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大日本プロレス:ケンドー・ナガサキのバーリ・トゥードin商店街の分析


名勝負 なし
好勝負 なし

@商店街バーリ・トゥード・マッチ
 (ケンドーナガサキのバーリ・トゥードin商店街というタイトルのビデオに収録)
 どこから話したら良いものか。
 色々と凄い。色々とひどい。
 
 商店街バーリ・トゥード・マッチという触れ込みなので
 DDTのキャンプ場プロレスをイメージしていましたが、全然違いましたね。
 
 商店街のものを使いながら乱戦をするという点では同じなのですが、
 まず商店街バーリ・トゥード・マッチというのが存在しません。
 何言っているかパッと見わからないかと思いますが、こんな試合は存在しません。

 試合自体は金網ルーキー・チャレンジ:谷口裕一vs.ブルーザー岡本。
 これが野外に設営された安っぽい金網の中で行われたのですが、
 しばらくするとしょっぱい試合をしやがって、とナガサキが金網をぶち壊して乱入。
 とめに入った小林、山川に八つ当たりして乱闘を始めると、
 谷口と岡本も金網の外に出て野外乱闘になるというもの。
 
 谷口vs.岡本が乱入の直接のきっかけのはずなのに
 (根底は若手全体への思いにしても)
 ナガサキは谷口、岡本に絡まないし、
 その試合でもない乱闘が試合の乱闘から
 カメラに映る機会を奪っているのだから滅茶苦茶です。

 試合の乱闘の方はFCAルールになっていてフォールすれば仕切りがつきますが、
 ナガサキの方はナガサキの気持ちが落ち着くという
 落としどころしかないのでグダグダ。
 常識や教科書からは完全に逸脱していますね。
 
 ただこれをひどい試合?と切り捨てることもできない。

 まず乱闘の暴れっぷりは良く、
 自転車を投げたり、八百屋の野菜の陳列棚を破壊したり、
 機材を投げたりします。
 観客の顔も唖然としているように普通ではない乱闘。

 果てにはお店のドアをぶち破って自販機を押し倒します。
 上記はまだ事前に打ち合わせして廃棄物を提供してもらっているのかな、と
 穿った見方をできるのですが、
 これは簡単には説明つかず、このビデオ売上で回収しなければ
 短期的にはギャラより損害賠償の方が上回るのではと心配する程。
 当時のピュアな観客も現代のスレた視聴者も両方が唖然とする乱戦っぷりで、
 大仁田がメンフィスで見せたトゥペロ・コンセッション・スタンド・ブロウルと同じく、
 何かしらの記憶に残るレベルであることは間違いない。
 
 また、より積極的に評価できるポイントとしては
 この試合という体裁にすらなっていない
 ナガサキの商店街プロレスですが、
 1本のビデオとしては非常にストーリー性があります。

 ナガサキが大日本プロレスの窮状を案じ、
 若手育成を団体存亡の課題だと考えていることが前説としてあります。
 今では通じないですが、
 ナガサキが喧嘩屋として名を馳せていたので、
 47歳ですが、MMAに飛び込んでヒクソンに挑戦する、という挑戦も
 無謀感漂わせず意気揚々と触れてみせます。
 
 プロレス乱闘シーンの効果音はチープだし
 (WSXより先に効果音プロレスをしていたとは)
 なぜ彼らは戦うのか、戦いの神々の体現者なのか、というナレーションなんて
 青臭い上にそれに似合うような戦いとは全く持って縁遠いものの
 そこに疑問を持たずに貫き通している様は
 時代とはいえ清々しさすら感じさせるところがあります。
 
 先ほどグダグダと述べた乱闘に関しても
 金網に戻ってナガサキと小林、岡本、谷口(山川は負傷で途中退場)の
 1対3で決着戦だと事後試合を続けることで確かに締まっています。

 そして、元の試合をしていた当人の岡本、谷口から
 いつの間にか小林に焦点が移っていて
 (八つ当たりされてふらふらになって逃げれてないだけなのに
 小林は敢えて受けているのだ、彼にもプロレス魂が備わっているのだ、とナレーション)
 エピローグではナガサキが小林を丸刈りにして闘魂注入。
 みんなで和気藹々とちゃんこ鍋を食べて〆。

 ここで丸坊主になった小林を見て今のアブドーラ小林か!!と合点がいく。
 ビデオ発売後、十数年して最後のオチが最高に輝き、
 ビデオ全体の完成度を高めることになっているという
 見事な奇妙奇天烈、摩訶不思議な作品でした。
 
 ビデオ全体を映像型プロレスとして当てはめるなら
 中々良い試合ぐらいの評価をしても良いでしょう。
 (執筆日:4/?/20)


注目試合の詳細

なし

試合結果

@金網ルーキー・チャレンジ:谷口裕一vs.ブルーザー岡本
Aハンディキャップ・マッチ:ケンドー・ナガサキvs.谷口裕一、ブルーザー岡本、小林洋輔