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全日本プロレス:Triple Crown Championship 1997の分析


名勝負 三冠王座戦:小橋健太ch)vs.三沢光晴(1/20/97)

三冠王座戦:三沢光晴(ch)vs.川田利明(6/6/97)

三冠王座戦:三沢光晴(ch)vs.田上明(7/25/97)

三冠王座戦:三沢光晴(ch)vs.小橋健太(10/21/97)
好勝負 なし

@三冠王座戦:小橋健太(ch)vs.三沢光晴(1/20/97)
 今回は試合経過と共にコメントしていきましょう。
 ・・・
 (試合開始)
 今回はいきなり危険な投げでスタートなんてせず。
 エルボー・スイシーダとタイガー・ドライバーを狙っただけに収まりま したね。
 あれって四天王プロレスの場合、ある程度の必然性を持っているのだけ れど
 リアル・タイムで追っかけていない立場の私としたら
 その必然性が試合外から持ってこられるのは隙じゃないんですよ。
 良いスタートです。
 ・・・
 四天王プロレスってシステムとして
 かなりのレベルまで耐えて良いので
 より小刻みに技でリズム、流れを作れるのが強みですね。
 ・・・
 (5分過ぎ) 
 小橋が腹攻めを始めました。
 結構早めに出してきましたね。
 普通なら中盤に出る物ですけど。
 ・・・
 (10分過ぎ)
 三沢がセカンド・ロープからのドロップ・キックにツイストを加えたり
 打撃の打ち合いにビッグ・ブーツが混じっていたりと
 特別な試合になる雰囲気が漂ってきましたよ。
 ・・・
 (15分辺り)
 三沢はエプロンからのエルボー・アタックが避けられ柵に激突。
 ここから腕攻めですね。
 ・・・
 (25分経過)
 ここまでずっと腕攻めが続いていますよ。
 尋常じゃない執拗さ。
 しかも特筆すべきは三沢のエルボーの威力が落ちているという表現をし ています。
 こんな事ありましたか。
 いつもなら腕攻めを食らっても痛みに耐えながら打つだけだったのに今 回は違う。
 反撃において右腕を使いたくない、
 しかし使わなければ勝てないんじゃないか、という悩みまで含んでいる。
 四天王プロレスと正統派プロレスが
 最高の形で入り混じった物が見られる予感がします。
 ・・・
 (25分過ぎ)
 小橋のラリアットを放った腕に三沢がエルボーを打ち小橋の腕もウィー ク・ポイントに設定されました。
 これで両者とも得意技を放つには
 自分の身を削らなければならない訳で
 必然的に死闘ムードになっていきますね。
 ・・・
 (30分経過)
 気合で解決するのではなく
 腕のダメージによりカバーにいけないという理屈で大技が飛び交う形に。
 四天王プロレスの中でも最上に位置する素晴らしい死闘になっています。
 ・・・
 (35分くらい)
 四天王プロレスなんてジャンル分けされるようなものを超えて
 97年の1月20日小橋vs.三沢という1つの独立した領域に辿り着いて いる。
 ・・・
 (40分経過)
 タイガー・ドライバー91がカウント2で返される。
 理屈じゃないね。
 理屈を超えたよ。
 語弊があるかもしれないが
 三沢は小橋を殺しても良いと思っている。
 そして小橋も三沢に殺されても良いと思っているんだ。
 あぁ、2人は抱き合う代わりに闘っている。
 ・・・
 (42分6秒試合終了)
 涙が出てきた。

 ここにあるのは・・・

 キリストが死を覚悟しながら処刑台へ歩み続けたように・・・

 どうしようもなく圧倒的で・・・

 どうしようもなく巨大な・・・

 業に向かって敢然と立ち向かっていく人の姿だ。

 この上なく悲しくて・・・
 そしてこの上なく崇高で・・・
 人を魅了して止まない美しい人の姿だ。

 歴史的な名勝負。
 (執筆日:1/?/09)

A三冠王座戦:三沢光晴(ch)vs.スティーブ・ウィリアムス(3/1/97)
 ウィリアムスがいきなりバック・ドロップ。
 早期決着もありえる大技での追い込みを序盤から見せます。

 ただ三沢のダウン・モードは抑揚がなく、
 1発目のバックドロップ後も2発目のバックドロップ後も変わりません。

 三沢が四天王と5スター・マッチやってノっている時期に
 案外ガイジンと凡戦もしていたのは新しい発見でしたね。

 構築的にも表現的にも微妙な受けをした時に
 攻め疲れを狙ってるのかもしれません、と
 実況やマスメディアがフォローしてしまう日本の風土のせいでしょう。
 特に全日は馬場が実況を務め、神格化されている馬場の言葉は絶対でしたから尚更。

 そういう共犯関係は裏を返すと日本のプロレスならではの情感性に繋がっているので一概に悪い面ではありませんが、
 アメプロに比べロジックが育ちにくい一因だな、と改めて実感しました。

 3度目のバック・ドロップは流石に食らえない、と
 大枠の試合の流れはありますが、
 試合の早い段階で2発炸裂しているので、
 それを防ぐ攻防はまどろっこしい。

 良い試合ながら効率悪いのでクオリティは上がり切らず。

 平均的な良試合。
 (執筆日:5/?/22)

B三冠王座戦:三沢光晴(ch)vs.川田利明(6/6/97)
 それぞれKO級の打撃を放ち挨拶代り。

 三沢が場外タイガー・ドライバーを放てば
 川田も腕へのサブミッションでエルボー封じに動いて、
 明確に一つ一つシーンを作れていますね。

 切り返して相手がダウンした後の
 見せ方、間によってMAXシーンばかりの構成を上手く繋げています。。
 観る側の感覚への作用という点では
 多用しすぎてもう少し調整してもという印象もあります。

 一方で強烈な技ありきだけでもなく、
 技をかけようとしてかけられず崩れるなんていう
 疲弊感の見せ方も含めて死力を尽くす攻防に仕上げています。
 両者の受け表現も冴えていて素晴らしかった。

 文句なしに名勝負。
 (執筆日:5/?/20)

C三冠王座戦:三沢光晴(ch)vs.田上明(7/25/97)
 やはり田上を一番輝かせられるのは三沢。
 元々ジュニアでやっていて
 四天王でも随一の上手さを持っていますからね。
 93年の一戦に比べれば四天王プロレスに毒されて入るものの
 形を変え過激な技の追い込みとそれに対する粘りで持って
 田上を非常にスケール・アップさせています。
 中でも場外の攻防に力を入れていて
 断崖式チョーク・スラムを一回転して着地するなんていう
 ビッグ・スポットも生まれましたね。
 ぎりぎり名勝負です。
 (執筆日:1/?/09)

D三冠王座戦:三沢光晴(ch)vs.秋山準(9/6/97)
 レスリングから入る等
 秋山のことを大切にした出だしの作り方でしたね。

 相手を一度立てた上で
 そこを活かしてカウンターの効果を最大化している。

 秋山をアンダードッグに落とし込まず一進一退。
 勿論100%の怖い三沢ではないが予想以上ですね。

 秋山が脚攻め。
 それに頼り切らず緩急もつけていて、
 三冠らしい試合をしようという気持ちもあります。

 三沢の間の微調整により
 パワー・バランスにフィットさせる上手さも見逃せない。

 秋山の大技も利いてきて
 秋山のトップ・グループ入りを確信できる内容です。

 ただ終盤三沢はもっと攻めで応えてあげたかったですね。
 秋山のラッシュに任せすぎ。
 王者の攻めが弱いと王座戦としてギアが入らず足踏みです。
 その後の三沢の反撃はストレートでしたし、
 ここがもう少しミックスされるだけでも最後の印象が変わりました。

 好勝負に少し届かず。
 (執筆日:5/?/21)

E三冠王座戦:三沢光晴(ch)vs.スティーブ・ウィリアムス(10/11/97)
 前回は早々に大技を切りましたが、
 今回はその過去を利用して予感させる程度の攻防に抑えつつ、
 緊張感は持たせています。

 レスリングの良い動きもありますね。

 一進一退意識した攻防はしっかり堆積。

 レールに乗るので迷わずまっすぐ行けば試合が良くなる状態になっています。

 ただ終盤ウィリアムスの攻め比率が低くなって
 それまでの過程から想像するほどは三沢が追い詰められず
 試合としても高まらなかったですね。

 中々良い試合。
 (執筆日:5/?/22)

F三冠王座戦:三沢光晴(ch)vs.小橋健太(10/21/97)
 凡人の小橋が三沢に追いつき
 同じ立場に立った今全力でぶつかる。
 三沢vs.小橋を要約するならこうなるでしょう。
 さてこの試合ですが三沢vs.小橋を悪く読み解いてしまったように思えます。 
 今は同格、ついでにベビー、ヒールに分けるなら
 ベビーvs.ベビーな訳ですから元々リングで表現できるドラマ性に欠けるんですね。
 それにもかかわらずこの試合は
 戦法(例えば一極攻めなど)や工夫も小細工だと言う様に
 押せ押せで場外ダイブや過激な投げがの打ち合いに終始してしまった。
 結果、技が先走りして表現力に乏しいですし、
 また20分をいかずして技切れしているので単調に見える一面も生まれました。
 只つまらないで切り捨てられるかと言ったらそれも否。
 元々全力ファイトの四天王プロレスの中でも
 特別全力ファイトと言うに値するだけのエネルギーが詰められた故か変質を起こし
 見る者の心を圧倒的な質量で殴りつけるのではなく
 内からじくじくとえぐるようなそれになっているんですね。
 このサムシングは欠点を補うには十分。
 ぎりぎり名勝負です。
 (執筆日:1/?/09)

注目試合の詳細

なし

試合結果

@三冠王座戦:小橋健太(ch)vs.三沢光晴(新チャンピオン!)(1/20/97)
A三冠王座戦:三沢光晴(ch)vs.スティーブ・ウィリアムス(3/1/97)
B三冠王座戦:三沢光晴(ch)vs.川田利明(6/6/97)
C三冠王座戦:三沢光晴(ch)vs.田上明(7/25/97)
D三冠王座戦:三沢光晴(ch)vs.秋山準(9/6/97)
E三冠王座戦:三沢光晴(ch)vs.スティーブ・ウィリアムス(10/11/97)
F三冠王座戦:三沢光晴(ch)vs.小橋健太(10/21/97)