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新日本プロレス:Wrestle Kingdom 20 in Tokyo Dome 1/4/2026の分析


名勝負 IWGP世界ヘビー級王座&グローバル・ヘビー級王座戦:KONOSUKE TAKESHITA(IWGP ch)vs.辻陽太(Global ch)(Wrestle Kingdom 20 in Tokyo Dome 1/4/2026)

棚橋弘至引退試合:棚橋弘至vs.オカダ・カズチカ(Wrestle Kingdom 20 in Tokyo Dome 1/4/2026)
好勝負 なし

@IWGP女子&STRONG女子王座戦:上谷沙弥(STRONG ch)vs.朱里(IWGP ch)(Wrestle Kingdom 20 in Tokyo Dome 1/4/2026)
 カード、シチュエーション的にMOTYを狙えるポテンシャルはありますが、
 ここはSTARDOMメインではなく新日WKの前半の位置づけ。
 
 とにかく試合時間が12分と限られているので、前半は端折ります。
 上谷定番の椅子に座ってのあっかんべーポーズもなし。
 それでも端的に両者のカラーを示しセット・アップすると
 ドーム映えも意識しながら精度の高い一進一退。
 

 2025年の主役である上谷が主役感を意図的に抑えている姿は若干寂しさはありつつも
 朱里の攻めを引き立てる素晴らしいワークで両者輝きを放っていました。
 中々良い試合。

 セミ、メインが飛びぬけている興行構成の中、
 それを除いた試合群の中ではトップのクオリティで、良い仕事をしました。
 
ANEVER無差別級王座戦:EVIL(ch)vs.ウルフアロン(Wrestle Kingdom 20 in Tokyo Dome 1/4/2026)
 ウルフは姿を現すと柔道着を脱ぎ、
 黒のショート・パンツになって入場。
 不退転の決意を分かりやすくアピールしましたね。

 試合もちゃんと仕上げてきたなという印象。
 体躯にふさわしい打撃で絵になっていました。

 アピールも出来ていましたが、こちらはまだ照れあり。

 受けも丁寧に行っていましたが気合受けを求められるキャラ。
 その相反する要素をどう共存させるかはまだ感覚なく、
 EVILがサポートしながら試合のリードラインを引いていきます。

 EVILは初心者にも分かりやすいインサイド・ワーク。
 団体も乱入系の演出を盛りだくさんで歓待。

 想像以上に楽しかったですね。

 ウルフは入団会見から半年の時間をかけてのデビュー戦。
 その間しっかりトレーニングしたであろうことが伝わりました。
 プロレスラー特有のスキルはどう伸びるかまだ未知数ですが、
 魅力はあり中西学クラスにはなるんじゃないでしょうか。
 
 今後のキャリアの作っていき方が気になりますね。 

 平均的な良試合。

BIWGP世界ヘビー級王座&グローバル・ヘビー級王座戦:KONOSUKE TAKESHITA(IWGP ch)vs.辻陽太(Global ch)(Wrestle Kingdom 20 in Tokyo Dome 1/4/2026)
 現所属においてレスラー的な総合力でいうと竹下、辻、ザックがトップ3。
 その中でも規格外のスケールを生み出せるのがこのマッチアップであり1.4にふさわしい一戦。

 辻はロープ・ブレイク時に打ってこいよと挑発。
 辻には陽なイメージがあり、
 時に(特に海外修業時代)緩さにつながったり、
 時に(王者時には)余裕さを醸す演出に活かしていましたが、
 この日はシリアスにバチバチと火花を散らします。

 竹下の複数団体所属、ロード参加できないという背景に対する嫌悪感を表現しつつ、
 攻防の作り方も相手の流れを切るという攻撃的な形で取り組み。
 
 竹下も同様の構築手法を同じく高いレベルで行うので、
 マイナス効果を遥かに超えるストーリー・テリングのリターンとし、
 このカードが持つ背景を見事に語って見せました。

 先に主導権を掴んだのは竹下。
 ここで辻が踏みとどまらず受けに引きます。
 腕を痛めた素振りもあり少し痛めたのでしょうか、
 序盤の見せ方との不調和が起こります。
 
 それでも辻のダメージ表現は素晴らしく引き込まれますし、
 攻め手の竹下も観客をじっくり見ながらの試合運びで移入感を高めます。
 観客を直接的に見るということは働きかけるということですが、
 観客を必要としないと表情で明示することで
 観客の気持ち、試合の見方をぶらさなかったのは唸りましたね。

 お互い最高のムーブと意図を持った試合運びを交錯。
 綺麗な合わせと綺麗さを捨てた生感を使い分けて終盤へ。

 試合のスケール感を保ちつつ、
 個としては余裕のない凝縮感で勝利への渇望を示します。

 クライマックスでは、ありきたりなエルボーの打ち合いとは違う形で
 ニュートラルに戻すシーンを混ぜた見せ方で盛り上げ。
 そこからの逆エビ・フィニッシュの流れは素晴らしかったですね。
 グローバリズムの竹下を世界トップに据えたまま、
 辻の新日ナショナリズムを実現させて見せました。
 最高クラスのフィニッシュ・シーンで惚れ惚れしました。

 29分の激闘。
 文句なしに名勝負です。
 
 試合後マイクアピール中の辻を欠場中だったジェイク・リーが襲撃。

C棚橋弘至引退試合:棚橋弘至vs.オカダ・カズチカ(Wrestle Kingdom 20 in Tokyo Dome 1/4/2026)
 棚橋弘至が遂に引退。

 総合格闘技との出会いで
 アイデンティティを見失っていた新日を
 現代プロレスの本流に戻すのに彼が多大な貢献をしたことに疑いはありません。

 当サイトが集計する名勝負リストにおいて
 新日の名勝負は171試合、好勝負は654試合。

 棚橋がIWGP王座を初戴冠したのは2006年7月17日。
 それ以降が占める名勝負は126試合、好勝負は553試合。
 他の日本の団体の総数すら大きく引き離しており、
 試合で魅せるという点において大きく飛躍しました。

 その内、棚橋が絡んだのが名勝負24試合(19%)、66試合(12%)。
 相手あってのプロレスの中で
 たった一人の男が見せたこの貢献値は驚異的で、
 もし棚橋がいなくても他の人がその役割を担っただろうとは誰も信じることも出来ないでしょう。

 そんな男の引退。
  
 振り返れば引退を宣言したのは2024年10月14日。
 上記名勝負製造機っぷりを見せている棚橋もその時点で
 直近の好勝負はシングルがvs.オスプレイで1年5か月前、
 トリオが11か月前と好勝負から遠ざかっており衰えは隠せませんでした。

 そして宣言してからの1年2ヶ月。
 各レスラーと試合を交わし継承したものの、
 好勝負はvs.竹下の1試合のみという現実。

 vs.オカダもAEW移籍が決まった時、
 棚橋が好勝負を生み出せるラインをぎりぎり保っていた2023年に
 壮行試合として行っていて、
 良い試合ながら好勝負には届いていませんでした。

 過去から冷静に見れば、49歳が挑むこの引退試合は、
 どれほどのものになるかクオリティは不安、
 変に感動的を追求したり過剰に盛れば滑ることさえありえるというのが前印象でした。
 
 さて前置き長かったですが本試合。
 オカダは外道を引き連れつつも入場曲はAEW版で登場です。
 
 序盤、攻防自体はオーソドックス。
 シチュエーション的にも棚橋的にも
 奇をてらったものや複雑なものはできない中で
 フラッシュでシーンを振り返るこの数え歌の走馬灯。

 猪木引退試合以来となる東京ドーム満員の観客も大歓声で後押し。
 ドームは熱量がこもりにくく発散するので
 後楽園より劣る会場と常々思っていますが、
 この日は全く感じさせない最高の環境でしたね。
 
 有機的ではないもののオカダが適切なポイントで切っているので
 同じラインで停滞せずしっかり積み重なっていきます。

 棚橋もロープにぶら下がっての逆上がりを力強く行う等
 この試合に向けて最大限のコンディションに仕上げて来たことを伺わせます。
 
 試合が大きく化けていくのはオカダのレインメーカー・ポーズから。
 振りから繰り出したのは強烈な中指。
 
 2024年の新日のオカダ・カズチカではなく、
 2026年のAEWも経験したオカダ・カズチカとしての相対。
 介錯者として感情だけを押し付けても上手くいかなかったでしょう。
 コテコテのヒールとして立てても上手くいかなかったでしょう。
 観客が勝手に期待して求めてくるものも受け止めた上で
 奇跡的なバランスでオカダは試合を構築していきます。
 
 中でもツームストンで追い込んでいく流れは
 冷たくなる程に精緻に作られていましたね。

 棚橋も最高の時をなぞって劣化版になるのではなく
 今の中で最適解を模索し続ける姿勢を示しており、
 その中で見せた盟友ムーブ(柴田のPKキック、中邑のボマイエ)を活用する解は優れていましたね。
 ムーブ自体の再現レベルは微妙でしたが、使いどころは最高でした。

 そしてここから棚橋が改めて体に鞭を打って終盤へ。
 これまでの数え歌に連なるに恥じない見応えある攻防であり、
 最後もまたオカダが見事な表現を見せましたね。

 レインメーカーが炸裂した後の間の取り方の見事さ、
 それをキックアウトしてからもう一発持って行くまでの過程、
 そして最後の最後のレインメーカーを中指式ではなく正調ポーズで繰り出す演出。
 セミと同じく試合もさることながら
 最後の締めくくりが見事過ぎましたね。

 セミを超える33分の試合時間設定。
 これを必要十分としてやりきったとは
 観終わった後でも驚きを隠しきれません。
 
 棚橋の身体的な衰えを包み込むに足る
 引退試合にふさわしい最高の語り口でした。
 
 24年ぶりのプライムタイム地上波放送で
 プロレスだからできること、を示しましたね。
 
 ぎりぎり名勝負。
 
 試合後引退セレモニー。
 ジェイ・ホワイトやオスプレイ、オメガ、飯伏が花束を贈ります。
 同期の柴田や師匠の武藤、憧れの藤波も祝って全員で写真撮影。

 その後に内藤哲也も登場。
 GHCタッグ王座を持っての登場で、
 上記面々と違ってマイクを持ったのに語り口が自分軸で広告臭かったもののこれも内藤節か。

 一人残った所でマイクを持つと感謝を伝え最後のエア・ギター演奏。
 10カウント・ゴング後に退場かと思いきや
 ゴンドラにのって練り回ります。
 東京ドームも広いので回るだけで11分。

 きしくも1ヶ月前に行われたシナの引退シーンとは正反対ですが、
 日本的で、また棚橋にも似合っていましたね。
 棚橋自身も、ファンも、あぁ引退したんだな、と
 腹に落とすために必要な時間だったように思います。
 
 ステージに戻ってくると締めくくり。
 最後の言葉は勿論「愛してまーす」。


 (執筆日:1/?/26)