TOP日本のプロレス全日本プロレス 2010年代の大会 →2012 Heavyweight part.1

全日本プロレス:2012 Heavyweight part.1の分析


名勝負 なし
好勝負 諏訪魔vs.関本大介(1/2/11)

CC公式戦:諏訪魔vs.永田裕志(5/5/12)

@諏訪魔vs.関本大介(1/2/11)
 ゆったりと双方ヘビー級の強みを確立させます。
 試合運びが基本に準じる関本は代わり映えがしませんが、
 期待値を満たした重みがあるので一つ一つやる事で積み重なるものは必ずあります。
 それにエース対決として対等に渡り合うかと思いきや、
 試合は途中からメジャー/インディーの力関係をより前面に押し出してくる。
 諏訪魔は間でもって不惑を表現し、
 狙いとして一貫しながらも、理のサポートなんかいらないぐらい重い腹攻めで
 全日の土俵なのに関本を応援したくなるという逆転現象を引き起こしました。
 関本は下手から徐々に形勢を積み重ねていく過程を
 諏訪魔のカウンター込みでしっかり見せれていましたね。
 細かく蓄積させる一択のため
 化物っぷりによって想像の上を行く瞬間が余りなかったのは残念だけれども。
 そういう緊迫感のある鋭い切り返しや迫力ある張り合いは終盤で見られます。
 確かに構成上中盤と終盤を色分けする事は重要ですが
 方向性の違うものを完全に分離していては中盤の意味合いが薄れてしまう。
 中盤、終盤はもっとゼロ・ベースで再構築して欲しかったですね。
 ぎりぎり好勝負。
 (執筆日:1/13/12)

A三冠王座戦:秋山準(ch)vs.大森隆男(2/3/12)
 王座交代劇もそうでしたが
 秋山の変化付け、緩急に関する嗅覚はトップ・レベルです。
 場外DDTを食らうもエプロンからのフライング・ショルダー・タックルを自爆させ、
 腕攻めを開始し支配する展開も良い。
 深みのある鬩ぎ合いでした。
 しかしながら試合全体を通して大森が普通のレスラーでしかないのが困り物。
 見てられない欠点を露呈した訳ではないが特筆すべき魅力を見せた訳でもない。
 腕攻めに耐える姿を見せて大きな盛り上がりを見せれるかと思ったがそれも否。
 凡庸な大森に対して、秋山が必要以上の攻めを見せ、
 反撃を簡単に許し、やたら手数を出しているのに決めきれないという試合内容。
 そう、一人プロレスというべきものです。
 秋山は試合を見事にキャリーしましたが、
 大森をキャリーしていた訳ではないというのがミソです。
 中々良い試合。

B3本勝負:諏訪魔vs.真田聖也(3/4/12)
 諏訪魔が真田の戦いは伝わらないと評し、
 真田は自らのスタイルを貫くと答えての試合。
 諏訪魔はここぞで力で薙ぎ倒し、
 業界屈指の強さを作り上げる。
 相手がリアルに痛むとかそんなことは気にせず容赦なく顎を攻めます。
 そして自分の領域まで辿り付けなければ
 平気で切り捨ててくるのだから手がつけられない。
 一方でまったく受けない訳でもなく、
 ある部分ではちゃんと相手に機会を与えている。
 でも真田は諏訪魔によって受けたリアルな痛みのせいでそのチャンスを逃したりする。
 尤も真田は痛みだけを言い訳にも出来ない。
 バランスよくヘビー級のスタイルを作り上げているので
 アンダードッグを演じることはできていないし、
 リアクション主体の攻めで能動性も取りあえずのエルボー打ちで損ねている。
 前年には及ばなかったものの現状はブックにしっかり反映されていて、
 3本勝負のストレート決着には意味がある。
 好勝負に少し届かず。
 (執筆日:3/25/12)

Cケージ・マッチ:河野真幸vs.永田裕志(3/20/12)
 まずは多少変化をつけながら打撃の打ち合い。
 河野がMMA的立会いを
 永田がぐったりした表現を
 それぞれ少し加えて戦いという色合いを増して行きます。
 河野が流血して中盤戦へ。
 永田が全日ヘビーのスタイルに順応させながら
 河野をケージにぶつけ制裁していきます。
 河野が反撃し永田も流血した所で五分という展開。
 ここは対抗戦故に気を使った感じがありますね。
 しかし河野が一瞬で緊張感を作り出してきたので
 空気は弛緩せず、そのままラスト・マン・スタンディング的潰しあいで最後まで魅せました。
 良質な内容ですが
 船木の代役の河野は永田の対等な敵足り得ない、という意識が
 この試合でもまだ残っていて可能性を突き詰められなかったのは残念。
 永田がもう少し暴走する場面も見たかった。
 好勝負に届かずも中々良い試合。
 (執筆日:3/25/12)

D三冠王座戦:秋山準(ch)vs.武藤敬司(3/20/12)
 秋山がいきなりエクスプロイダーからニー・ストライク。
 ふり幅最大の緩急を使えるとはいえ興のないスタートですねぇ。
 エプロンを転がり出た武藤を追撃する形で
 武藤の有名な脚攻めと直結させたのは上手いですけどね。
 武藤の脚攻めはタイミングに依存するので
 年齢、コンディションには関係ないかと思いきや影響は大きいですね。
 攻めの組み立てとして連なりがあるので決して悪くはないのですが
 観ている人の感覚込みで行なうレベルにまでは行っていない。
 かつては我慢して、観ている人の気が揺るんだ隙に入り込んで最大の効果を上げていたものでした。
 続いて秋山が首攻め。
 秋山の脚の痛がり方や武藤のぐったりした姿によって格好はついていますね。
 終盤も武藤のポーズによりこのカードの特別性を活かしました。
 滅茶苦茶なアクションの後に理屈をつけることで
 劣化してしまったことを認めつつ、それに対応している。
 それゆえ彼らが一線を張っていた頃のどの好勝負にも及ばないものの
 All Togetherの試合を考えると上出来でPPVのメインとしても十分でした。
 中々良い試合。
 (執筆日:3/25/12)

ECC公式戦:諏訪魔vs.永田裕志(5/5/12)
 まずは静の見せ方を活かしてオーソドックスなレスリング。
 永田の挑発からラフ・ファイトに転じます。
 ちょっと攻防が雑になっていますが、その打ち込みの激しさは中々のもの。
 永田が主導権を握って首攻めです。
 的確な試合運びだし諏訪間の抵抗も織り交ぜられていますね。
 クロス・フェイスを複数回かけるのも良いエッセンスになっています。
 後半はスローな前半から一転加速させていきます。
 気合による投げ合いから再び一発一発の見せ場へ。
 左へ右へと変化をつけながらバック・ドロップという共通技で最後はしっかり集約させてのけました。
 ぎりぎり好勝負。

FCC準決勝:太陽ケアvs.永田裕志(5/7/12)
 一般的な入りでスタート。
 それぞれかわした後、
 打撃を解禁し永田が腕狙い。
 試合の上げ幅が小さいですね。
 かわしを要所に入れてアクセントにする割りに
 それに合ったベースとはとても言えず
 只トップ対決とは思えないこじんまりとした戦い。
 雪崩式もなんとなく入れ、
 最後は丸め込みで小さいまま終了。
 まあまあ良い試合程度です。
 (執筆日:5/20/12)

GCC準決勝:曙vs.諏訪魔(5/7/12)
 じっくり設定を積み上げた後、
 鋭くその重みで刺してきます。
 場所を移動することによる単調化防止も良い。
 しかし諏訪魔がこれまでの歩みで作り上げてきたものは意外に考慮されていない。
 曙は攻めが上手くなったものの体型上受けができませんから
 諏訪魔が受け手に回るのは理解できますが
 立ち位置は対等以上であってしかりべきだし、
 そこからどう攻めあいに持っていくかを考えた方がずっと生産的です。
 バック・ドロップで曙を倒したのは面白いが
 ややあっさりした印象も同時に受ける。
 平均的な良試合。
 (執筆日:5/20/12)

HCC決勝:諏訪魔vs.太陽ケア(5/7/12)
 サブミッションに退き、打撃に耐える。
 方法論の確かな試合運びです。
 中盤はケアがエプロンでリバースDDTを決めたことを契機に首攻め開始。
 諏訪魔が首の痛みを抱えながら御しがたい怪物っぷりをアピールし肩狙い。
 中盤の時点で中盤らしい試合運びにも関わらず
 死力を尽くした戦いになっているのは素晴らしいですね。
 ただその点を除けば懐深く名勝負まで可能性を持っている2人の対決なのに
 安定感を持った一定のライン以上の試合だったとしか言えない内容になっている。
 60分の凡戦という黒歴史を踏まえても
 この程度の内容で満足できるカード、舞台ではないですね。
 好勝負に届かずも中々良い試合。
 (執筆日:5/20/12)

注目試合の詳細

なし

試合結果

@諏訪魔vs.関本大介(1/2/11)
A三冠王座戦:秋山準(ch)vs.大森隆男(2/3/12)
B3本勝負:諏訪魔vs.真田聖也(2-0)(3/4/12)
Cケージ・マッチ:河野真幸vs.永田裕志(3/20/12)
D三冠王座戦:秋山準(ch)vs.武藤敬司(3/20/12)
ECC公式戦:諏訪魔vs.永田裕志(30分時間切れ)(5/5/12)
FCC準決勝:太陽ケアvs.永田裕志(5/7/12)
GCC準決勝:曙vs.諏訪魔(5/7/12)
HCC決勝:諏訪魔vs.太陽ケア(優勝!)(5/7/12)