全日本プロレス:2011 Heavyweight part.1の分析
名勝負 | CC公式戦:秋山準vs.太陽ケア(4/8/11) |
好勝負 | 三冠王座戦:諏訪魔(ch)vs.太陽ケア(1/10/11) CC公式戦:諏訪魔vs永田裕志(4/9/11) CC公式戦:鈴木みのるvs.秋山準(4/12/11) |
@三冠王座戦:諏訪魔(ch)vs.太陽ケア(1/10/11)
攻め手がねじ伏せようとし、
受け手が体勢を変えて逃れるレスリング。
重々しく進めるかと思いきや諏訪魔の打撃にケアが案外簡単に退きます。
プランチャでも仕切りなおすように微細な変化を長時間かけて見せようとする心づもりのようです。
諏訪魔が隙のない王者像を見せ、
それに対しケアが首攻めで一発一発切り崩していく展開。
両者の上手さが出ていますね。
只この2人なら時間をかける事が第一義になくても
もっと重厚感のある試合を実現させられるとは思います。
どれぐらいの幅で一進一退を行っていくかに関して優れた感覚を見せ、
大技とハード・ヒットが目立つも同じ事ばかりやっている印象は抱かせない。
最後はKO級の一発一発を消耗戦の装いで一つ一つして見せる。
全日らしい35分ものロング・マッチでした。
2人のベスト・パフォーマンスではないが
35分全てにおいて高いレベルを維持していた事は驚嘆に値する。
ぎりぎり好勝負。
ACC公式戦:秋山準vs.太陽ケア(4/8/11)
まずはじっくりグラウンド・レスリングですが、
徐々に動かしてからロープ・ワークにいく定番のリズム変化が実に美しい。
秋山のドラスクにケアがすぐ立ち上がりビッグ・ブーツを打ち込み最初の盛り上がり。
気合いの起き上がりを見せつつもちゃんとドラスクのダメージを示す当たり
ケアの細かい部分にまで気を配った高い意識が光ります。
ナックル・ロックの重みも素晴らしくこれだけでお金を取れる。
元全日の秋山を迎えるにあたってケアのモチベーションが異常に高く、
その緩急はリズム・スピード・勢い全ての面で優れていましたし、
耐えとセルを両立している事で受け表現は深く、
そして首攻め及び打撃は気迫が籠っていてとてつもなくハードでした。
秋山に合わせて手法を変化させていましたが、
まったく目的、標準がぶれないのには感嘆しました。
秋山は定期参戦出来るほどのコンディションにはないようで仕掛けるシーンが少ないですが、
それをリアルにスタミナが不足している、と断言できない程
上記のとおりケアの攻めが厳しく試合として違和感は与えない。
また仕掛け自体は高いセンスを感じさせ、
一つ一つの動きにサプライズ、重み、工夫を兼ね備えて見せています。
中盤に秋山がフロント・ネック・ロックを決めると
ケアもぐったりして秋山の状態に試合をよりフィットさせていきました。
いやもう動き一つ一つに語る所があり感心しきりでしたね。
後半はケアが意図を不明瞭にして注目を引き寄せた所から
秋山が柵を使った怒涛の反撃ラッシュで更にドラマチックな試合へと変化させる。
無機質にケアを追い込む様は秋山らしい怖さがあります。
ケアも本当に理屈のある入り方から技を一つ一つ決めて反撃。
秋山が後の諏訪魔戦のように今の状態でどう勝負できるかの方法論を見つけていないので
終盤5分強の見せ方が限られ、やりきれなかった感は残ります。
しかし印象を決定づける終盤が今一つでもそれを補って余りあるほど美しい試合。
2011年の全日#1。
ぎりぎり名勝負。
B鈴木みのるvs.太陽ケア(4/9/11)
まずはケアが巧みなレスリングの動きを見せた後、いきなりTKOが炸裂。
前日にあれだけハードな事をした事もあり
組み立ての工夫、見せ方により重きを置いている印象です。
エプロンの鈴木にビッグ・ブーツを狙うも
鈴木がかわしてロープを使ってのアキレス健固め。
ここから鈴木の脚攻め。
MMA的なバックグラウンドを感じさせるサブミッションで
脚攻めという展開を情緒豊かに訴えかけます。
ケアが前日と同じく一発一発が効果的な首攻めで反撃しようとします。
鈴木はケアの厳しい攻めに合わせてベース・ラインを
かなりぐったりした状態に設定しているのが良いですね。
その中で変幻自在の切り返しを輝かせている。
終盤はスピード感に欠けるものの
そこからこの技につながっていくかと驚嘆する程巧みな流れで攻防を重ねました。
万能の世界観ではないものの二日連続でこれ程素晴らしい試合をやってのけるとは恐れ入る。
好勝負に少し届かず。
CCC公式戦:諏訪魔vs.永田裕志(4/9/11)
初対決とあって対抗戦らしい盛り上がりがありますね。
そしてそれにふさわしい緊張感を作り出す。
レスリングも良いけれど、それよりも離れている際の感情の見せ方が上手い。
永田がハードなロー・キックで武器を示し、
それに諏訪魔がどっしりと対応して王者の強さを示し返す。
ベリー・トゥー・ベリーを防ぎ合ってヒート・アップ。
このシーンは三冠王座戦で同じことをやっていましたがリアリティーが違いますね。
やはりこういうのは初回で演じる時の方が気持ちが入るのでしょう。
諏訪魔の間の取り方はいつもの画一的なものより表現的。
永田はその諏訪魔を苦しめるに値する蹴りを絡めた腕攻めを見せる。
諏訪魔がダウンして全日ファンの応援を引き出す展開にしたのは
対抗戦らしい雰囲気を活かしていて良いですね。
ただ普段そういう反撃の機運を高める見せ方をしないので反撃方法はやや物足りないですけど。
また劣勢な展開なら弱々しい部分をもう少し表現したい所。
強さにおいては上述の通り間を操っていたんですけどね。
弱さになるといつも通りのゆったりした間になってしまいました。
只どんな状況になっても最後は技一発一発で強さを取り戻していくのは
理屈抜きに流石王者といった所です。
終盤の攻防は決してはまっていないが、
だからこそバック・ドロップでのフィニッシュが鮮烈に映りました。
期待通りの素晴らしい試合。
ぎりぎり好勝負。
DCC公式戦:鈴木みのるvs.秋山準(4/12/11)
綺麗なレスリングからスタート。
みのるが良いタイミングで仕掛け場外にやると
秋山が逆に柵へのスタンガンを決めます。
秋山が得意の環境を使いながらの首攻めで上質な試合運びを見せました。。
対するみのるは腕攻めで反撃。
こちらは入りこそ同じようにロープを使ったアーム・バーでしたが、
ベースには痛みを伝えるサブミッションを多用して後半の下地を作っていましたね。
一発一発をしっかりと見せていった後、
ネック・ロックを食らっている秋山がエクスプロイダーに切り返す、という
スポットが驚きを与えて終盤へ。
得意の流れでストレートに攻め込む秋山に対し、
みのるの変化球が対比的に映えていましたし攻防も冴えていましたね。
CC準決勝に勝ち上がれるかどうかを決める大事な一戦という位置づけ通り
通常の終盤以上のクライマックスも見せてくれました。
カード通り良質な試合としてスタートし、
試合が進むにつれどんどん良くなっていった試合。
ぎりぎり好勝負。
ECC優勝決定戦:真田聖也vs.永田裕志(4/13/11)
永田のじっくりした見せ方で輝けない真田。
無理に合わせるよりスピード使って若さを見せても良いと思うのですが、
前の試合の疲れの影響もあるようです。
永田の蹴りに対して気持ちを見せ、
勢いある反撃につながりかけるも自らの工夫がその勢いを止めてしまいます。
永田が真田の動きに対して緩急を作り、
ぶれない試合運びを見せるので面白くなっているが、
完全に永田完勝のイメージしか残らず、
実績作りには有効でもこの試合の内容に限ればまったくの時期尚早だった、という結論になる。
平均的な良試合。
注目試合の詳細
なし試合結果
@三冠王座戦:諏訪魔(ch)vs.太陽ケア(1/10/11)ACC公式戦:秋山準vs.太陽ケア(30分時間切れ)(4/8/11)
BCC公式戦:鈴木みのるvs.太陽ケア(4/9/11)
CCC公式戦:諏訪魔vs.永田裕志(4/9/11)
DCC公式戦:鈴木みのるvs.秋山準(4/12/11)
ECC優勝決定戦:真田聖也vs.永田裕志(優勝!)(4/13/11)