東京女子プロレス:Best of TJPW 2022 part.2の分析
名勝負 | なし |
好勝負 | プリンセス・オブ・プリンセス王座戦:中島祥子(ch)vs.辰巳リカ(7/9/22) 東京プリンセス・カップ準々決勝:中島翔子vs.渡辺未詩(7/31/22) 東京プリンセス・カップ準決勝:渡辺未詩vs.山下実優(8/13/22) 東京プリンセス・カップ準決勝:渡辺未詩vs.坂崎ユカ(8/14/22) |
@プリンセス・タッグ王座戦:マジカル・シュガー・ラビッツ(坂崎ユカ、瑞希)vs.荒井優希、赤井沙希(7/9/22)
タッグ要素をアクセントに入れつつも
荒井の孤立シーンは坂崎が敢えて手放してタッチさせる終わり方。
赤井が本質的にタッグとしてどういう役割をこなすか定まっていなかったりと
荒井、赤井のタッグとしての評価はまだまだ。
しかし上記の展開を許せる程
マジラビは絶対王者として貫禄のワークですし、
荒井も一瞬一瞬の気持ちの見せ方、表情作りは魅力的なレベルに仕上がっています。
絶対王者に肉薄していく攻防は熱くドラマチックで
素晴らしい王座交代劇だったと言えます。
好勝負に少し届かず。
Aプリンセス・オブ・プリンセス王座戦:中島祥子(ch)vs.辰巳リカ(7/9/22)
ベーシックな攻防ながら
それに打ち勝った所の中島の立ち構え方により意味深くなっていますね。
王者としての風格を醸しています。
中島がコーナーに登ったところを辰巳がドロップ・キック。
この時のコーナーに引っかかるように崩れ落ちる受け。
やっていること自体は比較的真面目で、凡庸といっても過言ではないのですが、
そこに華を添えていて、それはアピールだったり、ハード・バンプだったりしますが、
地力があるからこその重みのある見せ場に昇華されています。
辰巳の脚攻めも見事でしたね。
幅を広げつつ一本筋を通しており、
激闘の雰囲気を十二分に出してメインを締めくくりました。
女子プロという枠に収まらない王道の激闘。
文句なしに好勝負です。
B東京プリンセス・カップ準々決勝:中島翔子vs.渡辺未詩(7/31/22)
渡辺のレスリングとの向き合い方が良いですね。
じっくり相手を固めつつも
タイミングを見計らって次の手を狙いに行きます。
自分の性に合っていて結果的に集中度が高く正のスパイラルを生んでいます。
中島も攻めの流れが良好で
双方のスタイルの良さが出て組み合わさっています。
渡辺が組み立てしやすい攻めを積み重ねているとはいえ
それを上手く調整しているな、と感心しました。
渡辺も最後まで乗った波から脱落せず激闘を表現。
この内容はこのまま王座戦で転用しても胸を張れるレベルですね。
ぎりぎり好勝負。
C東京プリンセス・カップ準決勝:渡辺未詩vs.山下実優(8/13/22)
渡辺は一つ一つの動きに重みがあり、
真っ向から山下と普通のプロレスが出来ます。
強度で持ってぶつかるというのは坂崎や瑞希にも出来ず、
待望の相手と言う気がしますね。
山下の相手を削るような蹴りに対し、
渡辺はリアルも半分交えていると想像させますが、止まりつつ動く。
止まりつつ動く所にプロレスのリアリティがあり、
これを真偽はどうあれ表現として出来る境地に来たことに
大器としてのポテンシャルを感じますね。
渡辺もバック・ブリーカーや抱え込んでからのジャイアント・スイングなど
パワフルなムーブを放って盛り上がっていきます。
終盤もベストな化学反応。
唯一惜しむらくはフィニッシャーですね。
一発だけで逆転3カウントはここまでの攻防からはしっくりこず、勿体無さを感じました。
その点だけ惜しいですが、間違いなく渡辺のキャリア・ベストです。
文句なしに好勝負。
D東京プリンセス・カップ準決勝:渡辺未詩vs.坂崎ユカ(8/14/22)
渡辺が初っ端から力強いバック・ブリーカー。
坂崎は腰を気にしながらの試合運びですが、
序盤からダメージ表現しつつ、弱々しさを感じさせないのは流石ですね。
山下は目に見える高い山のように立ちふさがりましたが、
坂崎は目に見えない深い海谷のように立ちふさがります。
技の見せ方が的確で素晴らしいストーリー・テリングでしたが、
決勝とはいえ雪崩式ティア・ドロップが軽めに扱われたのは気になりました。
TJPWも激闘が数多く生まれるようになってきましたが、
技設定はここで今一度丁寧に見直して欲しい所です。
最後は坂崎が非情に切り捨てるかのような貫録勝ち。
これまでの勢い、ドラマを考えると勿体ない気もしますが、
このトーナメントで渡辺が得たものは一過性のものではなく、
これから数年のドラマに繋げる力がありますからこれもあり。
ぎりぎり好勝負。
(執筆日:8/?/22)