TOPアメリカン・プロレスWWE 2020年 →WWE:Horror Show at Extreme Rules 7/19/20

WWE:Horror Show at Extreme Rules 7/19/20の分析


名勝負 なし
好勝負 Raw女子王座戦:アスカ(ch)vs.サーシャ・バンクス

@キックオフ・マッチ:ケヴィン・オーウェンスvs.マーフィー

@SDタッグ王座戦:ニュー・デイ(ch)vs.セザーロ、シンスケ・ナカムラ
ASD女子王座戦:ベイリー(ch)vs.ニッキー・クロス

Bアイ・フォー・アン・アイ・マッチ:セス・ローリンズvs.レイ・ミステリオ
 ミステリオが背後から現れて奇襲するスタート。
 スピーディなフロー感のある攻防で一進一退。
 ベースの攻防のクオリティが高いからこそ
 ハードコア・テイストも彩りとして輝きます。

 細かに攻防を続ける努力を惜しまず、
 そして実際の出来栄えとしてアイディア豊かで感心します。

 それはミステリオvs.シコシスのような
 同世代が時代を変えてやるぞ、と
 数え歌を繰り広げるような戦いぶりで、
 とても一回り年齢の違うマッチアップとは思えず、
 またミステリオが45歳であることを忘れてしまいました。

 2人のパフォーマンス自体には最高、と拍手を送ります。

 ただ大会名をHorror Showにしたことの余波、犠牲者としか思えないこの形式。
 目には目を、ということで遺恨試合のキャッチコピーかと思っていたら、
 眼底剥離させることが勝利条件というのが信じられません。

 その勝敗がついた光景を想像すればおぞましさを感じ、
 いやいや流石にやらないだろう、
 その中でどうオチをつけるのかと興味を引かせる、考えが移転しても悪趣味極まりない。
 そして当然に目の付近での鬩ぎ合いになるが故に
 何か物に押し当てようとして耐える性質の攻防にならざるを得ず
 終盤の攻防に停滞感を与えるという点でも失敗でしかない。

 アイ・クイット・マッチの副題をアイ・フォーアン・アン・アイにして
 目を負傷させようとするストーリー・ラインを絡める程度にするのがベストでした。

 クルーザー級版マグナムTV vs.ブランチャード、と
 賛辞されるべき試合をブッカーが毀損した内容。

 好勝負に少し届かず。

CRaw女子王座戦:アスカ(ch)vs.サーシャ・バンクス
 サーシャがヒールとして振る舞いつつも緩めに支配。
 この緩さがアスカの切り返しを際立たせていて、
 ルーズなんだけどコネクションは強固という
 稀に見る面白い化学反応を見せていますね。

 緩さがマイナスにならず上手く活きている
 2人の世界、2人だけの攻防です。

 技の攻防も自由でそれでいて連関構造もあって、
 コロナ禍の環境に依存しない自立した試合っぷりはお見事です。

 最後はベイリー乱入からRawでの判断結果待ちというチープ・フィニッシュでしたが、
 それまでの内容は確かで大満足の内容です。

 ぎりぎり好勝負。

DWWE王座戦(ジグラーのみエクストリーム・ルールズ適用):ドリュー・マッキンタイア(ch)vs.ドルフ・ジグラー
 マッキンが力強く暴れまわっており、
 見事にポスト・レスナーの位置づけを演じ切っていますね。

 ハイパー・アーマーと緩急を良く理解していて
 前半後半通じてダイナミックさを維持し続けました。
 一部ではもう少し弱さを見せても良かったですけどね。

 ジグラーも過剰受けは抑制しつつも
 受けの強みを生かしているし、
 攻めでは高さのあるダイビング・エルボーでテーブル葬など
 ルールを最大限活かしたハードコア・スポットで
 このマッキンと渡り合うに値する攻めも見せている。
 終盤の感情の見せ方も良かった。

 ルールと各レスラーの個性が化学反応を起こした内容です。

 好勝負に少し届かず。

Eスワンプ・ファイト:ブレイ・ワイアットvs.ブラウン・ストロウマン
 ストロウマンが自分のドッペルゲンガーに襲われたり、
 囚われの身になって問答を繰り返していたかと思ったら、
 いつの間にか脱して戦いが始まったりと
 意図的なぶつ切りの展開と共に
 サブリミナル的に無関係の気味悪い映像を頻繁に織り交ぜる
 ホラー映画的方向性としての出来栄えは悪くありません。

 ただ映画とプロレスを分ける境界線を踏み越えてはいません。
 フィーンド/ワイアットというキャラクターが
 この映像型プロレスというジャンルの勃興によって拡張されたのは間違いないものの
 創造性の主導権、行間の表現者は映像編集者、監督にあって、
 如何にブレイが貢献しようと
 その時ブレイは俳優か監督でしかありません。

 ワイアットvs.ストロウマンでは期待できる試合のレベルにも限度があるし、
 この”試合”ではない”スキット”は唯一無二の内容ではあるので楽しいですけれども、
 このムーブメントが行き過ぎて暴走した時には、
 「プロレスは経営者のものでもTVのものでもブッカーのものでもなく
 あくまでレスラーの手の中にあるべきだ」と
 原理主義的デモでもって一線を守って欲しい、という祈りもあって
 それは実にSF的で興味深いので誰か小説か映画にしてくれませんか、
 という投げっぱなしジャーマンな締めくくり。

 (執筆日:7/?/20)
DVD Rating:★★★☆☆

注目試合の詳細

なし

試合結果

@キックオフ・マッチ:ケヴィン・オーウェンスvs.マーフィー
@SDタッグ王座戦:ニュー・デイ(ch)vs.セザーロ、シンスケ・ナカムラ(新チャンピオン!)
ASD女子王座戦:ベイリー(ch)vs.ニッキー・クロス
Bアイ・フォー・アン・アイ・マッチ:セス・ローリンズvs.レイ・ミステリオ
CRaw女子王座戦:アスカ(ch)vs.サーシャ・バンクス(新チャンピオン!)(?)
DWWE王座戦(ジグラーのみエクストリーム・ルールズ適用):ドリュー・マッキンタイア(ch)vs.ドルフ・ジグラー
Eスワンプ・ファイト:ブレイ・ワイアットvs.ブラウン・ストロウマン