Zero-One:Best of Zero-One 2011の分析
名勝負 | 火祭り準決勝:田中将斗vs.関本大介(8/7/11) |
好勝負 | Zero-One王座戦:関本大介(ch)vs.日高郁人(Zero-One 1/1/11) Jrヘビー級王座戦:日高郁人(ch)vs.伊藤崇文(3/6/11) 永田裕二vs.田中将斗(3/6/11) 風林火山TL決勝:田中将斗、フジタJr.ハヤトvs.大谷晋二郎、横山佳和(12/18/11) |
@Zero-One王座戦:関本大介(ch)vs.日高郁人(Zero-One 1/1/11)
前半は只レスリングをしているだけ。
日高が真っ向から立ち向かえているものの
関本がパワーで勝っている事、
日高がレスリング技術で勝っている事を
もっと面白く表面に出せるはずです。
意図的な強みの演出は概して日本のプロレスが弱い所です。
関本のエプロンの日高へのラリアットと
日高のロープを跨いだ関本の脚へのドロップ・キックを並べるくらいなら
これをばらして展開に組み込むべきです。
そんな訳で前半17分は良質だけれども
ロング・マッチにする事が最大の価値となっており
圧縮もしくはカットすべき内容。
しかし後半11分は本当に面白い。
日高の攻めがよりダイナミックになると
関本もアルゼンチン・バック・ブリーカーなど
より追い込んでいる事が伝わってくる技を出し、
攻防に集中させる要素が強くなっていきます。
一方の魅力的な技が面白い形でもう一方の魅力的な技につながる。
単純明快に最高の化学反応を起こし、フィニッシュも特別。
ぎりぎり好勝負です。
AJrヘビー級王座戦:日高郁人(ch)vs.伊藤崇文(3/6/11)
9年前にDEEPで敗れた日高が10年後にもう一度戦おうと誓った
伊藤と今度はプロレス・ルールで戦う、というカード。
伊藤はプロレスラーとして優れた素質があります。
手足を広げた構えは映えるし、動きはシャープ。
部分部分でやられなければならない必要性を理解し、
自分の築いてきた強さと齟齬を起こしていません。
受け身や構築は当然不完全ではあるけれどそこは日高が完全にフォロー。
プロレスならではの場外戦や脚攻めでペースを掴みにいく、という
伊藤でも分かりやすい展開付を行っています。
王者として見事な試合運びでした。
最後は蹴りの打ち合いでドラマを昇華しフィニッシュ。
ぎりぎり好勝負。
B永田裕二vs.田中将斗(3/6/11)
永田はレスリング、田中の勢いのある打撃。
それぞれの長所を明示した直後に、
永田が田中にテーブルへのニー・クラッシャーを決めるというサプライズ。
意表を突かれ効果的なスポットでしたね。
しかし田中の長所/短所はヘビー級になりきれない部分です。
そこをしっかりと理解して永田は蹴りを中心に田中を攻めたてました。
田中もホームグラウンドでしっかり流れを作ったうえで反撃。
テーブル葬でお返しです。
その後も試合の消耗は消耗、
動きの勢いは勢いと別に分けて考える事で田中が最大限に光り輝いています。
永田も間による見せ方を使いながら、適度に応じる事で
お互いの必殺技を魅力たっぷりに見せた上でフィニッシュ。
素晴らしい激戦でした。
ぎりぎり好勝負。
C火祭り準決勝:田中将斗vs.関本大介(8/7/11)
(軽くカットで24分ほど)
序盤はショルダー・タックルなど定番の攻防ですが
気持ちが行動に完全にのっていてとても形式的とは思えません。
関本はいつも形を整えた試合構築をして
日本のプロレスラー史上屈指のマッチョ・レスラーだというのに
純然たる強烈な事実の一端しか見せてくれませんが、
この試合ではリアルに限界を追及している。
田中も最高の相手を得て攻めも受けもダイナミックでしたね。
ロープに走ったら待つ、なんて様式に囚われず
ヘビー級がJr級のような自由度で動き回ります。
これは反則級のインパクトですね。
走るシーンが目立ち、スコットvs.ゴールドバーグの奇跡を
日本のプロレスらしいディティール、リアルな裏打ち、
アスリートISMで再現したとでもいうべき内容です。
20分を過ぎても彼らの方向性はまったくぶれず、
終盤はヘビー級の概念を破って飛びまくる始末です。
凄すぎて笑えた試合なんて初めてです。
ぎりぎり名勝負。
D火祭り決勝:関本大介vs.崔領二(8/7/11)
崔は変化、間をつけようと意識しているが、その見せ方が下手ですね。
戦いと一致しない構築上の意図が前に出てしまっていて、
それはそれだけで素晴らしいといえるレベルとは遠い。
時にゆったりと打撃を見せ、時に追い込んで一進一退を作っているのは良いが
ずっと同じパターンの試合運びなので長期的な構築は出来ず。
リングを使ったスポットによってその欠点が補われている。
終盤は大技一つ一つ只見せる。
準決勝のダメージがあるという事を考えても、もっと広げられるはず。
欠点を何とか補っているが、特に魅力もなく、長所を伸ばしきれてもいない。
関本がようやく優勝したという事実だけの試合。
まあまあ良い試合。
E天下一Jr決勝:澤宗紀vs.フジタJrハヤト(9/17/11)
下地として良い感じに抑えてスタート。
張り手、ヘッド・バッドと加えながら気持ちを高めていきます。
ハヤトがダウン・カウントの見せ場としたり、
攻防を瞬間瞬間で火花を燃やしつつも
それで終わる事のないような戦いになっていたりと
ハード・ヒッティングではないバチバチの領域に
一歩足を踏み入れる事が出来た内容となっています。
やや散漫な部分や観客の盛り上げが前提となっている部分もありましたが
中々良い試合でした。
F澤宗紀引退試合:澤宗紀vs.日高郁人(11/9/11)
澤はプランチャ後、場外をダッシュして観客席に自爆する等
序盤から引退試合の舞台で遊んでいます。
悪く言えば内輪的な魅せ方ですね。
こういうのって日高のスマートな試合運びと合わないので
2人の交友関係はともかく相手として最適かどうかには少々疑問を抱きました。
中盤は日高が脚攻め。
澤が個性的な、焦点のぼやけた技で反撃。
プロレス的な見せ方をした打撃の打ち合いで散漫になるのを防いでいる形ですね。
脚のダメージから分かりやすく観客の応援を澤に集め、
ショーン・キャプチャー炸裂で会場を一体としました。
その後はサブミッションから打撃にシフトして
ヒート・アップし、マウス・ピースを外しての打ち合い、
澤が介錯を求める形でフィニッシュ。
歴史に残るような試合では決してありませんが、
良くも悪くも澤らしさが全開で出てきていたので良いのではないでしょうか。
好勝負に届かずも中々良い試合。
G風林火山TL公式戦:橋本大地、曙vs.田中将斗、フジタJr.ハヤト(12/18/11)
フジタは喧嘩スタイルであるが故に
体格のなさが時に致命的な欠点となっていた。
しかし大地はほとんど同じ階級で
注意を殺がずに蹴りを打ち合える。
大地は匠とかと違ってまだまだ橋本の息子という肩書き以外は
蹴りしかないのでフジタとライバル関係を築いて成長していって欲しいですね。
田中は機動力と間を織り交ぜる事で
橋本に上からの立場で試練を与えていましたね。
フジタ、田中による大地との関係性ある戦い以上にこの試合で魅力的だったのは曙。
プロレスに慣れて逡巡がなくなり、
機動力も活かすようになったので、
化け物として素晴らしい存在感を示している。
最後の曙を連携、連続技で沈めるシーンはドラマチックでした。
スタミナ不足、幅の狭さからシングルはまだ無理でしょうが、
タッグとしては日本のプロレス・シーンでも屈指の化け物レスラーになってきている。
この曙と大地を組み合わせるとは見事なブッキングですね。
10分ないが魅力がたっぷり詰まった内容。
中々良い試合。
H風林火山TL決勝:田中将斗、フジタJr.ハヤトvs.大谷晋二郎、横山佳和(12/18/11)
フジタと横山の若手らしい打撃の張り合いを交えながら
リズムが崩さずに試合を進行させます。
続いて横山の脚に狙いをつけて孤立。
脚への攻めが試合内容、個性、両方から来るものでよかったですね。
日本には珍しい良く出来た孤立です。
しかも相手が同じ若手の横山という事でフジタは
只の打ち合い以上の事をやる余地があり、その可能性を広げている。
定番のタッチできるかできないか、を踏まえた上で、
脇固めなどで仕留めてやろうかと殺意むき出しにする。
また控えの大谷を挑発する事で更なるスポットを生み出したりと試合を発展させています。
大谷は衰えている事は否めませんが
団体の首領としての試合運びを確立していて
単なる勝敗の奪い合い以上に
若手を鍛えるために試練を与えたり、
お前なら出来る、と信頼を見せたりして試合に深みを与えている。
横山が一人では心もとない選手なので
右肩上がりで盛り上がっていくという訳にはいかず
孤立が最大限に効率を発揮する構成ではありませんが素晴らしい試合でした。
ぎりぎり好勝負。
(執筆日:1/5/12)
注目試合の詳細
なし試合結果
@Zero-One王座戦:関本大介(ch)vs.日高郁人(Zero-One 1/1/11)AJrヘビー級王座戦:日高郁人(ch)vs.伊藤崇文(3/6/11)
B永田裕二vs.田中将斗(3/6/11)
C火祭り準決勝:田中将斗vs.関本大介(8/7/11)
D火祭り決勝:関本大介(優勝!)vs.崔領二(8/7/11)
E天下一Jr決勝:澤宗紀(優勝!)vs.フジタJrハヤト(9/17/11)
F澤宗紀引退試合:澤宗紀vs.日高郁人(11/9/11)
G風林火山TL公式戦:橋本大地、曙vs.田中将斗、フジタJr.ハヤト(12/18/11)
H風林火山TL決勝:田中将斗、フジタJr.ハヤト(優勝!)vs.大谷晋二郎、横山佳和(12/18/11)