TOP日本のプロレスNoah 2000年代の大会 →Best of Noah 2010

Noah:Best of Noah 2010の分析


名勝負 潮崎豪vs.佐々木健介(7/24/10)
好勝負 Jrヘビー級王座戦:金丸義信(ch)vs.丸藤正道(7/10/10)

GHC王座戦:杉浦貴(ch)vs.高山善廣(7/10/10)

GHC王座戦:杉浦貴(ch)vs.森嶋猛(12/5/10)

@潮崎豪vs.中邑真輔(8/22/10)
 数え歌2戦目。
 ベース・ラインとその変化は初戦と同じく高いレベルで安定。
 しかし2戦目で変化を求められる中で雰囲気・密度押しは諦め
 場外を使った空間構築から中邑が主導権を握る中盤展開となっています。
 中邑はチョップ封じの腕狙いかと見せかけつつ
 挑発的な打撃とニー・リフトによる追い込みを見せている。
 相手団体に呼ばれたゲストである事を理解しヒールを演じています。
 良いですね。

 一方受けに回った潮崎。
 中邑のみである程度完成されているとはいえ、もう少し細かい反撃でクオリティ向上に協力して欲しい所。
 反撃の狼煙となる脚攻めは1戦目を踏まえた戦略性として面白いが時間帯としては少しタイミングが遅い。
 終盤はNoahらしさを感じるコンビネーションで素晴らしかったですね。
 中邑も技種の使い分けが成長しているので良い攻防に繋がる。

 しかし最後、連続で畳み掛けるも粘られ、変形の新技で仕留める、という
 日本プロレスに生まれてしまった1つの定番的流れは良くない。
 同じフィニッシュでもその過程の差異がある訳でそれを否定するような事ですからね。
 初戦には劣るものの数え歌として成立しており、メインとしても通用する内容。
 中々良い試合でした。
 (執筆日:3/4/11)

Aグローバル・リーグ戦:杉浦貴vs.秋山準(5/2/10)
 こんなものたいしたことないと起き上がり合戦でスタート。
 それぞれ相手の攻めを完結させずに反撃します。
 杉浦が主導権を握った後はじっくりと。
 杉浦が花道でロープにかけてのネック・ブリーカーを決めた後
 すたすたと1人リングに戻ったのは素晴らしいですね。
 強さを感じさせます。
 こういう象徴的な表現が出来ている一方で
 技を食らっても根性で平然と起き上がるなんてこともする。
 このせいで手がつけられません。
 秋山は技種が限られていると言うのに更にアンクル・ロックまで追加されて
 杉浦の強さに秋山が追いつけないまま試合が終盤までたどり着いてしまう。
 終盤も秋山がスターネスダストなどから上回り勝利するも
 それは杉浦が黙って受け続けたから。
 それまで築いてきたものをぶつけての攻防の結果ではありません。
 平均的な良試合。

BJrヘビー級王座戦:金丸義信(ch)vs.丸藤正道(7/10/10)
 Noah本体では意外なことに初対決だそうです。
 俊敏な攻防から金丸が大きく決める技で掴み。
 場外ブレーン・バスターなど厳しい攻めを叩き込みます。
 丸藤は柵を使った技などで反撃。
 やや無理があり真剣に引き込まれるとは言い難いものの
 他では見られない動きは面白く、何をするんだろうという意味で惹きつける。
 エプロン技など過激なのを入り混ぜて身体の心配をさせながら
 要所のエルボー打ち合いで張り合う気持ちを見せるNoahスタイル。
 後半になってもそのスタイルを貫いて
 無茶なスポットを無駄に贅沢に大盤振る舞い。
 信じられない切り返しも飛び出て
 良くも悪くも滅茶苦茶でした。
 ぎりぎり好勝負。

C棚橋弘志vs.潮崎豪(7/10/10)
 棚橋は潮崎のことを良く見ていて色々なリアクションを取る。
 それでいて嫌みったらしい余裕を見せさえする。
 それに対して潮崎が真面目且つ飄々としていたのは勿体無い。
 もっとリアクション取ってあげないと。
 中盤以降もユニークなヒール・ワークでブーイングを引き出し、
 得意の脚攻めも相手を倒さずNoahマットを意識したもの。
 ドラスクも封印していますね。
 ただそうやってこの試合だけのオリジナルな展開にした結果か
 攻防がずれていて汚いのが目立つ。
 その点で新日の試合と比べると劣りますね。
 好勝負に少し届かず。

DGHC王座戦:杉浦貴(ch)vs.高山善廣(7/10/10)
 エルボーの打ち合いから始めるように
 試合開始時から真っ向勝負の構えです。
 帝王の異名を持つ高山の得意とする戦いですね。
 高山が一進一退の中のカウンターで大きなインパクトを生みながら
 本部席のテーブルへの投げ落としで主導権をつかみます。
 高山の試合運びは方法論が限られていて少々苦しいものがありますが
 一方の杉浦は技の組み合わせにより緩急を作る試合運びをして足りないものを補っている。
 高山がUWF経験を少々活かした見せ場と
 額に血を滲ませた表情で迫り来れば
 杉浦が自衛隊経験から来るものなのか、
 リアルに対するダメージ表現としては打ってつけなもので迎え入れました。
 最後は後に何度も行なわれるグー・パンチ合戦ですが
 この試合の世界観ととてもフィットしているし
 その本気具合といったら他が到底及びもつかないものでした。
 Noahらしい凄まじい試合です。
 文句なしに好勝負。

E潮崎豪vs.佐々木健介(7/24/10)
 ロックアップの静から動への変換としてショルダー・タックルを使い、
 それとはまったく独立した位置づけにチョップ合戦を見据えている。
 各動きの性質を見極め、その組み合わせを考え抜きましたね。
 最初をチョップではなくヘッド・バッドで打ち合いをしているのもにくい。

 まずは潮崎が脚狙いを入れて主導権を掴みます。
 打撃の打ち合いと一方的な攻めのバランスは若干改善の余地がありますね。
 しかし健介vs.小橋との比較が試合前からあるなかで
 チョップの扱いは本当に繊細な感覚の下使われています。
 チョップではないという選択肢含めて
 チョップというものがここまで考え抜かれたこともないでしょう。

 またその鋭い感覚はチョップに留まらず、
 健介のラリアットの位置づけも的確で良いですね。
 健介が潮崎を場外で投げ、エプロンに上がってきた所でラリアット。
 厳しい攻めで追い込んでいきます。
 表情含めたトータルでの態度の表現としてみるとまだまだですが
 そういうできない部分も含めて健介らしさでもあるし
 ここは特に大きな問題でもない。

 チョップを一つ後ろに下げることで特別にして、
 その特別なものを乗り越えることで他を特別にしている。
 同時に他ならぬチョップでその上にいっている。
 チョップ単独の使い方ではなく
 チョップ合戦の使い方に関して唯一疑問はある。
 必殺技を返されるところまで来て
 ようやくのチョップ合戦解禁でしたからね。
 過激技も目立つNoahにおいては
 チョップが必殺技を超える位置づけという所に違和感がありました。

 しかしここまでチョップを哲学した試合を差し置いて
 チョップ合戦で終える権利・価値を持った試合など存在しない。
 ぎりぎり名勝負。

F秋山準、KENTA vs.永田裕志、田口隆介(7/24/10)
 永田と秋山のレスリングは技術的で
 そこからの前振りは流石です。
 求められているものをしっかり満たしているが
 教科書以上のものではないのが残念。
 もっとリスクを背負って踏み込んで欲しかった。
 そこは若手に任せようという意図があったのかもしれないですけどね。
 実際KENTAと田口は演舞的には綺麗に合っていなかったものの
 それを問題とせずごちゃごちゃをベースに荒っぽい戦いに仕上げていました。
 他の絡みで印象に残る箇所が幾つか。
 KENTAは永田と張り合い眉間を切って流血。
 秋山は田口に襲いかかり椅子攻撃。
 ここら辺は事故っぽいところで対抗戦の雰囲気を作ろうと言う狙いでしょうね。
 ただ問題なのは結局攻防は普通なんですよね。
 上述のKENTAと田口のずれも普通にマイナス・ポイントに落ちてしまう。
 すかす、煽り立てるという点で
 田口ではなくタイチを持ってきた方が良かったのでは。
 いまいち形にならなかった平均的な良試合。

GJrタッグ・リーグ戦:KENTA、青木篤志vs.ロデリック・ストロング、エディ・エドワーズ(10/17/10)
 ROHがチョップ・タッグと示した後エドワーズの孤立に。
 エドワーズのダメージ表現は良いしNoahの攻めも重いのだけど
 エドワーズがじっと黙って受け続ける理由にはならない。
 鈍ったい進行となっています。
 その分タッチに成功したストロングが七色バック・ブリーカーで爆発させるかと思いきやそうでもない。
 基本的にNoahの攻めに対するリアクションで一応の一進一退を作っているだけです。
 確かに青木はロデリック相手に活き活きと腕攻めを行なっているし、
 KENTAもエドワーズをサンドバックに蹴りを連発していて
 攻め手x受け手の関係としては良好な関係を築いているんですけどね。
 一方通行では日本においてはビッグ・マッチに出来ません。
 終盤も広範な攻防をお試ししているがまったくギアが入りません。
 30分時間切れかと思いきやROH組みの勝利。
 波乱を演出したいのなら結果だけでなく
 内容も凝縮してその結果への流れを作ってくれなくては。
 平均的な良試合。

HJrタッグ・リーグ決勝戦:KENTA、青木篤志vs.ロデリック・ストロング、エディ・エドワーズ(10/30/10)
 地味な立ち上がり。
 何かを図っている動きかと思いきや、それで何も生まれていません。
 ROH組のチョップも余り武器としてショー・アップされていませんね。
 いつのまにか青木が孤立。
 KENTAが結構カットしてサポートしていますが、
 そこでヒート・アップするほどでもありません。
 リングの中のレスラーと控えが攻撃的にぶつからなければ
 リングの戦いに水を刺しているだけに映ります。
 ホット・タッグ後KENTAがスピードに任せて攻めますが無駄に手数多し。
 ROH組がしっかりカウンター交えて補正したかったですね。
 決勝ゆえのアクション数で求められているだけの盛り上がりを生んだが
 全然相手とはまっていない内容で残念です。
 平均的な良試合。

IGHC王座戦:杉浦貴(ch)vs.森嶋猛(12/5/10)
 ビッグ・ブーツを耐えた森嶋がいきなりラリアット。
 カウント2で返されバック・ドロップを狙うも場外に逃げられる。
 冒頭のこのシーンに代表されるように
 体重を絞って瞬発力、インパクトの増した森嶋の一発を活かした攻防の1セットがこの試合の肝。
 Noahではこの程度で決まらないという常識に依存している部分もあるが
 上手くそのセットを紡ぎ合わせています。
 杉浦が雪崩式ハリケーン・ラナを決めようとするも、
 森嶋がパワー・ボムに返すつもりだったことでヒヤリとする場面もありましたが
 大丈夫だったようでその後も壮絶な一戦に発展させました。
 森嶋の攻めを耐え切った杉浦の最後の打撃での沈め方は素晴らしかったですね。
 方法論が単調ながらNoahにしかできない試合でもあります。
 ぎりぎり好勝負。

注目試合の詳細

なし

試合結果

@潮崎豪vs.中邑真輔(8/22/10)
Aグローバル・リーグ戦:杉浦貴vs.秋山準(5/2/10)
BJrヘビー級王座戦:金丸義信(ch)vs.丸藤正道(7/10/10)
C棚橋弘志vs.潮崎豪(7/10/10)
DGHC王座戦:杉浦貴(ch)vs.高山善廣(7/10/10)
E潮崎豪vs.佐々木健介(7/24/10)
F秋山準、KENTA vs.永田裕志、田口隆介(7/24/10)
GJrタッグ・リーグ戦:KENTA、青木篤志vs.ロデリック・ストロング、エディ・エドワーズ(10/17/10)
HJrタッグ・リーグ決勝戦:KENTA、青木篤志vs.ロデリック・ストロング、エディ・エドワーズ(10/30/10)
IGHC王座戦:杉浦貴(ch)vs.森嶋猛(12/5/10)