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IWRG:Best of IWRG 2011の分析


名勝負 なし
好勝負 3本勝負:ブラック・テリー、ネグロ・ナヴァーロvs.アンヘル・モルタル、エル・アパッチェ(1/9/11)

3本勝負:ブラック・テリー、ネグロ・ナヴァーロvs.アンヘル・モルタル、エル・アパッチェ(1/16/11)

正邪混合マスカラ・コントラ・マスカラ:トラウマI、オフィシャルAK47 vs.トラウマII、オフィシャル911(12/22/11)

@3本勝負:ブラック・テリー、ネグロ・ナヴァーロvs.アンヘル・モルタル、エル・アパッチェ(1/9/11)
 テリーxアパッチェ、ナヴァーロxモルタルが基本の組み合わせです。
 アパッチェはこの団体のトップ・テクニシャン、テリーに劣らないマット・テクニックを見せていますね。
 エネルギッシュな分、テリーを食ってしまっているともいえます。
 テリーはホールドの移行の妙を見せる場面がもう少し欲しかったですね。
 一方のナヴァーロxモルタル。
 モルタルは特に褒めるべき能力は持っていません。
 しかしそれが返ってナヴァーロのテクニックが際立たせています。
 そして何より相手がAAAからの外敵とあってナヴァーロのサブミッションが美しい以上に破壊的です。
 ただ3本目でモルタル、アパッチェがラフ・ファイトに出て決着への流れを作ったのは良いものの
 翌週に再戦を控えている事もあって場外乱闘まではいかず、只のセントーンで終わってしまったのは少し残念でした。
 しかしその部分は来週の試合で見られます。
 この試合は只純然たる技術によるベビーフェイス/ヒール論を堪能すればよい。
 ぎりぎり好勝負。
 
A3本勝負:ブラック・テリー、ネグロ・ナヴァーロvs.アンヘル・モルタル、エル・アパッチェ(1/16/11)
 先週の再戦。
 アパッチェは前回と同じく充実している印象ですが、
 相手のテリーが輝く場面も多くなっていてバランスを修正していますね。
 ナヴァーロは先週と同じくモルタル相手に
 思いのままにサブミッションをかけて人体を破壊していきます。
 実質的に圧倒していますが適度に反撃させていて試合は停滞していません。
 2本目になると激しくぶつかっていきます。
 モルタルが不格好ながらベリー・トゥー・ベリーを決めるなど
 リマッチらしい気持が前面に出てきました。
 モルタル、アパッチェのタッグとしての連携色が出てきたのも良いですね。
 3本目は2本目終了からそのまま続けて場外乱戦。
 ベテランらしい気持の入り込みようで
 その打撃が若手と比べられるものでなくても迫力があります。
 またアパッチェの口うるさい煽りは見事だし、
 テリーが流血して会場に血をまき散らしたのでかなり熱が入っていましたね。
 それだけにモルタルがロー・ブローを防いだのに食らったふりをして
 DQをもぎ取るという最後のエンディングが悔やまれますが素晴らしい試合でした。
 ぎりぎり好勝負。

Bカベジェラ・コントラ・カベジェラ、3本勝負:ブラック・テリーvs.アンヘル・モルタル(1/23/11)
 1本目はモルタルが胸を突くなどの独特の打撃で
 テンポよくテリーを攻め込んでいきます。
 セコンド、アパッチェによるロープへのドラスクからボストン・クラブにつなげてモルタルが先取。
 インターバルを待たずにそのまま脚攻めを続け、場外では椅子を脚に叩き付けたりします。
 そして唐突ではありましたがテリーのセコンド、ナヴァーロがアパッチェを攻撃したかどで退場処分になり駄目押し。
 絶体絶命からの一発逆転で3本目にもつれこみます。
 別のセコンドがテリーにつく中、場外乱闘を展開。
 ベテランらしい真実味ある気迫で鉄柱にぶつけあったりヘッド・バッドを打ち合ったりします。
 攻めと攻めがぶつかり合う中で相手に対する受けの時間を最小限にする上手さがありますね。
 両者流血した状態でリングに戻ってからは技の攻防。
 どうしても技の攻防は一定レベルは満たしている以上の意味合いは見てとれなかったですね。
 テリーの勝利によるハッピー・エンディングしかなかった気がします。
 モルタルが勝つにしても最初のロープをつかんだ丸め込みフィニッシュで十分。
 その後セコンドの抗議から試合再開、1分ほどでモルタルの丸め込みでやっぱりテリーの敗北というのは不必要です。
 テリーの脚がロープにかかっていたようですが見えにくいですし、
 何よりモルタルの丸め込み自体がヒールとして憎むには美しすぎた。
 2011年年間最高丸めこみです。
 平均的な良試合。
 
C3本勝負:ネグロ・ナヴァーロ、トラウマI & II vs.ピラータ・モーガン、エル・イホ・デル・ピラータ・モーガン、バルバ・ロハ(4/14/11)
 トラウマの方が明らかに実力が上なのに
 ジャベを決めてもモーガンらが早々にカットしてきます。
 モーガンがリングに出てきて大将はまともに戦うんだろうな、と思っていたら
 控えが入ってきてモーガンがリングを制圧。
 観る者の不満を上手く利用した1本目ですね。
 2本目は乱戦を継続させ、トラウマズの連携から
 ナヴァーロのジャベで簡素に締めました。
 3本目で盛り上げたい所ですが、モーガンらが相変わらず駄目で形をつけただけ。
 モーガンJrとロハがぶつかって
 両者のマスクが脱げるシーンが唯一の見どころか。
 モーガンも他のレジェンドと違って体重Overでコンディションは悪かったですね。
 悪くない試合。
 
Dマスカラ・コントラ・マスカラ、3本勝負:マルティファセティコvs.オフィシャル911(IWRG 7/17/11)
 1本目はマルティファセティコがダイブ含め次々と技を決めていきます。
 ただ技の完成度はいまいちで、外れかけている場面もちらほら。
 ストレートに決めるのではなく大技の攻防を軽くしてから締め。 
 2本目も同じ感じで場所を移す事で技をボリュームたっぷりに見せる構築。
 911がきれいなトペコンを決めて逆転を決定づけると
 ぐったりする相手にタオルで風を送ったりと中々の煽りっぷりを見せました。
 3本目はまず観客席でマルティファセティコを殴りつけていく。
 確かにここは抑え所ですが若干浮いている印象はあります。
 その後の流れ、大技の激化は確かに答えから外れていませんが
 メジャーになりきれない欠点が前面に出ていましたね。
 まあまあ良い試合。

E3本勝負:ブラック・テリー、アルゴス、マルティファセティコvs.ドクトル・セレブロ、モルティズ、セメンタル(8/7/11)
 1本目は特に技という技もない乱戦。
 しかしテンションは高く、粗野な雰囲気を生み出している良質な乱戦です。
 2本目はそのままセレブロらの支配継続。
 テリーの反撃時も特にスポットというスポットはなく乱戦スタイル。
 本当に憎しみあっていると感じさせる
 リアリティーながら余りにスポットがないですね。
 控えがコーナーに待機するようになって終盤戦。
 若手が軽快な技で盛り立てる中
 最後は期待通りテリーとセレブロ。
 相手の予想を外したりスピードを上げながら一瞬の勝機を狙いあって決着。
 良い試合ながら特筆する程ではないですね。
 まあまあ良い試合。 
  
Fレイ・デル・リング王座戦、3本勝負:パンテラvs.トラウマI(11/20/11)
 パンテルが仕掛けてきたのは密着レスリング。
 トラウマIがいつも行うジャベの打ち合いとは違う形ですね。
 体勢を入れ替えるスピードは余りありませんが
 その分腰を据えて上質なレスリングを堪能させます。
 テンポ・アップの攻防も体が重く熱狂は出来ませんが
 一つ一つのムーブが積み重なって勝利に近づいていくので納得感があります。
 2本目は再びジャベから始め、トラウマIの打撃解禁。
 一度パンテラのハイ・フライを挟んだ事で
 2本目にして苦しい戦いという印象を作り出すことに成功しています。
 3本目はIWRGのスターがベテランから王座を取れるのか
 その勝利への近づき、遠のきで観客の注意を上手く引きつけている。
 只想像以上にロング・マッチになってくれたのは嬉しいものの
 パンテラが歳を取った事でムーブのみによる効果を全然生めず、
 結局長引かせたかいが余り感じ取れなかったのは残念。
 好勝負に届かずも中々良い試合。

G3本勝負:エテルノvs.ブンガムビージャ・デル・ノルテ(11/24/11)
 貴族的コスのノルテが怒りに身を駆られ、
 モヒカン頭の如何にも悪そうなエテルノに向かっていく。
 そして遺恨が相当深いようで
 ノルテは入場してきたエテルノに入場口上からダイブを仕掛けたりと
 ビッグ・スポットを次々と出していきます。
 ノルテも受けをベースにしつつ所々で強力な技でお返し。
 両者流血までして盛り上がりました。
 ただあくまで過激な技が見所。
 試合運びや見せ方には特に感心する所はありませんでしたね。
 まあまあ良い試合。

H正邪混合マスカラ・コントラ・マスカラ:トラウマI、オフィシャルAK47 vs.トラウマII、オフィシャル911(12/22/11)
 抗争としてはオフィシャレスとトラウマスになります。
 それをそのままタッグとせずパートナーを入れ替えるのが
 正邪混合タッグでメキシコでは時々ある形式です。
 またタッグのコントラ戦には2種類あり
 負けたタッグが2人共賭けていたものを失うものと
 もう一つは敗者2人が改めてシングルを行い、その敗者1人が賭けていたものを失うものがあります。
 この試合は後者になります。

 最初のタッグですが正邪混合という特殊な状況を使って
 遺恨戦というストーリーを上手く表現していましたね。
 トラウマIIは律儀にルールを守り、
 相手がトラウマIになっても戦うのに
 オフィシャレスは馴れ合ってハグする。
 これに怒り心頭になるも、それを逆に利用され、
 相手のペースにどんどん嵌っていくという展開です。
 オフィシャレスは空気をばっちり掴んでいて
 定番ながら観ている方ものせられてヒートしていきます。
 ルチャ・ルールの妙も突いた椅子攻撃からトラウマIが脱落。
 その後はルール無視でオフィシャレスが一体となってトラウマIIを追い込む展開です。
 トラウマIIは戦いながらの体の見せ方はいまいちなのでここを簡単にまとめたのは良いですね。
 レフェリーの死角を突いての椅子攻撃をやり返しAK47が脱落。
 これでマスカラ戦はトラウマI vs.AK47に決定です。

 シングルになってもAK47はドラマ押しで煽り立てます。
 一本調子といえばそうですが会場をコントロールするレベルでしたのでOK。
 煽り以外のテクニックや技の攻防で魅せれるルチャドールでもありませんしね。
 下手に欠点を出してしまう事を避け長所でとことん勝負するのは正解でした。
 トラウマIが1本取られ、流血に追い込まれるも
 諦めず必殺の変形ドラゴン・スクリュー・サブミッションを決め追いついたシーンは
 試合が決着したのかと錯覚を受けるようなドラマチックな場面で会場も大いに盛り上がりました。
 3本目はそれまでよりも疲労感を出し、
 ふらふらになりながらも負けられぬ戦いに身を投じます。
 お世辞にも綺麗な攻防ではなかったけれども
 相手と動きが合わなかった時に出来る一瞬の間、そこから生まれた選択は試合に深みを与えています。
 最後はAK47がレフェリーの目を盗んでの禁じ手ツームストンでカウント3。
 抗議が実ってDQでトラウマIの勝利に変更となります。
 チープ・フィニッシュ?
 確かにルチャには往々にしてこういうフィニッシュが多く、
 その度に私も残念な思いをしてきました。
 しかしこの試合は裁定が変わった時に素直に歓声を挙げられる試合でした。
 それぐらい観客と一体になりながらベビーフェイス/ヒールのドラマを描く、という
 古典を真正面からやり遂げた試合だったのです。
 ツームストンで決まった瞬間観客がごみを投げ入れたり、
 裁定が覆った瞬間関係者、ファンが一気にリングサイドに集まったりと
 観客の純朴な雰囲気、リアクションもたまらないですね。
 ぎりぎり好勝負。

(執筆日:1/2/12)

注目試合の詳細

なし

試合結果

@3本勝負:ブラック・テリー、ネグロ・ナヴァーロvs.アンヘル・モルタル、エル・アパッチェ(2-1)(1/9/11)
A3本勝負:ブラック・テリー、ネグロ・ナヴァーロvs.アンヘル・モルタル、エル・アパッチェ(2-1)(DQ)(1/16/11)
Bカベジェラ・コントラ・カベジェラ、3本勝負:ブラック・テリーvs.アンヘル・モルタル(2-1)(1/23/11)
C3本勝負:ネグロ・ナヴァーロ、トラウマI & II vs.ピラータ・モーガン、エル・イホ・デル・ピラータ・モーガン、バルバ・ロハ(4/14/11)
Dマスカラ・コントラ・マスカラ、3本勝負:マルティファセティコvs.オフィシャル911(2-1)(IWRG 7/17/11)
E3本勝負:ブラック・テリー、アルゴス、マルティファセティコvs.ドクトル・セレブロ、モルティズ、セメンタル(2-1)(DQ)(8/7/11)
Fレイ・デル・リング王座戦、3本勝負:パンテラvs.トラウマI(2-1)(11/20/11)
G3本勝負:エテルノvs.ブンガムビージャ・デル・ノルテ(2-0)(11/24/11)
H正邪混合マスカラ・コントラ・マスカラ:トラウマI、オフィシャルAK47 vs.トラウマII、オフィシャル911(12/22/11)