新日本プロレス:G-1 Climax Final 8/15/11の分析
名勝負 | なし |
好勝負 | G1Bブロック公式戦:中邑真輔vs.鈴木みのる |
SlamBamJam製。
2枚です。
@G1Aブロック公式戦:ヒデオ・サイトーvs.永田裕志
サイトーはカリブの悪霊に乗り移られたというギミックを
ラリった浮浪者のような形で、上手く演じているといってよい。
ただこの系統は試合を戦い手だけでなく作り手としても潰す事になる。
日本人というだけで外人より身近に感じ、その怪奇派のギミックはリアリティーが薄まるのだから
アブドゥーラ・ザ・ブッチャーみたいに何か一芸を持たないと同じ土俵に立つことすら出来ない。
このサイトーが入場時に襲いかかり絞首刑までするので
試合は永田が何の能力を発揮する機会のない(でも白目を披露する機会はあるが)内容で、悪い試合。
AG1Aブロック公式戦:ジャイアント・バーナードvs.矢野通
バーナードという巨体という事で
ヒールの矢野が戦術的に立ち向かう必要がある事は分かる。
しかしいつも通り矢野は台本に書かれる動きと
その瞬間しか効果のない低レベルな煽りを連発。
更にバーナードが反撃する終盤になっても
レフェリーや椅子を絡めた攻防を行うので、
結局、バーナードが巨体をアピール出来た時間はない。
そうなると低レベルなヒール的試合運びをした前提理由すらない事になる。
ひどすぎる試合。
BG1Aブロック公式戦:高山善廣vs.ランス・アーチャー
高山はロング・タイツをはいてきましたが、
ロング・タイツは足元のよろつきが目立つからねぇ。
巨体同士の耐え合いを見せているが無理しているのが見えすぎる。
試合運びもぼろぼろで、もうシングルは引退した方が良いですね。
アーチャーも高山相手では技を打つ際に高さを稼げないので魅力を出しきれず。
巨体同士をぶつける、のは一つの定番だが、
2人の状態を考えると間違いといっても過言ではないカードです。
悪い試合。
CG1Aブロック公式戦:真壁刀義vs.高橋裕次郎
高橋は全般的なデフォルメは上手くいっているのに、
レスラーとしての個性、魅力になると全然駄目。
内藤を裏切ったのに特にヒールとしてのアピールも出来ていないのは痛いですね。
こんな高橋が相手では真壁がハルク・アップ的単純さで戦局を変えていくのも仕方ない。
高橋がまるで敵たりえていないが、介入によってカード上は勝利。
そこにどんな価値があるのか。
少し悪い試合です。
DG1Aブロック公式戦:棚橋弘志vs.内藤哲也
棚橋はコンディションが悪いというストーリーのようで、
内藤が積極的に攻め込み、双方が変化球でぶつかり合う内容。
終始、変幻するのに試合時間が短いからどうしても軽い印象を受けますね。
内藤に棚橋以上の声援が集まっているのなら
真っ向からぶつかって乗り越える試合を組んでも良かった気がします。
平均レベル。
EG1Bブロック公式戦:後藤洋央紀vs.ストロング・マン
ストロング・マンは押し飛ばした後、腕立て伏せをしたりする。
ヒールでもないのに変なアピールですね。
それはともかくストロング・マンは比較的空気を読めるようになったけど
細かい攻防が出来るようになった訳ではありません。
後藤の腕攻めによりスリルとは程遠いグダグダな内容となっています。
しかし最後、技一発で盛り上げたのもまたストロング・マンらしいといえるか。
悪い試合。
FG1Bブロック公式戦:カール・アンダーソンvs.MVP
アンダーソンは丁寧な試合運びでまさに職人。
一方でMVPはそれに比べ粗いですね。
日本のスタイルを志向しているのは伝わってくるのですが、
WWEで学んだ流れを押さえる試合運びを軽んじる理由にはならないし、
6連発ジャーマンは形式でしかない。
最後の切り返しのようにTTBは使わなければいけない訳で、
それは最後に1回だけみせれば良いというものではない。
今のMVPはベノワの完成されたスタイルを引き裂いてバラバラにしたような状態です。
悪くない試合。
GG1Bブロック公式戦:天山広吉vs.小島聡
小島がしっかりした試合運びを見せるも
天山は精彩を欠いて、大した事してないのにカウント17でリングに戻る展開に打って出る始末。
小島がアピールしているのだから、天山が動けば関係性が紡がれるのに動かない。
前半で試合の枠が規定されてしまいましたね。
後半は天山が粘りを見せますが、
その理屈はリングの戦いにはなく、これが天山x小島という過去の戦いで有名なカードだから。
クライマックスもリアルに危ない技でドラマを見せている。
レスラーならリアルではなくリアリティーでストーリーを語りたいものです。
まあまあ良い試合。
HG1Bブロック公式戦:中邑真輔vs.鈴木みのる
序盤は本格的なレスリングで緊迫感があります。
打撃の駆け引きの後、みのるが中邑を場外に落とし、そこから腕攻め。
守勢に回った中邑がハイ・センスなタイミングで反撃していくのがこの試合の見所。
最初のナックル・パンチは凄く恰好よい使い方です。
ナックル・パンチを只奥の手として出す物、と設定通りの捉え方だとあんな使い方は出来ない。
自分がこの試合の中で輝くにはどうすれば良いか、
自分の持っているレパートリーと試合の戦局を照らし合わせて上手く組み立てている。
みのるも的確な技使いでドラマチックな攻防を作り上げると、
フィニッシュを食らって出た鼻血を実況に垂れ流して最後の一押し。
12分しかないために効率的に作らざるを得ず、終盤のドラマ性のある攻防と
背反を起こしているのが残念だが、両者の緻密な自己価値の築き方は圧巻。
総量ではなく密度、融合性で言うならば新日本プロレスの中で年間ベストです。
文句なしに好勝負。
IJrタッグ王座戦:アポロ55(プリンス・デヴィット、田口隆祐)(ch)vs.飯伏幸太、ケニー・オメガ
飯伏、オメガが不意打ちからダブル・ダイブを狙うスタートですが、
全員抑揚を持たせ過ぎていてリアリティーのない演武というイメージを受けてしまう。
序盤のシークエンスの結果としてダブル・ダイブでこそないもののダイブが炸裂。
しかしそれを利用して突っ走る予定にもないのです。
相手を抑えつける意図もない平々凡々な試合運びの中で、
オメガの遊び心は真剣見が足りないように見えるアピールとなって現れる。
終盤も試合に規律を与える攻防の流れが不自然。
インパクトのある合体技のアイディアを只披露しているだけです。
数え歌再びでしたが、これでは偽者です。
まあまあ良い試合。
JG1決勝:中邑真輔vs.内藤哲也
レスリングは中邑が上。
この事実を受けて中邑が余裕を見せたのは当然です。
内藤としてはそれに対して反論を示さなければいけない。
しかし凡庸です。
前の試合の脚攻めの影響が残っている、というネガティブな理を見せている状況ではないというのに。
中邑が全てを圧倒している状況ですが、
中邑は効果的に、そして情熱的に打撃を打ち込んでいく。
この中邑の気持ちに内藤が答えたいものですが、何を見せたかと言うと工夫を凝らしたカウンターです。
問題はこれが流れを生む反撃を成すカウンターではなく只のカウンターに過ぎないって事です。
天才というプッシュを受けているので、
ひらめきをイメージさせるカウンターを重視し、そこに工夫を凝らすのは分かるけれども
応援を引き出すため耐える姿を見せるという意識がまったくない、という
シングル・レスラーとしての欠陥をどうにかするのが先でしょう。
悪い意味で、中邑が、自分はG1覇者足り得るレスラーであるのか、と自分と戦っていた内容。
中邑はそれを証明し称賛に値するが、内藤は準優勝という結果に反して薄っぺらい仕事です。
平均的な良試合。
総評
公式戦のクオリティがいまいち。
タッグ王座戦とG1決勝も良い試合ではありますが厳しいですね。
しかしそれなりに盛り上がるのはストーリーに重みがあるメジャーの強みか。
どちらにせよ中邑vs.鈴木が見れただけで満足です。
DVD Rating:★★☆☆☆
(執筆日:10/28/11)
注目試合の詳細
なし試合結果
@G1Aブロック公式戦:ヒデオ・サイトーvs.永田裕志AG1Aブロック公式戦:ジャイアント・バーナードvs.矢野通
BG1Aブロック公式戦:高山善廣vs.ランス・アーチャー
CG1Aブロック公式戦:真壁刀義vs.高橋裕次郎
DG1Aブロック公式戦:棚橋弘志vs.内藤哲也
EG1Bブロック公式戦:後藤洋央紀vs.ストロング・マン
FG1Bブロック公式戦:カール・アンダーソンvs.MVP
GG1Bブロック公式戦:天山広吉vs.小島聡
HG1Bブロック公式戦:中邑真輔vs.鈴木みのる
IJrタッグ王座戦:アポロ55(プリンス・デヴィット、田口隆祐)(ch)vs.飯伏幸太、ケニー・オメガ
JG1決勝:中邑真輔(優勝!)vs.内藤哲也