TOP日本のプロレス新日本プロレス 10年代の大会 → 新日本プロレス:ALIVE 12/4/11

新日本プロレス:ALIVE 12/4/11の分析


名勝負 IWGP王座戦:棚橋弘志(ch)vs.永田裕志
好勝負 なし

@カール・アンダーソン、キラー・ラビットvs.邪道、外道
 アンダーソンはラビット・マスクをつけて登場。
 マスクの耳が気になってリズムが壊れていますね。
 ラビットも今年見たラビットの中で一番ひどい。
 物真似プロレスみたいなスタイルで技使いが滅茶苦茶です。
 邪道、外道も存在価値をまったく示せず。
 ひどすぎる試合。

A高橋裕次郎、矢野啓太、石井智宏、ロッキー・ロメロvs.田口隆介、タマ・トンガ、キング・ファレ、タイガー・マスク
 ヒール軍は矢野にのっかっているも
 矢野のスタイルといったら何の必要もない金具攻撃をするような、
 つまる所を必殺技を通常技の如く中盤で浪費するようなスタイル。
 スポットのタイミングがでたらめです。
 ベビーフェイス軍もチームの中で統一感なく、
 トンガのみすぼらしいミスが出てしまう。
 最後はロメロと田口が攻防していましたが
 ここに加えられては普通のJrの攻防が浮く。
 悪い試合

B後藤洋央紀、KUSHIDAvs.杉浦貴、青木篤志
 杉浦はやる気がありません。
 それは後藤に3連勝して興味ない、という
 ストーリーにのった表現かもしれない。
 しかし表現を良質にこなすかどうかと
 表現されたものが面白いかどうかは時に一致しないものです。
 今回はそれによって対抗戦の売りの熱さが失われている訳ですからね。
 またKUSHIDAと青木の絡みも攻防自体は悪くないが火花はない。
 カードからすると期待外れの内容で、
 ここから後藤vs.杉浦IVにつながっていくのは良く分からない流れでもありました。
 平均レベル。

C井上亘、真壁刀義vs.ランス・アーチャー、高山善廣
 真壁と高山はビッグ・マンとしてのぶつかり合いを
 試合が求めていましたが今の高山にそれは出来ません。
 井上は気持ちの出し方がバランス悪く、
 何となしに高山にジャーマンを決めてしまう。
 アーチャーも相手との合わせ方が下手です。
 悪い試合。

D飯塚高史、ヒデオ・サイトーvs.天山広吉、小島聡
 場外乱闘から始まり天山の孤立。
 そこには何も感心するような事はないけれど
 形がついているので悪いなりに楽しめます。
 後半になってもベビーフェイスが余裕を持った状態です。
 そんなヒールが敵足りえていない状況で
 サイトーが飯塚のグローブを欲しがっている?という
 ネタ・ストーリーが絡んでくるので最後まで戦いに見所はなかった。
 少し悪い試合

EJrヘビー級王座戦:プリンス・デヴィット(ch)vs.デイビー・リチャーズ
 デヴィットは打撃を打ち返さず受けた方が流れは良くなったと思いますよ。
 そうしなかったのはデイビーに対する観客の反応がいまいちだからか。
 スポットを重ねたり、過激なスポットを取り入れたりしていますが、
 試合が許容する域を明らかに超えているし、
 その過ちを行っても尚、観客は思うように盛り上がらない。
 盛り上がりの絶対量だけでなく方向性もそうです。
 デイビーのヒールとしての煽りにもブーイング一つ飛びませんでした。
 デヴィットの重い受け表現は見事だったけれど
 デイビーがまたしても団体の壁に阻まれてしまった印象が残る内容。
 平均的な良試合。

FIC王座戦:田中将斗(ch)vs.MVP
 MVPが粗い事を考慮してかハードコア・ファイトとなっています。
 一応展開を変える際には形をつけていますが、
 基本的にはどのハードコア・スポットもその瞬間を盛り上げるためのみ。
 試合が過熱するなんて事はありません。
 MVPが雪崩式ブレーン・バスターを食らっても気合いで起き上がるなんていうらしくないシーンもありましたね。
 終盤も技の浪費とセコンドの引き伸ばしでしかない。
 これならいつ終わっても同じですよ。
 悪くない試合。
 
Gジャイアント・バーナードvs.鈴木みのる
 鈴木の打撃を耐えバーナードの怪物性がスケール・アップされる。
 バーナードはこういう単純な見せ方がされてきませんでしたがこれが一番効果的だと思いますよ。
 みのるがロープや柵を使った脚攻めで封じ込めにかかる。
 バーナードが序盤の設定に則りセルを弱めにして
 脚のダメージの影響を控えめにしたので
 みのるのこずるさが際立ち、テクニックを活かすカウンター・シーンも生まれましたね。
 両者の位置づけが確固としたまま終盤へ。
 みのるは外敵であってvs.怪物の構図であっても
 応援したくなるようなキャラではありません。
 それ故に終盤思うように盛り上がる事が出来ませんでしたね。
 みのるはほんの少し真っ向勝負を織り交ぜても良かったかな。
 只攻防自体は良質で、特に最後のフィニッシュへの持って行き方は感心しました。
 中々良い試合。

H内藤哲也vs.中邑真輔
 内藤は左肘を怪我している状況。
 試合への影響の見通しを立てないまま
 試合に参加した結果、序盤から痛みにのたうつ結果となっています。
 そのため序盤は内藤が試合を続行できるかが焦点となっている事は否めません。
 しかし中邑の重めに受けるフォローに支えながら試合を軌道にのせました。
 そしてテーピング等を外した後半からはしっかり戦いを演出。
 ここでも中邑が一撃性をより演出し、
 手数が少なくても不自然ではないように取り計らう配慮を見せています。
 自分だけでなく相手や試合の事も考えられるようになって本当に成長しましたね。
 そうやって中邑がセミとしてのラインを満たした絵図を提示しました。
 内藤はそこに乗っかるだけで試合をやりきる事も出来ましたが、
 身を切ってまで+1を提示しそれ以上の試合にしました。
 あくまでこの試合は負傷を軸にドラマチックになっただけなので
 まだまだ内藤は実力を証明する必要があるけれども
 少なくともその証明すべき実力に見合うプロ意識、気持ちが既にある事は示した。
 好勝負に少し届かず。

IIWGP王座戦:棚橋弘志(ch)vs.永田裕志
 最初のレスリングで緊張感を見せる事が多いですが
 今回は気持ちを押し殺して淡々と永田がアマレスの実力差を見せつける形となっています。
 その永田が挑発的に蹴りつけ、棚橋がストンピング連打、と
 王者としての格好に合わない行動に打って出ます。
 永田が棚橋の負傷している胸にハードな蹴りを叩き込み、
 棚橋が蹴りを受け止め脚攻めで反撃する展開。
 ここまでで分かるように3戦目という事で感情を特別な題目に掲げた訳ですが
 その一方で相手に対する対策といった面が薄く、
 技術的攻防、戦いとしての発展性は一歩下がってしまった印象です。
 脚攻めは棚橋のクオリティの源ですから
 いつもの展開を行うのは良いとして、
 いつも通り行う、その難しさ、工夫を提示して欲しかったですね。

 今回は棚橋の脚攻めは短めで、その後永田の腕攻めが行われます。
 ランニング・アーム・バー・テイク・ダウンという印象深い技を加えながら
 痛みが伝わってくる腕へのサブミッションで追い込んでいきます。
 脚攻め後で蹴りを要所に絞っているのも理に適っていますね。
 棚橋の悲壮感漂う痛がりようも見事なものでした。
 一極攻め対決ならではの、1回の部位攻撃では形勢がひっくり変わらない消耗戦に突入。
 1発目のカウンターを食らうハイ・フライ・フローにおいては
 いつもの綺麗な流れを自ら乱す事で余裕の無さを演出しています。

 そこからは終盤を超えた特別な攻防を展開。
 ただ永田の黒目式アーム・ロックやマジック・スクリュー、棚橋の裏投げは
 確かに特別な試合という舞台に合わせたものだが、
 その技が流れ、攻防の中でベストのものかは疑問が残る。
 ここでも苦しくてもやりきろう、諦めないという姿を強烈に見せつける一方で
 攻防が段階を踏んだ積み重ねとなっていて
 閃きに欠ける印象が序盤から引き続きありましたね。

 最後は永田が雪崩式アーム・バー・テイク・ダウンを狙い、
 それを棚橋が凌いで永田をリングによろめかせ、
 ダイビング・クロス・ボディからのハイ・フライ・フローでカウント3。
 いつものハイ・フライ・フローと違い、ぎりぎりで勝ち切ったイメージを強く残す素晴らしいフィニッシュでした。
 
 一戦目を発展させるという形ではなく新たに書き下ろした内容なので、
 前回完成されていた物が崩され効率が落ちている部分もありますが、
 その分感情の理に沿った構築によるドラマが新しく付与されている。
 帳消しでクオリティは変わらないもののより深い所で心に訴える分
 年間最高試合という名目によりふさわしいものとなっている。
 ぎりぎり名勝負。

総評
 低調な試合の数々に滑ったJr王座戦でどうなる事かと思われましたが
 最後の3試合が本当に素晴らしかった。
DVD Rating:★★☆☆☆
(執筆日:12/8/11)
 

注目試合の詳細

なし

試合結果

@カール・アンダーソン、キラー・ラビットvs.邪道、外道
A高橋裕次郎、矢野啓太、石井智宏、ロッキー・ロメロvs.田口隆介、タマ・トンガ、キング・ファレ、タイガー・マスク
B後藤洋央紀、KUSHIDAvs.杉浦貴、青木篤志
C井上亘、真壁刀義vs.ランス・アーチャー、高山善廣
D飯塚高史、ヒデオ・サイトーvs.天山広吉、小島聡
EJrヘビー級王座戦:プリンス・デヴィット(ch)vs.デイビー・リチャーズ
FIC王座戦:田中将斗(ch)vs.MVP
Gジャイアント・バーナードvs.鈴木みのる
H内藤哲也vs.中邑真輔
IIWGP王座戦:棚橋弘志(ch)vs.永田裕志