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Wrestling Heart:Match of the Year 10's part2の分析


名勝負 G1決勝:棚橋弘至vs.中邑真輔(新日本プロレス 8/15/15)

タッグ王座戦、3本勝負:ザ・リバイバル(ダッシュ・ワイルダー、スコット・ドーソン)(ch)vs.#DIY(ジョニー・ガルガーノ、トマッソ・チャンパ)(WWE 11/19/16)

IWGP王座戦:オカダ・カズチカ(ch)vs.ケニー・オメガ(新日本プロレス 6/11/17)
 
IWGP王座戦、時間無制限3本勝負:オカダ・カズチカ(ch)vs.ケニー・オメガ(新日本プロレス 6/9/18)

コーディvs.ダスティン・ローデス(AEW Double or Nothing 5/25/19)
好勝負 なし

◆2015年
@G1決勝:棚橋弘至vs.中邑真輔(新日本プロレス 8/15/15)
 永遠のライバルによる決勝とあって
 追い込め切れず間を開けることを選択する序盤。
 演技、展開に依り過ぎず散文形式で
 色々な仕掛けを施した慎重な出だしでした。
 シリアスな雰囲気感を生み出しつつ
 リズムによる抑揚、挑発的なやり取りのミックスでエスカレーション。
 とはいっても個々のスポットは通常の半分目。
 観るものの感覚を捉えた間使い、リズム、試合構成で
 スポットとそれ以外が有機的に結びついた
 ゼロ・ベースでの攻防の対話を見せました。
 トップ・エースになってスタイルが極まった2人が
 改めてこのような交錯を見せたことは奇跡的というしかありません。
 文句なしに名勝負。
  (執筆日:9/?/15)


◆2016年
Aタッグ王座戦、3本勝負:ザ・リバイバル(ダッシュ・ワイルダー、スコット・ドーソン)(ch)vs.#DIY(ジョニー・ガルガーノ、トマッソ・チャンパ)(WWE 11/19/16)
 リングを固定観念に縛られず360度空間として使うのは
 タイガー・マスクを髣髴とさせますね。
 そして一つ一つの区切りをしっかりインパクトと余韻を持って行う。
 1本目は長々とせずある程度の時間でまとめましたが、
 見せ方が良く決して軽くは感じさせません。
 タッチ・ワークのパズル、第3者が絶妙に加わる連携技は天晴。
 前回もいいましたが、この試合には80年代〜10年代までの
 40年間の全てのエッセンスの総まとめがされている。
 感情の一体感も最高潮で前回の試合を超えてきました。
 5スター・マッチ、歴史的な名勝負といって良いでしょう。
 (執筆日:11/?/16)


◆2017年
BIWGP王座戦:オカダ・カズチカ(ch)vs.ケニー・オメガ(新日本プロレス 6/11/17)
 序盤は定型の流れを潰しあう展開。
 オカダがトペコンを決めるも脚を少し痛そうにしてから
 オメガが脚攻めを開始。
 非常にスムーズな意思疎通、試合運びのストーリー語りですね。
 脚攻めの印象付け、
 ロープ・ワークの適度な使い方も良いですね。
 前回の試合は最初の20分の存在価値が薄かったものの
 この試合はそんなところが全然ない。
 オメガが首攻めでお返しし一進一退。
 トップ・ロープ・ムーンサルトなど
 特別な大技を丁寧に配置し時間を積み重ねます。
 テーブルが飛び出てきて30分経過。
 マジック・タイムといった浮ついた感覚ではなく
 淡々と2人の間の糸の手繰り寄せあいで成立しているのが異常。
 オメガが感情を調整しながら、
 巧みに投打締を交錯させていきます。
 ここで攻防の独創性に見せ方をシフト。
 何をするつもりなのかで魅了していきます。
 30分経過して観ている方も疲れが出てくる中で
 優しい細やかな攻防で楽しませてくれます。
 オメガは自在にボディ・コントロール。
 韻を踏んだかと思いきや、打撃で荒々しい雰囲気を作ったり、
 リズム付けを優先させたり、技に意図を持たせたり。
 恐ろしいレベルで創り手の御技を見せます。
 オカダも疲労感の表現の繊細さは目を見張ります。
 テーブル葬が決まり、セコンドのコーディがタオルを投げようという見せ場。
 ここで2人だけの世界からセコンドまで広げ、観客のところまで広げて
 良くも悪くも俗っぽくシフト・チェンジ。
 ラスト10分はちょっと調整の印象もありますが
 まったく手を抜かないハードなぶつかり合いを継続。
 これまでのどの60分マッチとも違う異形にして偉業を成し遂げました。
 歴史的な名勝負。
 (執筆日:7/?/17)


◆2018年
CIWGP王座戦、時間無制限3本勝負:オカダ・カズチカ(ch)vs.ケニー・オメガ(新日本プロレス 6/9/18)
 まずはグラウンド。
 当然にロング・マッチが予想される中で
 予想通りの出だしですが、
 挑発的な仕草を交えると開始5分で動いてきます。
 場外落下のダメージも少し重くして
 疲労感を序盤から絡めてきたのは面白い。
 オメガが柵攻撃から主導権を掴み腰狙い。
 それぞれダイブをポイントに反撃。
 徐々に盛り上げていきますが、
 絶妙に抑制が効かせたバランス感が素晴らしい。
 切り返し合いも一定以上入っていて見応えもあります。
 エプロンでのツームストンを皮切りに
 ニア・フォールの攻防もあり、
 1本目単独で見てもこれまでの
 試合の上位に位置するぐらいの上質な内容となっています。
 オカダが丸め込みで先取。

 2本目。
 コーナー上ドロップ・キックからスタート。
 緩やかな攻防でどう違いを出してくるかが肝でしたが、
 かつてのROHのようにNJPWでも定番となりつつある
 テーブル・スポットを織り交ぜてきたのは良いですね。
 リングアウト・ネタなどよりドラマチックなシーン作りで切り替えてきました。
 
 3本目。
 ここでもオメガがスタイルズ・クラッシュを狙ったり、
 飯伏がフェニックス・スプラッシュを指示したりと
 印象的なシーンが幾つも見られました。
 ただ2本目、3本目両方に言えることですが、
 2人の磐石なニア・フォール合戦に頼りすぎて
 もう少し変調、展開が欲しいですね。
 そこが弱いので60分超えありきの内容にも見える。
 勿論60分時間切れの前の試合があり、
 時間無制限になっている経緯を踏まえればお約束ではあるのですけどね。
 60分を超えているので気になる点がまったくない訳ではないですが、
 昨年の60分試合と同じく、他と比類できない異形の試合であることは確かです。
 メルツアーも壊れて*******つけてましたね。
 歴史的な名勝負。
 (執筆日:6/?/18)


◆2019年
Dコーディvs.ダスティン・ローデス(AEW Double or Nothing 5/25/19)
 プロモでコーディが語ったところによれば
 このお題目は兄vs.弟でもナチュラルvs.ナイトメアでもなく
 ジェネレーション対決なのだといいます。
 これはこの試合を読み解く上で非常に意味ある言葉です。

 ダスティンはNWAプロレスを見て育ち、
 スティングに次ぐ若手有望株と目されるナチュラルであったものの
 アティテュードへの時代の変化の中でナイトメアになり、
 トップからは離れてしまったが変えの利かないポジションを得ました。

 一方コーディはアティテュードを見て育ち、
 血統を活かしてナチュラルとして売り出されるも
 TVの規制/政争/メジャーのインディー化に翻弄され、
 スターダストから始まりナイトメアになることで殻を破ろうと試行錯誤している。

 新たな団体で二人ともナチュラルにもなれるし、ナイトメアにもなれる。
 しかしその背反する両方が確かに自分自身で、
 それぞれに矜持とコンプレックスを抱えている。

 コーディは入場時に入り口に置いたHHHオマージュの玉座をスレッジハンマーで破壊。
 HHHを批判しつつ、その振る舞いは非常にアティテュード的です。
 そして試合でも17歳年上の50歳という
 ダスティンの年齢、身体能力の衰えを馬鹿にして挑発。
 セカンドの奥さんも使ってこてこてのアメプロヒールを演じます。
 ダスティンが本当に動きに制限がある中で
 間合いの微調整は非常に気を使っているし、
 部位攻めで抑揚をつける理由を作っている。

 対するダスティンはハーフのゴールダストペイントで登場。
 ナチュラル面/ナイトメア面両方含有してこの試合に臨みます。
 経験を活かした定番ムーブの配置も評価すべきですが、
 体に鞭打ってトペ・アトミコを放ち、決意をこめて流血する、
 その年齢に似合わぬ勝負手がこの試合を特別にしている。

 プロレス界でも5本の指に入るほどのダスティンの大流血の中、
 色々な因果で翻弄されて世に出ることのなかった彼らの真価が発揮されていく。
 
 ダスティンの血を自らの体に塗りたくりながら攻めるコーディの振る舞いは見事。
 カバー数も上手く絞って試合を進めている。
 WWE離脱後新日本プロレス参戦などで
 自分の進むべきヒールの資質は見出していましたが、
 10年代の技の攻防というベクトルでは頭打ちの感もあった。
 こういう煽り中心でいける80年代スタイルでこそ
 コーディは真価を見せれるのかもしれない。
 プロモーションも含めて
 この日ほどコーディの中のダスティ・ローデスの血を強く感じたことは無かった。

 対するダスティンはフェイスとしての見事なセル、
 勿論年齢と流血量を考えれば
 スキル以上にリアルによってその表現は構成されているかもしれませんが、
 その割合がどうのこうのというのは野暮です、によって
 運命論的試合運びが実現されています。 

 ダスティンがコーディの尻をシバき
 ヨシタニック等負荷のかかる技を先に放つことで、
 兄vs.弟ではないと冒頭でいいつつも
 ジェネレーション対決の文脈の中に
 当然含まれている兄vs.弟の要素へ回帰していく。 

 コーディのクロス・ローズ炸裂は
 流血量・構成双方から見てもフィニッシュとしてまとまる位置付けでしたが、
 そのポイントを超えてニア・フォール合戦へ。
 倒れこんでのエルボーを打ち合うなど、
 その中で相同性を一層強化すると共に
 フェイス/ヒールといったプロレスの仮想を拭い去ってフィニッシュ。

 ようやくリアルに戻れた試合後(エピローグ)のコーディの言葉、
 ここで引退はさせない、来月ヤング・バックス相手に俺たちは組む、
 俺に必要なのはパートナーでも友人でもない、兄貴なんだ、というのは
 少々直接的過ぎる試合の結びではありましたが、
 この試合のドラマはまさにそこにあります。

 プロレス史に残るブラッドバスという要素がこの試合を特別にしたことは間違いないが、
 ブラッドバスだけではいけなかった領域に押し上げたのは
 この2人のバックグラウンドとこれまでの歩みの一歩一歩によるものです。
 プロレス界へのインパクトまで考慮すると今年のMOTYかもしれませんね。
 文句なしに名勝負。
 (執筆日:5/?/19)

注目試合の詳細

なし

試合結果

@G1決勝:棚橋弘至(優勝!)vs.中邑真輔(新日本プロレス 8/15/15)
Aタッグ王座戦、3本勝負:ザ・リバイバル(ダッシュ・ワイルダー、スコット・ドーソン)(ch)vs.#DIY(ジョニー・ガルガーノ、トマッソ・チャンパ)(新チャンピオン!)(2-1)(WWE 11/19/16)
BIWGP王座戦:オカダ・カズチカ(ch)vs.ケニー・オメガ(60分時間切れ)(新日本プロレス 6/11/17)
CIWGP王座戦、時間無制限3本勝負:オカダ・カズチカ(ch)vs.ケニー・オメガ(新チャンピオン!)(2-1)(新日本プロレス 6/9/18)
Dコーディvs.ダスティン・ローデス(AEW Double or Nothing 5/25/19)