TOPアメリカン・プロレスCZWCZW 2011年 →CZW:Tangled Web 4 8/13/11

CZW:Tangled Web 4 8/13/11の分析


名勝負 なし
好勝負 サイコ・サーカス・デス・マッチ:ドレイク・ヤンガーvs.スコッティ・ヴォルテックス

2枚、2時間45分です。

・メインの形式上リングが2つ並べて設置されています。

@エリアル・アサルト:クリスジャン・ヘイムvs.ピンキー・サンチェスvs.ラティン・ドラゴンvs.ハイザイヤvs. tHURTeen vs.ライアン・マクブライドvs.デレク・フレイジャー
 技を只並べているだけですね。
 BOXと椅子を加える事で後半につれ過激技が出るようになりますが、
 スポット・フェストという概念が定着するにつれて
 演者の情熱も一時期に比べて確実に下がっている事は否めない。
 サプライズ枠で登場したフレイジャーは良好な仕事をしていましたね。
 安定感もありますし、もう少し活躍する機会を与えられても良い選手です。
 平均より少し上。
 
・セイビアンのマイク・アピール。

Aドリュー・グラック・インヴィテーショナル:キット・オズボーンvs.ドロリックスvs.ミスター???
 すぐにグラックのボディガード、トフィガが乱入。
 ハボックが椅子を片手に退治しにくるも返り討ちに。
 トフィガが仕留めようとコーナー上に上るもハボックのパートナーが現れたため引き下がる。
 
B#1コンテンダーズ・マッチ:アズリエル、バンディードJr. vs.BLK OUT(ラッカス、アレックス・コロン)vs.SETvs.ランナウェイズ
 2つのリングの狭間を使ったスポットや
 鉄板の連携技で観客を楽しませていますが、
 演者にチェンジ・オブ・ペースの意識がないのが痛い。
 終盤はそれぞれの連携技を重ねる事で演出しているが雑です。
 平均レベル。

・コール・キャラウェイのアピール・セグメント。

Cグレッグ・エクセレントvs.?
 グレッグをお仕置きするため悪のオーナー、DJハイドが
 ナイジェリアン・ナイトメアズを送り込みハンデ戦でスカッシュ。

Dサミ・カリハンvs.BJウィットマー
 BJはROHを離脱し一線を退いた後で
 なぜか味のある試合運びが出来るようになりましたね。
 観客を見ながらもカリハンに対してちゃんと対応している。
 相手がここまで良好な試合運びをしてくれると
 ブル・ファイターでなくなったカリハンも
 安心して相手に試合を任せられます。
 カリハンの反撃はガタガタではありましたが
 ストロング・スタイルの攻防を繰り広げ、まとめあげました。
 観客の反応はいまいちでしたが良質な内容。
 平均的な良試合。

 試合後BJがカリハンを甚振り、ハイドが辛辣な言葉を浴びせかける。

Eウルトラヴァイオレント・テーブルス:ローリー・モンドvs.マット・トレモント
 トレモントはブル・ファイター・スタイルになりきれていないが
 以前見た時よりもキャラ作りを努力していますね。
 また相手との意思疎通が出来なくておろおろする場面もなくなりました。
 一方のモンドは相変わらずひ弱ですが、
 無茶な試合に答えていて少なくともジョバー以上の存在感はありました。
 まあまあ良い試合。

FCZW王座戦、ランバージャック・ストラップ・マッチ:デヴォン・ムーア(ch)vs.セイビアン
 オーソドックスなレスリングで始めますが、
 しょうもないミスはするし、
 体が小さく完成度が低いので見栄えが悪いし、
 ベビーフェイス/ヒールも立っていない、という散々な試合に。
 ランバージャック・ストラップ・マッチですが
 ランバージャック・ネタの使い方がいまいちという前に
 ストラップの痛みを伝えられる打ち手が一人もいないのが問題です。
 昔はストラップといったら痛みを伝え感情移入させる凶器だったものです。
 ひどい試合。

Gサイコ・サーカス・デス・マッチ:ドレイク・ヤンガーvs.スコッティ・ヴォルテックス
 片方のリングのトップ・ロープ上に有刺鉄線を張り巡らせ、
 通常リングのエプロン横に斜めに金網を設置した形式。
 金髪でなくなったドレイクは道化色なく
 ゴングが鳴るまで身じろぎせずスコッティの目を見つめています。
 その空虚な視線には言い知れぬ恐さがあります。

 まずは一定のリズムにのって試合をスタート。
 金網、スカフォードと自然に攻防の場所を移し、
 スカフォードから蜘蛛の巣有刺鉄線に突き落としてダイブ。
 以前と違って今回は横に通常リングがある事を利用して
 しっかりと試合としての展開をつけていましたね。

 続いての攻防はネットを張りなおす時間を稼がなければならない事情から
 戦っているようにも見えたけれどもその印象を吹き飛ばすガラス・スポットが炸裂。
 ガラスの種類を変えたのかガラスの破片が大きく、
 かなり危険なスポットになっています。
 これで顔面真っ赤になったヤンガーですが
 観客を見ながらチン・ロック・レベルまで試合を落ち着かせてきました。
 このデス・"マッチ"にかける並々ならぬ意気込みが
 これまで普通のプロレスもやって磨いてきた能力で持って伝わってくる。
 この行動は衝撃的でした。

 スコッティも手を負傷して深刻な状況に陥ります。
 試合を続行できるかリアルに試される状況こそデス・マッチの一つの醍醐味ですね。
 そしてこの試合ではその醍醐味が2倍になっている。
 蜘蛛の巣有刺鉄線からレスラーが抜け出せるように
 本来表舞台に出ない裏方が大勢リング横に出てきているんですね。
 そのためデス・マッチ・ファイター個人としての思いだけでなく
 団体の裏方の思いも背負う絵図となっているのです。
 
 その上でガラスにぶつけられても気合いで耐えたり、
 ドレイクス・ランディングを気合いでカウント1で返すシーンにつなげる。
 もしかして2度目の蜘蛛の巣有刺鉄線スポットはないのではないか、と思わせるような全力のぶつかり合い。
 トップ・ロープ上から蜘蛛の巣有刺鉄線にバック・ドロップを打った際には
 この状況ではスカフォードに上らないのも仕方ないよな、と思わせる状況でした。
 しかしやしかし、その直後にスカフォードに上り3度目のスポットを打って見せる。
 驚嘆すべきクライマックスの高鳴りです。

 蜘蛛の巣有刺鉄線上でフォールが出来ない事は装置上の欠点だと考えてきました。
 実際これまでの同形式ではグダグダになる要因でした。
 しかしそれは正解であり誤りでした。
 過激なトラップに自らを投じるのは一瞬の決断です。
 そしてそのスポットがフィニッシュならば一瞬の決断で全てが楽になります。
 ここに設置されたトラップと自分の手に持った凶器との違いがある。
 トラップにはどこか責任を放棄した所がある。
 しかしながら思いを積み重ねた上で決断した2,3発目の蜘蛛の巣有刺鉄線スポットは
 試合を終える事が出来ない事が返って、
 悲惨なまでにぼろぼろになりながらも
 十字架を背負ってゴルゴダの丘を登り続ける、
 デス・マッチのキリスト的美しさを強調する結果となっている。
 ヤンガーがガラス食った時彼はもう既にヒールではなく
 ザンディグーハボックの間に位置する時代を象徴するデス・マッチ・ファイターでもなく
 デス・マッチ・ファイター・オブ・オール・タイムのエースとしての輝きを放っていました。
 ヤンガーがキャリア集大成を見せた試合であり、
 2007年にデス・マッチの時代が終わってから
 ファンが希望を持って待ち望んできたデス・マッチでもある。
 文句なしに好勝負。

総評
 ハードコア要素が強い大会なのでいつもより安定して楽しめます。
 でもそんな事はどうでも良いのです。
 メイン1試合でお釣りが来る。
 今年のDeathmatch of the Yearです。
 いや、今年に限らずデス・マッチ・ファンなら観ておくべき試合です。
DVD Rating:★★☆☆☆ 
(執筆日:8/5/11)

注目試合の詳細

なし

試合結果

@エリアル・アサルト:クリスジャン・ヘイムvs.ピンキー・サンチェスvs.ラティン・ドラゴンvs.ハイザイヤvs. tHURTeen vs.ライアン・マクブライドvs.デレク・フレイジャー
Aドリュー・グラック・インヴィテーショナル:キット・オズボーンvs.ドロリックスvs.ミスター???
B#1コンテンダーズ・マッチ:アズリエル、バンディードJr. vs.BLK OUT(ラッカス、アレックス・コロン)vs.SETvs.ランナウェイズ
Cグレッグ・エクセレントvs.ナイジェリアン・ナイトメアズ
Dサミ・カリハンvs.BJウィットマー
Eウルトラヴァイオレント・テーブルス:ローリー・モンドvs.マット・トレモント
FCZW王座戦、ランバージャック・ストラップ・マッチ:デヴォン・ムーア(ch)vs.セイビアン
Gサイコ・サーカス・デス・マッチ:ドレイク・ヤンガーvs.スコッティ・ヴォルテックス