Wrestling Observer:Match of the Year 20's part1の分析
| 名勝負 | タッグ王座戦:ハングマン・ペイジ、ケニー・オメガ(ch)vs.ヤング・バックス(AEW 3/1/20) タッグ王座戦、ケージ・マッチ:ヤング・バックス(ch)vs.ルチャ・ブラザーズ(AEW All Out 9/5/21) G1決勝:オカダ・カズチカvs.ウィル・オスプレイ(NJPW 8/18/22) US王座戦:ウィル・オスプレイ(ch)vs.ケニー・オメガ(AEW 1/4/23) ウィル・オスプレイvs.ブライアン・ダニエルソン(AEW Dynasty 4/21/2024) |
| 好勝負 | なし |
2020年
@タッグ王座戦:ハングマン・ペイジ、ケニー・オメガ(ch)vs.ヤング・バックス(AEW 3/1/20)
バックスの動きの見せ方は完全にコントロールされてますね。
全速力は簡単。制動するのはより難しい。
キャリアを重ねた今だからこその動きです。
そして丁寧に紡いできたペイジのバックスに対する不穏な感情。
リスペクトのある攻防と棘のある乱戦を一つの試合の中で両方楽しめます。
チーム間だけでなくチーム内も感情が渦巻く。
ヒートアップするペイジをオメガが抑えようとしたり、
逆に控えめなオメガにペイジがイラついたり。
バックス内もニックとマットでスタンスは細やかに違いがあります。
六通りの感情の交錯による最高峰のストーリー・テリング。
アクションも上質な連携技は勿論のこと、
スポットだけで押さずに焦らしを入れたり、
タッグの構成の作り、空間の使い方、
あらゆる要素で一級品のものを見せています。
花道の攻防、スパイク・ツームストンによるペイジのKOシーンで
ドラマも最高潮に爆発させてフィニッシュ。
最後ペイジがニック、マットそれぞれに
パックショット・ラリアットを叩き込み、
ペイジ一人で勝ったような演出をしたのは
まだTo be Continued?って感じで
進展がなかったとこぐらいでしょうかね、不満点は。
文句なしに名勝負。
(執筆日:1/?/20)
2021年
Aタッグ王座戦、ケージ・マッチ:ヤング・バックス(ch)vs.ルチャ・ブラザーズ(AEW All Out 9/5/21)
ケージという閉じられた空間ながら空間構成が見事。
縦横斜め平面的にも立体的にも
どこでもアクションが出来る。
そしてそのアクションを構築論の中で描ける。
両方があってこそ初めて出来る上質なワーク。
手錠による孤立の代替シーンもありアイディアもはまっていますね。
バックスの煽り、ルチャズの手慣れたアクションのチェーン。
両者ともタッグの総体として動いて盛り上げていますね。
流血などのドラマ要素もバッチリ兼ね備えています。
絵作り盛りだくさんなので足し算のプロレスにも近く、
もう少し有機的に描けたかもという思いは一部ありますが、
トップ・クラスのタッグにしてケージ・マッチです。
ぎりぎり名勝負。
(執筆日:9/?/21)
2022年
BG1決勝:オカダ・カズチカvs.ウィル・オスプレイ(NJPW 8/18/22)
オカダが執拗なグラウンド・ヘッド・ロック。
韻踏む中でオスプレイのスピード・コントロールが光りますね。
いつもと比べて細かく段階を刻みつつ
まずはオカダが鋭い場外DDTを決め試合が動き出します。
背中と首を攻めていく流れですが、
オカダの構築力がいつも以上に冴えていましたね。
構築力が前面に出る分、
前半においては相対的に情緒が不足気味に 映ることもありましたが、
今回は試合にかける意気込みが非常に伝わってきます。
そして、それが単なる表情を表に荒々しく出せば良いというものではない、ということもちゃんと良く分かっています。
オスプレイもオカダの構築にジャストで乗っていますが、
決勝という舞台でこれまでになく受けに徹した試合の作り方を見せています。
本物のトップ・タレントであるが故に世界を股にかけながらも
オスプレイがこの受け側のポジションを演じれるのはレアで、
そういう意味では実経験も最近では少ないパターンですが、
そんなことを全く問題にしないレベルで
最上級の方法論とダメージ表現を見せるのだから恐れ入ります。
20分経過しカウンター合戦に突入。
同型技で相手と合わせたり、自分の中で韻を踏んだりと
多様なバリエーションは枚挙にいとまはなく
5分突っ走った高濃度な攻防にも関わらず限界を感じさせません。
更に25分を超えてオスプレイが棚橋、AJ、オメガ等ライバルのムーブを加えてドラマチックにして、
30分を超えてシンプルに集約させつつも
非凡な見せ方、カウンターの混ぜ方で非日常感を継続。
最後までお見事でした。
昨年に比べるとやや熱量に物足りなさを感じたG1でしたが、
この準決勝、決勝で全ての印象を覆してきましたね。
歴史的な名勝負です。
(執筆日:8/?/22)
CUS王座戦:ウィル・オスプレイ(ch)vs.ケニー・オメガ(AEW 1/4/23)
AEWで前振りした上で遂に1.4で激突。
俊敏に動き、拳を思いっきり振るい。
当たり前のことを尋常ではないレベルで。
サーカス的な切り返し合いで目を引かずとも
攻守一致の表現は思わず視線が吸い寄せられます。
猪木オマージュでコブラ・ツイストを入れたりと
場面1つ1つに見せ方、見せ場にこだわって作っていますね。
前半は思ったより過激さに依存していませんでしたが、
テーブル・スポットを機に後半は死闘モードへ。
スポットを荒っぽくするだけでなく試合運びの質も変えていたのは圧巻。
オスプレイの自在の緩急はとんでもないし、
オメガのコーナー上でDDT決めようという現代的異常性も他にない。
オスプレイ大流血の中で得意の切り返し合いのレベルも落ちることなく、
圧巻の潰し合いをやりきりました。
文句なしに名勝負。
(執筆日:8/?/23)
Dウィル・オスプレイvs.ブライアン・ダニエルソン(AEW Dynasty 4/21/2024)
世界最高峰のレスラー初対決。
ベーシックなレスリングの探り合いからして、
相手の動きをつぶさに見て、
観客の反応を読み取って、と
見えている視野、把握している情報量が半端ないですね。
かわし合いで演出された均衡感。
離れた際に見得を切ったオスプレイに対して
ブライアンはじっと見つめた立ち構え。
そこからブライアンの攻撃性が垣間見えていきます。
無理にポーズを取らず個性に立脚しながら
雰囲気を作り上げていくのでリアリティーがありますね。
攻防のレベルは序破急を意識しつつ、
低いレベルに抑えたムーブも
それは軽く扱うということではなく
スポットとして余韻、表現をしっかり付与します。
ブライアンが腕絡みの攻めを開始。
雪崩式ドラゴン・スープレックスなど
絶対値の高い技も織り込んでいきます。
攻めるべき時に攻め続け、
反撃する時まで反撃しない。
クオリティを追い求める際に、
どうしても攻防量の軸もあるので、
それが難しくなりがちですが、
まったく制約を感じさせず適正化されていますね。
最後の得意技、必殺技の見せ方、カウンターも完璧。
過剰な返し合いがなくても、30分という2人の対決には短い時間でも
世界最高峰の幕閉じにふさわしいやり取りでした。
アメリカにROHが設立されて
プロレス文化がメジャーからの一方向発信でなくなって、
アメリカのインディーの灯がイギリスに火をつけて、
それが隣接エリアにも広がって。
その多大な貢献をした両者の大成したタイミングでの激突は
この20年間を代表するにふさわしい内容でした。
歴史的な名勝負。
(執筆日:12/?/24)





