2024 Year in Review
2024年プロレス・シーン振り返りです。
(2025年2月2日時で執筆)。
■名勝負/好勝負数の変化
プロレスとして国境の境が低くなり黄金時代を迎えている現代ですが、
2023年が凄すぎたか、2024年は名勝負/好勝負数が半分近くに減少しましたね。
した。
2024年
・名勝負(25)
アメリカ 16(12)/日本 3(3)/メキシコ 2/他国 1/女子 3
・好勝負(211)
アメリカ 96(66)/日本 71(35)/メキシコ 10/他国 11/女子 27
2023年
・名勝負(50)
アメリカ 28(20)/日本 16(8)/メキシコ 1/他国 0/女子 5
・好勝負(390)
アメリカ 192(101)/日本 112(56)/メキシコ 17/他国 23/女子 46
()はそのジャンル内のWWE、AEW、NJPWが占める名勝負・好勝負数。
■トップ・メジャーの存在感
名勝負/好勝負数で世界をリードするのがWWE、AEW、NJPWの3団体。
全体と同じく減少傾向を見せていますが、存在感は大きいですね。
アメリカにおいては2023年の名勝負・好勝負数における
WWE、AEWの占有率は55%(2023年)→70%(2024年)となっています。
WWE、AEWで活躍の場が与えられるかはともかく、
才能のあるレスラーならWWE、AEWに所属できるようになって
そこに以前ほどハードルがなくなった印象。
それによりインディーの勢いがそがれたか。
WWEは他団体への派遣も寛容になってきていますが、
今はある程度規模の大きな団体が対象。
継続的に素晴らしいレスラーが生まれるように
インディー・シーンにも目を向けてくれたらと願います。
■WWE vs. AEW
WWEとAEW、どちらが良いプロレス団体なのか。
少し前ならAEWに軍配が上がっていた印象ですが、
WWEはビンスが去りし後、HHHがバランスの良い団体運営をしており、
AEWは最高の試合ができる環境を提供しつつ、成長痛の歪が生まれて、と
今は甲乙つけがたい拮抗した状態にありますね。
WWE
・2024年:名勝負2/好勝負26
・2023年:名勝負5/好勝負47
AEW
・2024年:名勝負10/好勝負40
・2023年:名勝負15/好勝負54
名勝負数・好勝負数の減少率だけ見ると
世界最高のプロレス・クオリティを誇るAEWの方が抑制されていますが、
WWEは2024年ローマンvs.コーディのビッグ・マッチを成功させましたからね。
ザ・ロック優先の過ちを犯しそうになりつつ訂正しての成功だったのも印象的でした。
2025年も引き続き競い合って盛り上げて欲しいものです。
■アメリカン・マット
アメリカン・マットを振り返っていきましょう。
まずはImpact Wrestlingから名称の戻ったTNA。
Impact Wrestlingは2023年第3局として栄光を取り戻しました。
しかし2024年は名勝負数/好勝負数は1/3と大きく減少。
名称付でない通常放送においての好勝負がほとんどなくなったせいなので、
力を入れているイベントは成功させてはいます。
ジョシュ・アレキサンダーやマイク・ベイリーといった
世界最高峰のレスラーを抱えており、NXT提携で夢も広がっているので、
この一抹の心配を2025年は吹き飛ばして欲しいですね。
TNA
・2024年:名勝負1/好勝負6
・2023年:名勝負3/好勝負19
USインディーにおいて存在感を示していたのがGCW。
デス・マッチだけでなく通常形式でも見応えの試合を提供し、
昨年はルチャの面白さも布教していましたが、
2024年の好勝負はデス・マッチ3試合のみという…。
年間80興行もしていることを考えると
他の団体より好勝負を生む確立が低いとすら言える状況です。
2024年のそれはたまたまだった、と言えるような一年にして欲しいですね。
同じく大きく失速したのがROH。
USインディーと言えばROHであり、
今AEWが担っているようなプロレス天国として名勝負・好勝負を量産してきましたが、
2024年は遂に好勝負0という現実に。
面子的にも厳しい状況は否めません。
その中で才能で飛びぬけているのはアテナ。
このままROHだけで活動するのは惜しまれますが、
2025年は既に1月にSTARDOM参戦。
他の団体でも彼女の姿を見られると嬉しいですね。
PWGは、スパドラが彼女のガン闘病に付き添う為にもうイベントを開けないとアナウンスしていましたが、実際に開催されないまま。
それ自体は仕方ないもののこのままPWG TWENTY: Mystery Vortex 8/13/23は配信されずお蔵入りになってしまうのか。
PWG王座戦、60分アイアン・マン・マッチ:ダニエル・ガルシア(ch)vs.マイク・ベイリーは魅力的過ぎて諦めきれませんね。
様々な団体が名勝負/好勝負を減らす中で比較的安定してたのがDPW。
阿部を招聘したり、レブロン・コゾーンという新たなスターを生み出したりと
相変わらず面白かったですね。
ただ8試合の内、6試合にベイリーが絡んでいます。
ベイリーはタッグ王座を昨年末に落としており、
2024年に比べるとベイリーのビッグ・マッチも自ずと減るはず。
2025年が正念場ですね。
DPW
・2024年:名勝負1/好勝負7
・2023年:名勝負2/好勝負11
団体のこと以外で触れるべきことが一つ。
上記でWWE、AEWの占有傾向の話をしましたが、
その中でどインディーでひっそりを花を咲かせ、そして散っていったダニエル・マカベ。
彼の引退ロードは2024年のアメリカン・マットで必ず触れるべきトピックでしょう。
お世話になったそれぞれの団体でそれぞれの盟友と共にそれぞれの色合いの試合を残しました。
彼の出世作であるvs.ティモシーが組まれたのも嬉しいサプライズでした。
■日本のプロレス・マット
まずは名勝負が3試合のみ、そしてそれが全てNJPW…。
2023年はNJPW/AJPW/Noahがそれぞれ色の濃い名勝負を生み出していただけに
かなり寂しい1年でしたね。
NJPWは唯一名勝負を生んだ団体ということで一強勝ちかというとさにあらず。
2試合はAEW絡みですし、1試合はSTRONGの試合でした。
しかし外国人を上手く使えているのはNJPWの誇ってよいところ。
オスプレイを1時間越えのケージ・マッチで送別したり、
ザック・セイバーJr.がG1優勝、デヴィッド・フィンレーがグローバル王座保持、と
才覚のある外国人にしっかり機会を与えているのは好印象です。
2025年は早くもゲイブ・キッドが化けましたしね。
日本人で言うと2024年は内藤が最後になるであろうIWGP王者を務め、
棚橋の引退が決まったりと世代交代の過渡期だったという印象。
鷹木や石井も流石に年齢を重ね、どこまでハード・ヒッターを維持できるかという所です。
外国人に比べると頭数が少ない印象は否めないものの
辻や大岩、藤田といった有望なレスラーは育ってきています。
TAKESHITAが同時所属を発表したのも大きいですね。
後は2025年早々こけた海野ですね…。
彼が読めるとカードも広がって来そうですが…。
NJPW
2024年:名勝負3/好勝負35
2023年:名勝負8/好勝負56
Noahは名勝負こそなかったものの
そこは正直トップ王座を誰に任せるかでぶれる領域ですからね。
名勝負/好勝負数で言うと昨年並み。
これは全体平均からするとかなり優秀なパフォーマンスです。
NJPWと同じく海外修行からレスラーを化けさせ、
トップに織り込む手法にも安定感あり、
WWEとのラインもあって、と2025年も期待させてくれる団体です。
Noah
2024年:名勝負0/好勝負12
2023年:名勝負2/好勝負12
DDTも安定していましたね。
やはり団体の垣根が低いのが今の時代強いですね。
アメリカでブレイクしたTAKESHITAが継続的に所属していますし、
ベイリーとの縁も残っています。
それに加えて上野がしっかりトップ王者として実績を残してきました。
唯一不安要素があるとすれば眉を顰めるようなネタに手を出しがちという所ですね。
コンプラ意識が年々高まっている中でそれが爆弾にならなければ良いですが。
DDT
2024年:名勝負0/好勝負8
2023年:名勝負1/好勝負9
全日本プロレスは好勝負1つだけ。
数だけ見ると絶望的ではありますが、
そもそも2023年の19試合の内、13試合が宮原絡みでしたからね。
青柳絡みも10試合で、宮原、青柳が関わっていない好勝負はわずか2試合のみ。
宮原、青柳が一歩引けば必然の結果とも言えます。
ただ、次の時代を担うレスラーとしては結構揃っていて、
安齋始め齋藤兄弟に王座を任せて経験を積ませた一年でした。
それが2025年にどう繋がってくるかは楽しみです。
宮原、青柳頼みから脱却して
彼ら若い者同士で好勝負を生み出したいですね。
AJPW
2024年:名勝負0/好勝負1
2023年:名勝負3/好勝負16
全日と同じくBJWも好勝負1試合のみで寂しい結果。
デス・マッチ・シーンはFreedomsに完全に譲った感がありますね。
その分ストロング・ヘビー級王座でハード・ヒットを見せて来た所もありますが、
やはり関本、岡林の存在が大きく、2人の年齢と共にシュリンク。
2025年は厳しい見通しかもしれませんが、予想を裏切って欲しいところ。
昨年並みで優秀と言われる傾向の中で
見事に昨年以上の成果を残した団体がありましたね。
それがDragon Gate。
闘龍門世代が去って以降、
その試合スタイルは良くも悪くもマイルドになっていて、
下の世代のレスラーの小粒感も否めません。
それでも2024年は望月Jr.やISHINが新たにブレイク。
大ベテランの望月をトップにYAMATOら、Ben-Kら、菊田ら、ISHINらと
それぞれの時代感を持ったレスラー層が多層に積み重なっていて
それが他の団体以上に化学反応を生みそうな気配がありますね。
Dragon Gateから離れてしまったファンも久しぶりに見たらまたハマるかもしれませんよ。。
Dragon Gate
2024年:名勝負0/好勝負7
2023年:名勝負0/好勝負1
■メキシカン・マット
他と比べて情報が入ってこないのはありますが、
2023年-2024年インディーでおっと思わせる試合が出てきていないですね。
AAAは好勝負0。
エル・イホ・デル・ヴィキンゴが出て来た時は
ミステリオJr.の時みたいにAAAが盛り上がるのでは、と一瞬夢見たのですが、夢でしたね。
相変わらずヘビー級戦線がグダグダなことをやっていてどうしようもないなと。
AAAのやりたいプロレスからすると
年齢は厳しく見て切って新陳代謝を回さないといけないように思うのですけど
あれで回っているのが不思議です。
対するCMLLは安心感ありますね。
Youtubeでも見やすい視聴環境が整って、
この内容なのでメキシコ以外のプロレス・ファンにもオススメされる状況。
記念大会の純正ルチャドール対決も成功させた一方で、
ブライアンvs.ブルー・パンテルという夢の対決も成功させたのは大きい。
国際感覚もあってAAAとは全然違いますね。
■他大陸マット
2023年は好勝負を生んだ団体が12団体ありましたが、2024年は5団体のみ。
それはちょっと寂しいものの
ヨーロッパで言えば、ヨーロッパと言いつつイギリスとドイツのみ、という環境から
フランスやベルギーでも熱量が高まっているのは嬉しい所です。
ドイツはwXwが元気ないものの
イギリスはRevProが相変わらず最高のプロレスを見せており、
ここをお手本にそれぞれ小さな団体が出来得る範囲で盛り上げていってくれれば、と思います。
オーストラリア・マットは2023年の3試合が2024年2試合になった形ですが、
どちらも母数が小さすぎますね。
2018-2019年の黄金時代の光景がありますから、こんなものじゃないだろうと。
それに当たってはMCWがもう少し頑張って欲しい所ですね。
2年連続好勝負がありませんでした。
■女子プロ・マット
2024年女子プロ・マットに衝撃が走ったのはやはりMarigold設立ですね。
STARDOMは全女時代と同じくらいスター・レスラーが揃っていて、
試合の質も引けを取らないという印象を持っていました。
それがMarigoldに分裂して
スター・レスラーが分かれれば、当然試合に影響しますね。
名勝負/好勝負数見れば歴然です。
2023年は24試合あったのが2024年は両団体合わせて13試合。
半分近くに減ってしまいました。
一団体に人が集まり過ぎると
人間関係も複雑で色々と難しいのでしょうけれども
アウトプットでしか評価はできない訳で。
女子プロが男子に比べて母数も少ないことを考えると
団体が分かれるよりかは1団体で男子顔負けの試合を何試合も生んで
ムーブメントを起こしてくれる方が良かったのではと思ってしまいますね。
STARDOM
2024年:名勝負2/好勝負8
2023年:名勝負3/好勝負21
Marigold
2024年:名勝負0/好勝負3
STARDOM失速に伴いトップ獲得のチャンスもあったTJPWですが、こちらも失速。
2023年が団体の歴史の中でも飛びぬけて最高の一年だっただけに仕方ないか。
ミッドカードのレスラーも育ってきています。
後は何だかんだアイドル的な見せ方でもビジネスになってしまう中で、
どこまでそこに甘えず本道でも魅せれるか。
2025年の活躍に期待です。
TJPW
2024年:名勝負0/好勝負4
2023年:名勝負3/好勝負8
上記ビッグ・ネームの団体以外はそれぞれ粛々と活動していましたが、
2023年と比べて特筆すべきことと言えば、
Sareee自主興行の存在感が強くなってきていますね。
夢の対決が実現する場所になっていて
彼女の求心力が女子プロを変えてくれることに期待です。
後はSeadlinnngとOZ。
Seadlinnngはコンスタントに好勝負を生み出していたイメージですが、
何よりの功労者である中島が引退。お疲れ様でした。
このまま団体として衰えていくのか正念場にある2025年です。
そしてOZは尾崎ですよ。
56歳で相変わらず乱闘を繰り広げていますが、
半分以下の年齢である26歳の桃野とトップ王座で好勝負残すんだから
長いことやってたらその中で何が起こるか分からないものだなと。
2024年印象的な出来事の一つでしたね。
男性レスラーもいるイレギュラーな存在のチョコプロ。
好勝負数を減らしましたが、
これは8年ぶりの後楽園を号令にチョコレート広場を離れたのが大きいか。
リングでも変わらずのパフォーマンスを見せてくれましたが、
やはり他にない唯一無二の個性はマット・プロレス。
2025年は再びチョコレート広場に戻るということで期待しつつ、
駿河メイはどこに出しても胸を張れるポテンシャルなので、
ゲストとして色々な団体のリングに上がって欲しい気も。
2024年:名勝負0/好勝負6
2023年:名勝負0/好勝負10
■まとめ
名勝負/好勝負数は半減という衝撃的な数字でしたが、
それぞれ理由ありつつ悪いことばかりではありません。
ダウン・トレンドという訳でもなく、
相変わらず現代プロレスは多様で刺激的で面白い。
名勝負/好勝負数が減ったなら、その中でちょっと空いた時間で、
他の団体、他の国にも視野を向けて楽しみを広げるぐらいの気持ちで
2025年もプロレスを見守っていきたいものですね。
以上、2024年の振り返りでした。