TOPアメリカン・プロレスTNA 2011年→ TNA:Destination X 7/10/11

TNA:Destination X 7/10/11の分析


名勝負 なし
好勝負 なし

@サモア・ジョーvs.カザリアン
 ジョーの攻め一辺倒だが、ジョーのインパクト力を活かす構築で、
 カズの小さな抵抗が、ワン・パターンの印象を与えないようにしている。
 後半になってようやくカズが反撃するもその数少ない攻めにおける
 空間の使い方は美しくカズの能力を再認識させる。
 それ故カズがヘタレ・ヒールでもないのに受けに回りすぎる事は勿体なく感じる。
 AJvs.ダニエルズvs.ジョーから分離させたのだから
 Xディビジョンの第二メイン的位置づけを与えられると考えていたし、
 その価値がある事も今回の展開の中で証明しています。
 終盤は中盤で使うような定番技を持ち寄りゼロ・ベースで考えた攻防。
 定番を適切に配置するより大きな効果を生んだとはいえないがその姿勢は評価したい。
 最後はジョーが油断するような形で敗北。
 力設定が落ちているのではなく、
 油断やツキがなくてBfGシリーズが0Pというストーリーなんだろう、と確認出来て一安心でしたね。
 まあまあ良い試合。

Aダグ・ウィリアムスvs.マーク・ハスキンス
 オープン・チャレンジという事でXディビジョン・オールド・ネームの登場かと思いきや
 TNAでは無名の英国選手ハスキンスのデビュー戦とはね。
 思ったよりやるな、と思わせる必要があるとはいえ
 ハスキンスはダグと同じ土俵で健闘し過ぎ。
 差別化が薄まってしまいます。
 英国同士でPPVでも恥ずかしくない内容になるだろう、として実現させたのでしょうが
 このような場面では同じスタイルの対決より異なるスタイルの対決です。
 そのブッキング上の問題を除けば試合内容自体は見れる。
 細かい一進一退がありましたからね。
 最後の最後でコーナーに上り損ねたのは痛かったけど。
 少し悪い試合。 

Bジェネレーション・ミーvs.エリック・ヤング、シャーク・ボーイ
 シャークのオースチン物真似でファン・マッチの雰囲気になりましたが
 3試合目なのでそういう内容もありでしょう。
 一方のジェネレーション・ミーですが
 スポット自体は適切ですが、そこに持っていくのに
 相手側の協力を引き出す事をしないので形だけ置かれているに過ぎない。
 簡単なタッチの見せ場から終盤に移り、入り乱れてフィニッシュへ。
 雑だが、形はついているし、ファン・マッチは元々クオリティがそんなにない物だから
 悪い試合という評価を下すが特に非難すべき意味合いはない。

C#1コンテンダーズ・アルティメットXマッチ:アレックス・シェリーvs.ロビーEvs.シャノン・ムーアvs.アメージング・レッド
 初動からも分かるがベビーフェイス/ヒールの位置づけが曖昧。
 その中で一番キャラが明確なロビーはというと
 受け身が過剰過ぎて技のインパクトという本義から逸脱している。
 シェリーはユニークさを見せるが余り試合と馴染んでいない。
 ムーア、レッドは良くも悪くもなく。
 形式としては特に新しいスポットもなく
 アルティメットXよりも3ウェイ・スポットが目立ちましたね。
 最後は最近の傾向通りロープ上の骨組みを利用した見せ場。
 特に高度な事をしなくてもスケールが大きく見えるので良いんじゃないですか。
 只余り定番化させてしまうと手抜きにつながる恐れがあるけど。
 平均レベル。 

DRVD vs.ジェリー・リン
 普通1回で終わるロープ・ワークなどの動きを
 複数回こなして立体的に見せる上手さはRVDvs.リンの本質です。
 流石にスピード自体は遅くなっていますが、
 タイミングの合わせ方は一致しているので違和感はなく、
 人工的である事よりも創造的である事が前面に出てきます。
 またお互いをリスペクトする→リンがヒールに転じる、というストーリーは
 試合としてもそれをやるレスラー側としても益をなしていて正解。
 リンのじっと動かないダウンといい
 上手く作り手の事情とリンクさせているな、と感心しますね。
 終盤も椅子、流血、RVDの気合の入った受け身できっちり締めてきました。
 前年のRVDvs.サブーと同じくリバイバル大成功の内容。
 好勝負に届かずも中々良い試合。

ETNAとの契約をかけた試合:オースチン・エリーズvs.ゼマ・アイオンvs.ロウ・キーvs.ジャック・エヴァンス
 エリーズがAAキャラとしてTVレスラーとして群を抜いた働き。
 その対抗馬としてロウ・キーを位置づけた構築は良し。
 エヴァンスは本命、対抗馬から漏れた訳ですが
 それならと3ウェイ・ムーブ、意表をついたハイ・フライという
 自分の魅せ方でストレートに貢献していましたね。
 アイオンは劣る知名度そのままに4人目であったけれども
 試合との統率も取れていて十分な仕事でした。
 初期TNAを彷彿とさせる洗練された4ウェイ・マッチ。
 好勝負に届かずも中々良い試合。

FXディビジョン王座戦:アビス(ch)vs.ブライアン・ケンドリック
 倒せない、ロープに触れない、と絶対的な体格差を描きます。
 投げれないまでやらなかったのが良いですね。
 シンプルなドラマなのですから
 論理的に導かれる部分まで説明して過剰になる必要はない。
 アビスは太り過ぎに見えるが試合運び自体は今回も良好。
 観客の煽りがしっかり組み込まれ機能している。
 最後は流血をターニング・ポイントとして上手く使っています。
 試合自体としてはビショフ登場、乱入者による乱戦がなくても成立しているが
 今回のPPVの中で一番前後の流れと関連するカードですから
 こういう演出を加えるのも必然ではある。
 平均レベル。

Gクリストファー・ダニエルズvs.AJスタイルズ
 まずはゆったり目のレスリング。
 プロレスを分かっているからこそ退屈ではないが特に目を引く点はない。
 どちらがベストか競い合う関係だということをアピールしながら
 動いたダニエルズをAJがアーム・ドラッグで再び抑えつける、という構築。
 つまり型を使った攻防ですが、
 2人の良さを考えるとダニエルズ側がアーム・ドラッグで抑えつける側であるべき気がします。
 ダニエルズの仕掛ける効果がいまいち分からないですし、
 AJのアーム・ドラッグも何かに繋がる感覚がありません。
 型なのに連関性がなく試合時間を稼ぐ事が最大の目的となっているのです。
 この2人って長時間マッチを帰納的に考えるのが意外に得意じゃないんですよね。
 中盤はトぺ2連発、バック・ドロップ3連発、エプロン技などで
 ロング・マッチ特有の息のつまりそうな戦いを繰り広げていきます。
 ここは目的と意義が一致していて良かったですね。
 そして終盤ですがAJが冴えなかったですね。
 そこからどうするかの思考がなく、
 ダニエルズも試合に空きが生まれないように補佐するだけで
 AJに対して良い提案までは出来ていない。
 この2人の試合で30分弱となれば多少問題点があろうと高いクオリティになりますが、
 このAJ vs.ダニエルズもまたリバイバルに見えてしまったのは頂けない。
 中々良い試合。

総評
 TVプロレスのしがらみに縛られず
 本当にXディビジョンに焦点を当てたカードで大会をまとめあげてきました。
 TNAの今年のベスト興行と見てまず間違いないでしょう。
 (執筆日:7/12/11) 
DVD Rating:★★★☆☆

注目試合の詳細

なし

試合結果

@サモア・ジョーvs.カザリアン
Aダグ・ウィリアムスvs.マーク・ハスキンス
Bジェネレーション・ミーvs.エリック・ヤング、シャーク・ボーイ
C#1コンテンダーズ・アルティメットXマッチ:アレックス・シェリーvs.ロビーEvs.シャノン・ムーアvs.アメージング・レッド
DRVD vs.ジェリー・リン
ETNAとの契約をかけた試合:オースチン・エリーズvs.ゼマ・アイオンvs.ロウ・キーvs.ジャック・エヴァンス
FXディビジョン王座戦:アビス(ch)vs.ブライアン・ケンドリック(新チャンピオン!)
Gクリストファー・ダニエルズvs.AJスタイルズ