TOPアメリカン・プロレスWWE 2010年 →WWE:Hell in a Cell 10/3/10

WWE:Hell in a Cell 10/3/10の分析


名勝負 なし
好勝負 なし

@US王座戦、サブミッション・カウント・エニウェア:ダニエル・ブライアン(ch)vs.ザ・ミズvs.ジョン・モリソン
 ミズはヒールとしてかき乱す役だと理解し、
 モリソン、ブライアンはタランチュラ、キャトル・ミューティレーション、アキレス腱固めと
 特別にサブミッションの引き出しを用意してきています。
 まあどうしても粗野さをアピールするの場外と
 技術性をアピールするサブミッションの親和性の弱さ、
 それを3ウェイで行うという難易度の高さが足を引っ張ってはいます。
 しかし挑戦的な内容ですし、おまけで付け加えられたと思っていたモリソンが
 フリーランニングの裏地を活かした見せ場を与えられ、
 3人共がマイナスにならずにアピールできたのは好感が持てる。
 平均的な良試合。

AWWE王座戦、ヘル・イン・ア・セル:ランディ・オートン(ch)vs.シェーマス
 乱戦のベースとなる殴り合いにリズムを生む意図も
 観客をのせるアクションとして見せる意思もないのだからきついですね。
 またシェーマスがHIACに対して恐れを抱いていないのも問題。
 表現性、構築性に乏しいシンプルな具材を複雑に組み合わせるでもなく二次元的な配置しかしない。
 HIACは最上位の形式でありながら実際は只の大きなケージ・マッチですから
 ラダー・マッチのように自然とクオリティが押し上げられるという事もありません。
 構築的に基本に沿って波を作っていても
 そのスポットがHIAC系スポットばかりでそのスポット間に強弱がありませんから
 全体的に見れば結局フラットです。
 もっと友好的に持ち技を使っていくべきでした。
 シェーマスの腹攻めもいくら理を通そうとそれを活かす策がないのでは十分な効果を上げてはいません。
 クオリティの伸び悩みが著しい内容でしたが椅子を導入してからの終盤は素直に良かったですね。
 攻防自体のインパクト、その意味性、感情が三位一体となって
 オートンの粘りにシェーマスが焦りを感じて・・・のドラマを奏でる事が出来ています。
 まあまあ良い試合。

 デル・リオが登場。エッジが現われひと悶着。更にスワガーまで登場。3ウェイかと思われたがデル・リオは下がってエッジvs.スワガーに。

Bエッジvs.ジャック・スワガー
 エッジの細かい反撃を入れるより
 理不尽なスタートを利用してエッジを相当なレベルまで追い込みたい所ですが
 エッジが中途半端なヒールなのでそれが出来ない。
 結局どういうラインで魅力を働きかける決めかねたまま悪い試合ではない事だけを伝える内容です。
 そんな消極的な魅力は魅力ではありません。
 スワガーもカートを意識したスタイルだが余りに非効率的。
 どうせ真似るなら1回完コピして物にしてから自分にフィットさせていった方が良いと思いますけど。
 組まれた経緯含め、しっくりいっていない試合です。
 少し悪い試合。

Cウェイド・バレットvs.ジョン・シナ
 ちゃんと2人のレスラーとしての特徴を理解した構築ですね。
 様式による雰囲気作り、一つ一つを大切にしたレスリングによる序盤。
 そこからバレットが間、打撃、一極狙い、全てにおいて平均点は満たしている事による安定したストーリー・テリングで試合を進行させます。
 ハウス・ショーで何度も手合わせを重ねた事も利いているでしょうね。
 ただ活かし方だけではなくてバレット自身が成長しているのが大きい。
 打撃の解禁、セカンド・ロープからのエルボー・ドロップ、終盤に投げを温存、と
 試合の転換、序盤/中盤/終盤を技によって実現している。
 また間の表現が利いた中2人とも素晴らしい表情を見せましたね。
 シナはWWEレスラーがNexusを追い払った時の誇らしげな表情。
 バレットはウェストランドを返された後の陰影な色気を醸す表情
 (何かヤング・コステロという言葉が頭の中に出てくる)が素敵です。
 レスラーであるだけでなくスーパースターであるからこそ出来る試合です。
 最後に何かサプライズが用意されているのだろうと見えている状況にも関わらず
 その前の一進一退も応援のしがいのある攻防でした。
 そのサプライズが既存のスターで無かったのはこの試合単一としては少しがっかりですが、
 ストーリー的には十分効果的ですので問題ではありません。
 平均的な良試合。

Dディーバズ王座戦:ミシェル・マクール(ch)vs.ナタリア
 ミシェルが安定したフット・ワーク、腰狙いを見せているのは良いとして
 問題はそこにナタリアというレスラーをもっと関わりを持たせていかないといけないという事です。
 ようやくの王座挑戦となったのに加工なしのミシェルのベースに
 ナタリアの彩を軽くまぶすだけ、なんて大味な使われ方ではげんなりする。
 両者悪いディーバではないですから
 マイナス要素は最後のDQ(同じDQにしてももっとましなのをお願いします)以外特にありませんでしたがそれにしても・・・。
 悪い試合。

E世界ヘビー級王座戦、ヘル・イン・ア・セル:ケイン(ch)vs.アンダーテイカー
 いきなりセル攻撃、椅子を全開で使いながら、
 その後それを上回るものを用意できず下降線の一途辿るなんて
 実に無計画、無謀、自業自得としか言いようがありません。
 様式が整う前の早すぎるチョーク・スラム。
 相互に潰しあってまったく輝いていないキャラ的最強性。
 こちらが攻めています、という一言で全て事足りてしまう程情報量の少ない試合シーン。
 途中から2人への期待を放り捨て大掛かりな演出だけを心待ちにしていましたね。
 もう2人が姿を消し、その後セルが崩壊するとか、火の玉、雷光の超常現象合戦をするとか。
 それが結局照明変えてのベアラーの裏切りだけ、ってんですから・・・。
 期待度を0に下げたにも関わらず、余りに中身が伴っていなくて抗争決着戦としても受け入れられないという最悪の試合。
 少し悪い試合です。 

総評
 予想以上に健闘している事は事実です。
 US王座は第2王座としての輝きを取り戻しているし、
 両王座はスター性、もしくは話題性に富み、内容の出来にそこまで依存しないカードを用意できた。
 しかしそれにしたってHIACが最上位の形式であるという認識がいまだ残っているのです。
 ですからAは余りに下だし、Eはいくら兄弟対決でもこれではメインを張れない。
 流血禁止により形式的位置づけを下げた方が良いという状況を含めても、
 やはりここはCをメインにもってきて歴史的バッド・エンディングにすべきです。
 確かに悲嘆にくれながら帰宅の徒につかせるのは躊躇われる事でしょう。
 しかし涙を流すようなファンはメインを待たずして帰りますし、そもそもE自体バッド・エンディングなんです。
 どこに問題がありましょう。
 WWEらしい魅力があり悪くは無いがクオリティは物足りず、また試合順を変えるだけで洗練できPPVとしてちゃんと売り出せた内容。
 (執筆日:10/5/10)
DVD Rating:★☆☆☆☆

注目試合の詳細

なし

試合結果

@US王座戦、サブミッション・カウント・エニウェア:ダニエル・ブライアン(ch)vs.ザ・ミズvs.ジョン・モリソン
AWWE王座戦、ヘル・イン・ア・セル:ランディ・オートン(ch)vs.シェーマス
Bエッジvs.ジャック・スワガー
Cウェイド・バレットvs.ジョン・シナ
Dディーバズ王座戦:ミシェル・マクール(ch)vs.ナタリア(DQ)
E世界ヘビー級王座戦:ケイン(ch)vs.アンダーテイカー