TOPアメリカン・プロレスEvolve →Evolve:Evolve 9 Gargano vs. Taylor 7/26/11

Evolve:Evolve 9 Gargano vs. Taylor 7/26/11の分析


名勝負 なし
好勝負 フィット・フィンレーvs.サミ・キャリハン

@ボビー・ビバリーvs.エリック・ライアン
 スティーンが乱入。

Aスーパー・スマッシュ・ブラザーズvs.ファサイド、ジェイソン・ゴーリー
Bシュガー・ダンカートンvs.サイラス・ヤング
Cピンキー・サンチェスvs.リンセ・ドラド
Dシーンvs.アップ・イン・スモーク
 試合後チーチが裏切り。
Eジョン・デイビスvs.ボビー・フィッシュ
 スティーンが乱入してきて3ウェイに。

Eジョン・デイビスvs.ボビー・フィッシュvs.ケビン・スティーン

Fトニー・ニースvs.ジョン・シルバー
 ニースはクリス・マスターズのような容貌。
 オールラウンダーで受動的返答でパワフルなアピールをしたりと
 様々な形で魅力を出せるのが面白い。
 そこまででかくはないのでラ・ケプラーダのような技も合わないなんて事はない。
 450は流石にやらない方が良いと思いますけど。
 ニースの様々な技を堪能出来るのがこの試合の魅力です。
 一方のシルバーはメキシコのNWAで活動していたので
 ニースが様々な技を披露できる相手としては打ってつけ。
 シルバー自身もある程度コンビネーションが利いて、
 ハイ・テンションなキャラなので観客ものりやすいですね。
 只上記のやり口は誤魔化しも入っていて
 伸び白、改善される余地は余りありません。
 終盤のEvolveを気取ったKO系ダウン、
 気合を理由に個性から逸脱したムーブなどは勘違いも良いとこですし。
 まあまあ良い試合。

Gフィット・フィンレーvs.サミ・キャリハン
 フィンレーは巧みに技術を使ってくるだろう、という予測は観客も持っている。
 一方でもう歳だからそれゆえの弱さも出てくるだろう、
 そこをキャリハンがハード・ヒッティングで突き試合にするのだろうと思っていた。
 しかし蓋を開けてみれば開始するなり突進したキャリハンに
 フィンレーが強烈なエルボーを叩き込みダウンさせます。
 キャリハンと引けを取らないハードさの打撃、
 そして裏技をも駆使する事で想像の上をいったテクニカルなレスリング、
 あらゆる面で上回って見せました。

 一方でそれを試合外の立ち位置のためだけではなく
 試合における構図として考えて作り出された裏打ちされた強さである事を記しておきたい。
 ですからこの試合はSMASHみたいに薄っぺらのスカッシュ・マッチではありません。
 キャリハンが挑発合戦で気持ちで負けない所を見せながら
 チョップを一つ一つ間を持って打ち込んでいく。
 そのチョップを何発撃ち込むか、繊細な表現で徐々に試合が進んでいきます。
 それでも最後までフィンレーは試合の支配権に執着する。
 そういう戦いの中で打撃は簡易に放てるがそれでさえ相手の不意、死角をつく必要がある、
 技というものは尚更でその状態に持っていくために相手の抵抗を極限まで抑え込まなければ決められないもの、という
 シビアでストイックな世界観が括弧として出来上がっていきます。

 こういう試合は時にオールド・スクールと評されます。
 ただそれは不正確だという事はここで指摘しておきたい。
 技が多彩になった事で技が使い捨てられる事はしばしば見られる光景ですが
 技を本質的に見つめなおしたのは現代になってからです。
 様々な可能性があるからこそこの技で何が出来るのか。
 技の個性を認めた。
 一方で昔はそれぞれの技が一人一人の持ち技として大切に使われていた。
 それは素晴らしいことだけれどもレスラーの個性のために技の個性は認められていなかった。
 少し話がずれているな。
 人ではない技に思いを馳せ、その延長でその思考が時に枠自体への疑問を抱かせたりする。
 そう、枠の話をしたかったのです。
 昔は枠の中にいる事を当たり前だと思っていた。
 しかしこの試合のような幾つかの試合は枠に疑問を投げかける。
 そして自分の力で世界を再構築してみせる。
 それは紛れもない深化です。
 むしろニュー・スクールと評すべきではないか。
 
 さて試合に話を戻しましょう。
 フィンレーの世界の理に沿ってキャリハンは奮闘する。
 フィンレーのお家芸、エプロンの幕を使った方法を逆に行ったりして
 条件を満たした上で上位の打撃、ビッグ・ブーツを叩き込む。
 フィンレーはそれでも支配権を譲らないが、痛みから顔を抑えたり、動きに疲弊感を滲ませて、
 主導権を握っている事が勝利に近いという事ではない事を示している。
 また主導権を握っていると書きましたが、
 何もせずにキャリハンと向き合っているシーンも多い。
 間には2つ意味があって一つは次に行う技のスケール・アップですが
 もう1つはその瞬間を静止図として強烈に脳裏に刻みつける事です。
 そしてこの後者としての間が素晴らしいからこそ
 この試合の描く繊細な世界に観客もついていける。
 独特の世界でありながらお客さんがついてこれるか放任した世界でもないのです。
 フィンレーの強さを鮮烈に印象付けた試合といっても
 SMASHのスターバック戦を0点とするならこちらは100点です。
 文句なしに好勝負。

Hチャック・テイラーvs.ジョニー・ガルガーノ
 まずはリングを縦横に駆け回ります。
 型に縛られず自由に動き回るというのをコンセプトにするのはありです。
 前の試合によってやりにくくなっているのは明らかですが、
 それならいっそ割り切って前の試合が提供できない部分に目を向けるのも良い。
 しかしセコンドがタオルを投げるなんて意味不明な場面もあり、
 只の余興に過ぎなかったようですね。
 ガルガーノのコンビネーション、テイラーのリアクションと個々の魅力を出し、
 エプロン技、観客席から柵の内へのダイブといったスポットもある。
 しかし先程の試合の後では技が軽い。
 セミとは別の日に視聴しましたので受け取る側だけの問題ではありますまい。
 最後のカウンター合戦も良いが、カウンターに偏りすぎると個々の軸が軽くなる。
 セミと入れ替えるべきであった内容。
 平均的な良試合です。

 (執筆日:12/11/11)
DVD Rating:★★☆☆☆

注目試合の詳細

なし

試合結果

@ボビー・ビバリーvs.エリック・ライアン(ノー・コンテスト)
Aスーパー・スマッシュ・ブラザーズvs.ファサイド、ジェイソン・ゴーリー
Bシュガー・ダンカートンvs.サイラス・ヤング
Cピンキー・サンチェスvs.リンセ・ドラド
Dシーンvs.アップ・イン・スモーク
Eジョン・デイビスvs.ボビー・フィッシュ
Eジョン・デイビスvs.ボビー・フィッシュvs.ケビン・スティーン
Fトニー・ニースvs.ジョン・シルバー
Gフィット・フィンレーvs.サミ・キャリハン
Hチャック・テイラーvs.ジョニー・ガルガーノ