWG王座戦、ラダー・マッチ:ケビン・スティーン(ch)vs.エル・ジェネリコ
好勝負 タッグ王座戦:ヤング・バックス(ch)vs.フューチャー・ショック(アダム・コール、カイル・オライリー)

@ピーター・アヴァロン、フレディー・ブラヴォー、レイ・ローザスvs.フェイマスB、クリス・キャデラック、キャンディス・ラレー
 技をかける際の支点がずれている問題外、レイもいるが
 他はPWGの新しいアンダー・カードとして起用しても良いかな、と思わせますね。
 キャデラックはSSPキャノン・ボールなど
 滅茶苦茶な発想で新技を生み出してくれそうだし。
 オープニングとして素晴らしい盛り上がりでしたが、
 正直リングでのアクションと比べると盛り上がりすぎ。
 平均レベル。
 
ATJパーキンスvs.ロッキー・ロメロ
 両者トリッキーが持ち味とはいえ
 レフェリーをあんな形で絡ませてはカバナのような色合いになります。
 技術を使ってコメディーなものを見せるならそれで良いけれど
 結局そんな導入を取る必要性を感じさせない中盤につながります。
 それ故に無色に見える戦いです。
 何を見せたいのでしょうか。
 それぞれの攻めの配分も悪く適切な一進一退も生まれていませんね。
 更にレフェリーがカウント3を取り損ねるミス?。
 そのアドリブで行った攻防は良かったので
 普通にやれば良い試合になれるカードなんだろうけれども。
 悪くない試合。
 
Bロックネス・モンスターズvs.ファイティン・テイラー・ボーイズ
 プロレスは競技ではないのでムーブが綺麗である必要は必ずしもありません。
 ただ綺麗に打てる必要はある。
 綺麗に打てる、つまりコントロールできるからこそ
 疲労に合わせて崩したり、と様々な表現を行うことが可能になる。
 話がずれました。 
 ロックネスのムーブの拙さ、これは幾らなんでも看過できない、という事が言いたかったのでした。
 手数を多くした連携技を売りにするので余計目立ちます。
 時にケリー・ケリーのロープ・ワークが被る程でした。
 一方でテイラー・ボーイズ。
 こちらはロックネスに比べしっかりしていますが
 まだスポット・フェストの試合運びが抜け切れていない様子。
 粗い部分はありましたが観客席へのパワー・ボム+ダイブという
 ビッグ・スポットからの終盤は驚異的なスポット連発で見事なものでした。
 平均的な良試合。

Cデイビー・リチャーズvs.ウィリー・マック
 アンクル・ロックをロープに逃げ、
 ナックル・ロックでブリッジしあう?
 そこにはウィリーの個性なんて何もありません。
 ウィリーの見せ場自体も動きが好調時に比べ劣るので
 無理矢理身体能力を発揮させている感がある。
 中盤はデイビーがテクニカルなサブミッションなどで
 ウィリーを完全に殺している。
 勿論ウィリーにテクニカルな攻防が出来る素養はないし、
 その必要もないのだけれども
 それでも封じ込められない程のエネルギーを見せなくてはジョバーと何も変わりません。
 終盤になってウィリーにようやくパワフルな技が出るも
 試合運びが出来ないから右肩上がりとはいきません。
 雪崩式を食らっても起き上がるウィリーのシーンは熱狂するに値する。
 だから構図を作りなさい、と言っている訳。
 それを実現するために序盤、中盤までに努力をしなければならなかったというお話です。
 平均より少し上。

Dダイナスティvs.ロス・ルチャス
 スコーピオは充実していてリアリティーのある技術で試合を補正する事が出来る。
 ライアンもいつも通り緩めだが、
 動き通しが基本となるこの試合においては
 そのゆったり感が展開付の上で貴重です。
 ダイナスティの構築の上にのっかり
 ルチャスが魅力的なムーブを出して
 上手く機能分担してクオリティを満たしてきました。
 平均的な良試合。

Eリコシェvs.チャック・テイラー
 上空のベルトを取ろうとしたりコメディーから入ってきました。
 その後普通の戦いに戻るもテイラーが女のような悲鳴を上げるキャラを出してくるのでシリアスになりきれず。
 リコシェも適当な試合運びです。
 後半になるとテイラーも金切声を上げなくなり、
 カウンターが豊富な攻防となってきます。
 だからこれをやりたいなら前半から流れを作りなさい、と
 デイビーvs.ウィリーと同じ指摘をする羽目になる。
 終盤ではなく後半でモードが切り替わったのは救いだったけれども。
 平均より少し上。
 
Fタッグ王座戦:ヤング・バックス(ch)vs.フューチャー・ショック(アダム・コール、カイル・オライリー)
 スピーディーなロープ・ワーク。
 若さあふれる蹴りと連携技。
 フューチャー・ショックが魅力的な攻めの数々を見せていきます。
 Yバックスはダイブまで受け切った上で
 エプロン・スポットからオライリー孤立につなげます。
 ムーブは魅力的なフューチャー・ショックですが
 試合運びはまだまだ伸ばす必要がありますね。
 Yバックスの誘導にそのまま乗っている形です。
 特にオライリーは情熱的なスタイルとはいえ
 目の前の技に集中力を割いて他に気が回っていないのはいけません。
 Yバックスが観客の反応込みの試合運びで高めていき孤立終了。
 終盤もYバックスが派手な受け身と組み立てでサポートです。
 最後は今回もスーパー・キックの打ち合いネタが成功し大盛り上がりとなりました。
 ぎりぎり好勝負。

GPWG王座戦、ラダー・マッチ:ケビン・スティーン(ch)vs.エル・ジェネリコ
 ROHの時のような陰鬱な雰囲気はなく
 最初の唾を吐いての挑発合戦はあくまでPWGのテイストで
 深い深い遺恨の決着戦をやろうという意図が見受けられる。
 ジェネリコのトペコンからいきなりラダーが加わるかと思いきやスティーンが防止。
 スティーンがゆったりと間を空けながら静止画でドラマを語りジェネリコを甚振ります。
 その後、敢えて怪我しそうなぶつけ方をしていると言って過言ではない程、
 過激なラダーの使い方を見せていきます。
 若干攻防のために動いている部分もありますが、
 スポット後のスティーンの恍惚感とジェネリコの痛がりによって帳消し所かお釣りが来ている状況です。
 本質的にはスティーンの試合運びは観客と喋くり散らす時と変わっていないが、
 ドラマの見せ方と一進一退の混ぜ方が実に上手くなりました。
 勿論後者はジェネリコとだからこそここまでのレベルに達している訳ですけどね。
 WWEのような立体性は乏しいですが、
 ラダーを酷使し過ぎて登りにくくなっている状況なので
 余り高さ方向の見せ場がないのも納得いく所ではありますね。
 流石にもうそろそろ肉体との兼ね合いで終息させるだろうと思いきや
 中央ラダーを上るジェネリコを捕まえセカンド・ロープ上のラダーにパワー・ボム。
 こんな過激なスポットがまだまだ続きます。
 ジェネリコの背中はあざが出来て出血さえしていましたね。
 PWGの観客の熱狂は続き、最後の一発は本当に死んでもおかしくない危険な一発。
 最後にベルトを取った時には通気口まで取れるおまけつき。
 狂った一戦。
 名勝負ですが小言を言うならばスポット・ベースの構築だという事。
 勿論スポット・フェストと違い構築できている訳だけで
 どこをベースにしようと結果が素晴らしければ構わないけれども
 その一発のスポットを死にそうなレベルにまでして最大化するのは
 やや一線を越えた発想ではないか。
 ぎりぎり名勝負。

総評
 セミ前まではクオリティ上問題のある試合が多いものの
 その一方でアンダーカードらしからぬ強烈な魅力を持つものもあり観客は信じられないような盛り上がりを見せています。
 そしてセミ、メインは期待以上の内容でしっかり締めました。
 MITBやASW、BITWに比べると安定性は落ちるが年間最高試合候補に入る大会。
 (執筆日:12/25/11)
DVD Rating:★★★★★

注目試合の詳細

なし

試合結果

@ピーター・アヴァロン、フレディー・ブラヴォー、レイ・ローザスvs.フェイマスB、クリス・キャデラック、キャンディス・ラレー
ATJパーキンスvs.ロッキー・ロメロ
Bロックネス・モンスターズvs.ファイティン・テイラー・ボーイズ
Cデイビー・リチャーズvs.ウィリー・マック
Dダイナスティvs.ロス・ルチャス
Eリコシェvs.チャック・テイラー
Fタッグ王座戦:ヤング・バックス(ch)vs.フューチャー・ショック(アダム・コール、カイル・オライリー)
GPWG王座戦、ラダー・マッチ:ケビン・スティーン(ch)vs.エル・ジェネリコ(新チャンピオン!)