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Noah:2011 Heavyweight part.2の分析


名勝負 なし
好勝負 潮崎豪、杉浦貴、谷口周平vs.高山善廣、KENTA、金丸義信(9/11/11)

GHC王座戦:潮崎豪(ch)vs.高山善廣 (9/23/11)

#1コンテンダーズ・マッチ:KENTAvs.杉浦貴(10/10/11)

三冠王座戦:秋山準(ch)vs.太陽ケア(11/27/11)

@潮崎豪、杉浦貴、谷口周平vs.高山善廣、KENTA、金丸義信(9/11/11)
 指名してきた潮崎に高山がドロップ・キックを決め驚きと共に試合開始。
 潮崎が情熱的なチョップで対抗すると
 その勢いのまま杉浦とKENTAの打ち合い。
 杉浦のリアリティー溢れる強さに対して
 KENTAはハード・ヒットと気持ちを高いレベルで両立に見劣りしない攻防です。
 残る谷口、金丸はというと他より見劣りする事は否めないけれども
 高山がカットからそのまま潮崎と場外乱闘に発展させたりするのだから目が離せない。
 一部しかカメラに映らない場外乱闘において
 全員が手を抜かず高いテンションで乱闘していましたね。
 今現在Noahはスタイル・チェンジを課題として抱えているけれども
 トリオならそれはほとんど課題にならず解決される。
 全員が輝き、最後はストーリー上重みのない谷口x金丸で勝負を決めに行く流れになるが
 これが思いの外面白い攻防でこれまでのクオリティを下げずにフィニッシュ。
 抗争の前振り含め全て詰め込んだ見事なトリオ・マッチです。
 文句なしに好勝負。

AGHC王座戦:潮崎豪(ch)vs.高山善廣 (9/23/11)
 潮崎がひたすらにチョップを打ち高山は耐えて変化を見せる。
 試合はこの一文に集約されます。
 そこには一文で集約するには惜しい豊かさがあるのですが、
 おそらくそれよりも欠点が大きく受け止められるのでしょう。
 その欠点の話は後に回してまず両者の働きに目を向ける。

 衰えきった高山は耐える強さと
 腕攻めで支配しなければならない弱さを兼ね備えています。
 様式にのらない潮崎のチョップを受ける中で
 コンセプト・マッチであるが故に高山の上手さが最大限に試されました。
 そしてこんなに上手かったか、とみていて感心する程
 巧みな腕攻めを打撃とバランス良く織り交ぜ緩急も押さえています。
 技の性質を使い分けていてエプロンからリングへのフルネルソン・スープレックス、
 ニー・パッドを外すという特別なスポットも素晴らしい。
 特に前者はダイブの流れを腕の痛みを絡めてエプロンの攻防に持っていたのが素晴らしかったですね。

 一方の潮崎は一見無駄と思える行為を積み重ねる事で最終的に結実させるドラマ狙い。
 腕の痛みを受けて左を使ったりヘッド・バッドを使ったりする工夫こそあるものの
 基本的にはチョップのコントロール、全力打ちとではない無謀とも思える弱さと
 痛がる素振りで試合に貢献しています。

 問題点は同時にこの試合の作り方にある。
 片方が懐広く変化させ、一方は真っ向からスターとしてぶつかる。
 この試合の作り方に心当たりがあるはずです。
 これは80年代のフレアーの試合の作り方と同じです。
 そしてこういう機能分担的な構築を日本のファンは余り好まない。
 更に言うなら絶対値の伴わない攻めにダメージを食らうのをNoahのファンは好まない。
 そして行動にバリエーションがないと一口に下手と断罪する傾向もある。
 特に王者が押さえ込まれる側だと手厳しい。
 
 という事で観客がこの試合の特別性を十分に理解していない面があり寒々しい盛り上がり。
 TVではなくライブで見るメリットが薄い内容だということを考えてもです。
 一方でお金を払ったお客さんなのだから
 観客の好み、ニーズを完全に無視した絵図を描く方にも当然問題がある。
 Noahの試行錯誤による観客のずれが後楽園での初のGHC王座戦という
 特別な舞台で最大値に達してしまい、
 箱が小さくなったにも関わらず熱の密度がまったくない試合となってしまいました。
 正直試合後のユーモア溢れるマイク合戦の方が盛り上がっていましたね。
 しかし私はこれをNoahのヘビー級で一番素晴らしかった試合として挙げます。
 レスラーと観客がお互い歩み寄り完全に一致した形でこの試合を見たかった。
 文句なしに好勝負。

B#1コンテンダーズ・マッチ:KENTAvs.杉浦貴(10/10/11)
 KENTAの見得の切り方の上手さが際立っていますね。
 杉浦は若干引き気味で対抗。
 KENTAの上下を使い分けた試合運びは的確です。
 杉浦も受けで多少貢献しながら
 過激なスポットに頼らず着実に重厚感を積み重ねていきます。
 仕掛け一発に頼らない姿勢は時に非効率でもあるのですけどね。
 柵の外でダウンする杉浦にダイビング・ダブル・ストンプを決め後半へ。
 カウント19で戻った直後に杉浦がカウンターのスピアーを決めたのは勿体ないですね。
 それぞれのビッグ・スポットが直結したせいで片方の効果が最大限活かされていません。
 エルボーの打ち合いを無意味に挟むまいと
 流れが完全に活かされていないという点では同じ問題です。
 しかし最後まで一進一退の完成度は高く、
 技の個性を超えて気持ちでしか決着つかない攻防に入りました。
 観客の期待が高く、内容も30分超え。
 試合時間ではなく構成でもう一伸びして欲しかったですが
 2011年のNoahヘビー級の試合の中では一番バランスの取れた試合。
 ぎりぎり好勝負です。

Cグローバル・リーグ戦:佐々木健介vs.KENTA(11/8/11)
 KENTAは会場の盛り上げに気を使いながら
 新技ゲーム・オーバーを意識づけしてゴールを示します。
 健介が相手ですから早い段階でゴールを示したのは良いですね。
 ただ健介が蹴りを含め対応がいまいち。
 KENTAをヘビー級として扱っていると言えば聞こえは良いが汎用的な試合運びです。
 その分どう技を使って、どう交わるかが重要になるが、
 健介はそういうのが上手くなく自爆した形。
 取り立てた面白さはない。
 平均的な良試合。

Dグローバル・リーグ戦:杉浦貴vs.佐々木健介(11/14/11)
 健介のラリアットから封を切った試合。
 杉浦のエルボーに健介がチョップで打ち返した後、エルボーでダウンさせます。
 その後も杉浦の負傷している首に壊れそうな攻撃を叩き込みます。
 杉浦の反撃を許さない厳しい攻めを見せるも健介の攻撃はラリアットばかり。
 技の強弱もなくまとまりがありません。
 杉浦反撃の大きな流れだけで細かい部分は切り捨てていますね。
 杉浦がコーナーへのジャーマンで決めた後は打ち合いをベースに構築。
 エルボーとラリアットの耐えあい、
 張り手の打ち合い、グー・パンチの打ち合いと続いてフィニッシュへ。
 この2人ならではの絶対値のぶつかり合いですが、
 様式的で川田vs.健介(1/4/01)程は振りきれていないし、
 バチバチの池田vs.石川程狂ってもいない。
 池田vs.石川はついてきたい者だけついてこい、というスタンスでバチバチの試合をやっているが
 健介vs.杉浦は観客のために激しい試合をする、というスタンスでやっている。
 メジャーの責任として内にではなく外に理由を求めるのも良い。
 しかし観客の一人であるこちらが何故そういう激しさである必要があるのか、と尋ねても答えは返ってこない。
 目の前の激しさとこちらの心との間をどう橋渡しすれば良いのか悩んでも答えは出ない。
 欠点を無視して凄いと言わせるには今一歩足りません。
 良く言えばNoahにしか出来ない試合。
 しかし悪く言えばNoah(健介)しかしようとしない試合。
 好勝負に少し届かず。

Eグローバル・リーグ優勝決定戦:KENTAvs.森嶋猛(11/20/11)
 まずはゆったりとスタート。
 GHC王座戦の挑戦が決定しているKENTAですが
 流石に森嶋相手という事で自分が体格で劣っている事を否定しない。
 ロー・キックを武器に相手を倒しておく戦略を取っています。
 新技ゲームオーバーとも相性が良く素晴らしい攻めでした。
 同時に潰されながらも何度もGTSに挑戦し、
 最後に決めて見せ一つのやりきった感を残しました。
 森嶋も大きな流れを作るべき所は作り、
 律儀に一進一退しつつも最後は怪物としてアピールする形で攻防を切っていました。
 Noahの決勝にしては17分という短さ。
 シンプル過ぎるきらいもありますが、
 その分Noahの悪い所がほとんど出ず素晴らしい試合となりました。
 好勝負に少し届かず。

F三冠王座戦:秋山準(ch)vs.太陽ケア(11/27/11)
 重厚なレスリング。
 ショルダー・タックルといったお約束の攻防の後ろに
 理を感じさせる所は見事ですね。
 ケアの打撃を受けた上で秋山が仕掛ける、と
 両者によって生まれた緩急から試合が動いていきます。
 秋山が環境を使った厳しい攻めでいつも通り試合のペースを掴むかと思いきや
 ケアが同じやり方で秋山の痛めている肩を攻めコントロールを得ます。
 ケアはバランスの良い腕攻めで中盤を構築。
 そこからの秋山の反撃ですが流れに乗せられるではなく
 完全に自身で流れをコントロールしていましたね。
 ダイナミックさには欠けるものの両者のミックスといい完成度は高い。
 終盤は秋山がエクスプロイダーよりもニーを中心に攻め、
 ケアは一つ一つインパクトのある見せ方をした大技で対抗。
 全体的に秋山が諏訪魔戦に比べ緩急の急の絶対レベルが落ちている事と
 観客が全日的構成(+ケアを知らない?)というだけで明らかに盛り上がりが薄く
 エネルギーを感じないのが残念でならない。
 全日でやった方が良かったのではないか。
 ぎりぎり好勝負。

GGHC王座戦:潮崎豪(ch)vs.KENTA(11/27/11)
 KENTAはヘビー級王座に挑戦する機運があるものの
 真っ向勝負のスタイルですし、Jrという印象は消えていない。
 その状況下で序盤にKENTAの張り手で潮崎が膝から崩れ落ちたのには拍子抜けする。
 潮崎のダメージ表現自体は素晴らしいものの
 打撃の打ち合いをお約束でしてきたNoahで
 王者の潮崎がこういうダメージ観を提示しても中々ついていけない。
 お返しでKENTAをダウンさせ返していましたが、
 五分五分に持って行く事は出来ていません。
 中盤も空回りが続く。
 意図がなく長引かせる事が前提の試合運び。
 テンポの変化や展開も一応ありますが実に弱いものです。
 場外DDTや場外フォール・アウェイ・スラムは
 まったく効果がないように映る戦いとなっています。
 終盤も至り方は良いのに
 それぞれの必殺技が安易にカウント2で返され、
 その後の攻防に何もつながっていない状況。
 もがき続けてきた2011年の締めとして
 Noahらしい物をやろうとしたらNoahの悪い所ばかりが出てしまった内容。
 まあまあ良い試合程度です。

 (執筆日:12/11/11)

注目試合の詳細

なし

試合結果

@潮崎豪、杉浦貴、谷口周平vs.高山善廣、KENTA、金丸義信(9/11/11)
AGHC王座戦:潮崎豪(ch)vs.高山善廣 (9/23/11)
B#1コンテンダーズ・マッチ:KENTAvs.杉浦貴(10/10/11)
Cグローバル・リーグ戦:佐々木健介vs.KENTA(11/8/11)
Dグローバル・リーグ戦:杉浦貴vs.佐々木健介(11/14/11)
Eグローバル・リーグ優勝決定戦:KENTAvs.森嶋猛(優勝!)(11/20/11)
F三冠王座戦:秋山準(ch)vs.太陽ケア(11/27/11)
GGHC王座戦:潮崎豪(ch)vs.KENTA(11/27/11)