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全日本プロレス:Best of AJPW 2019 part.3の分析


名勝負 三冠王座戦:宮原健斗(ch)vs.ゼウス(7/28/19)

三冠王座戦:宮原健斗(ch)vs.野村直矢(9/3/19)
好勝負 王道トーナメント1回戦:ジェイク・リーvs.諏訪魔(9/14/19)

@三冠王座戦:宮原健斗(ch)vs.ゼウス(7/28/19)
 ゼウスはプロレスの型に嵌りすぎていないが故に
 キレが際立っていてリアル一歩手前の怖さがある。
 宮原はそのゼウスと名勝負数え歌状態に入っており、
 息ばっちりに合わせていきます。
 場外の柵に振り合う際の余韻感の出し方、
 間のコントロールは素晴らしいものがある。

 中盤はゼウスが感情的な打撃を放ち、
 宮原が気合でチョップを耐えていき、変調。
 変調しつつもベースの軸がぶれないので
 非常に高いクオリティを維持していますね。

 エプロンDDT、エプロンから引き離してのバック・ドロップ。
 そこからスピーディな演舞で終盤へ突入。
 一つ一つシークエンスをしっかり完結させて
 ステップを上げて行くのがこの数え歌の強みですね。

 三冠王座戦らしい極上のタフ・マッチでした。
 ぎりぎり名勝負。
 (執筆日:8/?/19)

A三冠王座戦:宮原健斗(ch)vs.野村直矢(9/3/19)
 打撃の余韻を軽くしてのチェーンのフローを高めたり、
 柵へのウィップを食らうも導線にカメラマンがいたことで防いだりと
 ユニークさもしっかりあって掴みは十分。

 その延長の野村の腹攻めはしっかりしているし、
 反撃した宮原のラフ要素によるヒートと
 そこから間やアピールを置いての緩急作りは
 いつも以上に冴え渡っていますね。

 続いて野村もラフにやり返す気概を見せる。
 ここは半年前の野村にはなかった懐の広さでしょうね。
 エプロンの宮原を場外からジャーマンで
 引っ張り下ろし投げたのもインパクトがありました。

 攻守の切り替え方を良く理解し
 スリリングな一進一退で終盤に向けて加速。
 中盤の伏線を忘れた激しい攻防は
 やや表層的に留まった見せ場作りとも言えますが、
 完全燃焼したと思わせるだけの内容になっています。

 ぎりぎり名勝負。

B王道トーナメント1回戦:ジェイク・リーvs.諏訪魔(9/14/19)
 初手の出だしは中途半端でした。
 肉弾戦にいく諏訪魔に対し、
 ジェイクはオーソドックスなレスリングで首狙い。
 かといって戦略的に相手のスタイルから外しあっている訳でもありません。

 しかし諏訪魔がブレーンバスターを投げ返し
 ロープ越しのスリーパーからジェイクをダウンに追いやると
 お互いの魅力がかっちりとはまります。
 諏訪魔はパワフルさをサブミッションでも表現することができているし、
 ジェイクはダウン・モードで移入感を高めている。

 ジェイクは先の逆転を許すブレーン・バスターを
 もう一度トライし主導権奪取。
 ジェイクは試合の構成、観客の一体感、腹狙いへの攻めの一本化、
 視野広く試合を捉えることができていると分かりますね。

 諏訪魔もポイントを突いたハイスポットで
 両者の魅力が高いレベルでミックスされた終盤。
 綺麗に道筋をまとめながら芳醇な攻防を繰り広げました。

 ただし最後のバックドロップでのフィニッシュはやや懐古主義で、
 わざわざこの試合の隠し球として持ってくるべきかは疑問でした。

 ぎりぎり好勝負。

C王道トーナメント決勝:ジェイク・リーvs.宮原健斗(9/24/17)
 ジェイクの勢いを激しい蹴りと攻守のバランスで表現。
 CC決勝を踏まえると良いスタートにも思えますが、
 ジェイクが格下ではないぞ、と余裕を醸すのが難。
 付加要素ではありますが、
 得意のダウン・モードに入りきらない結果になっている。

 ジェイクの守りから攻めへの転調に勢いがなく、
 またその攻めも受けたものに比べると重みが不十分です。

 一定以上のクオリティはあるが特別にはならず。
 ジェイクの念願の宮原越えは嬉しいものの
 前回がMOTYクラスの凄すぎる試合だっただけに期待外れ。

 中々良い試合です。

D三冠王座戦:宮原健斗(ch)vs.ジェイク・リー(10/24/19)
 かなりまったり始めるもまったりかける意図は試合時間の為だけ。
 ジェイクが宮原超えをした経緯も踏まえて
 打撃で一進一退ができる環境にあるも
 それが何か+αに働いているかというと否。
 この試合では宮原がラフ殺法で相変わらずの宮原節を炸裂させていますが、
 ジェイクがそのクオリティに乗せることができず、それを繋いで引き継ぐだけ。

 ジェイクがエプロンDDTにサッカーボールキックで宮原をKO。
 大きな転換点になりえたもののリングに戻るまで2分半時間をかけた上に
 リングに戻った後、張り合いでノー・セル・キャンセルしたのはやりすぎ。

 工夫を怠ったり、工夫が行き過ぎたりと極端で余り評価できない。
 ロング・マッチらしい演出は適切だが、
 それまでのロング・マッチの作り方がまずまずのレベルですからね。

 全日らしさの一つとはいえ三冠王座戦=30分以上の試合ありきになるのはどうか。
 平均的な良試合。

E世界Jr.ヘビー級王座トーナメント1回戦:Kagetora vs.岡田祐介(12/17/19)
 無骨な岡田をKagetoraが脚攻めで封じる展開。
 岡田は26歳ということで海外基準だと
 まだグリーン・ボーイ的ファイトなのはどうなのと思いますが、
 感情を動かすファイトぶりという点では魅力があります。

 一方のKagetoraはこの原石に対し、
 実に上手い構築を見せていて、
 彼がAJPWに継続参戦すれば
 ヘビー級に対して少し弱い状態のJr.をぐんと押し上げるのではと期待がかかります。
 終盤も見応えある形に仕上げていました。

 好勝負に少し届かず。
 (執筆日:12/?/19)


注目試合の詳細

なし

試合結果

@三冠王座戦:宮原健斗(ch)vs.ゼウス(7/28/19)
A三冠王座戦:宮原健斗(ch)vs.野村直矢(9/3/19)
B王道トーナメント1回戦:ジェイク・リーvs.諏訪魔(9/14/19)
C王道トーナメント決勝:ジェイク・リー(優勝!)vs.宮原健斗(9/24/17)
D三冠王座戦:宮原健斗(ch)vs.ジェイク・リー(10/24/19)
E世界Jr.ヘビー級王座トーナメント1回戦:Kagetora vs.岡田祐介(12/17/19)