WWE:Orton vs. Christian Seriesの分析
名勝負 | 世界ヘビー級王座戦、ケージ・マッチ:ランディ・オートン(ch)vs.クリスチャン(Super SD 8/30/11) |
好勝負 | 世界ヘビー級王座戦、ストリート・ファイト:ランディ・オートンvs.クリスチャン(House Show 7/30/11) 世界ヘビー級王座戦、ノー・ホールズ・バード:クリスチャン(ch)vs.ランディ・オートン(Summerslam 8/14/11) ランディ・オートンvs.クリスチャン(SD 9/30/11) |
@世界ヘビー級王座戦:クリスチャン(ch)vs.ランディ・オートン(SD 5/6/11)
クリスチャンは自己価値の築き方が小さく、
フライング・ショルダー・タックルももう少しインパクト良く決めたい所です。
PPVと同じ問題を抱えていますが普通2日で変わる事なんて無理ですから大目に見たい所でした。
しかしや、しかし、一方のオートンはPPVの延長上所ではありません。
腰攻めと場外を要所に配置したスマートな構築は04年を思わせながら
アイリッシュ・ウィップなど情感的な見せ方をしています。
それはゆったりした間に起因します。
この上質な間は07年を思わせながら
それは間で魅せるのではなく間を操るオートン自身の重みを感じさせる使い方です。
RKOアピール、キックアウトされてのリアクションは09年の役者芸時代に端を発しますが、
今やファイト・スタイルの流れに溶け込み、それは単なるアピールという点に留まらない表現的な力を持っています。
これはこれまでの歩みが有機的に結びついた集大成です。
クリスチャンは終盤になってスリリングな攻防を見せてくれたものの
オートンがクリスチャンの空気を読む力を必要としない完成されたスタイルを提示した事で、
私のクリスチャン陥落への同情的な気持ちは食われ、オートンに感嘆する気持ちへと変貌を遂げてしまったのでした。
終盤が2分長ければそれだけで好勝負でした。
PPVで再戦が行われる事を期待します。
好勝負に少し届かず。
(執筆日:5/7/11)
A世界ヘビー級王座戦:ランディ・オートン(ch)vs.クリスチャン(Over the Limit 5/22/11)
オートンはSDの試合と同じく素晴らしい状態を保っている。
ヘッド・ロック時の観客見渡しは
完全に掌握しているからこその動きです。
表現的でありながらアスリート的です。
クリスチャンは前回よりスムーズに絡めている点で良いものの
試合はオートンの世界で貢献度は余り高くない。
クリスチャンは上位で試合を作れば魅力的です。
相手が可能性を出し、広げても成立させる力があるから。
しかし自ら上位に立てる力はない。
そして下位になった時彼のオーソドックスなスタイルは
マイナスを犯さないという事以上の意味を持ちません。
型を活かすにしてもオートンはそこまで合意していません。
何故って今の彼には可能性が360度広がっているから。
クリスチャンが食い込んだ分終盤の攻防は密度が前回より落ちているが、
PPVという事でより長い時間が取られており、スピアーも極めて有用な形で使われていました。
結論としてはクリスチャンがより活躍した結果±0。
前回と同じ、好勝負に少し届かず、って評価です。
(執筆日:5/23/11)
B世界ヘビー級王座戦:ランディ・オートン(ch)vs.クリスチャン(House Show 6/10/11)
イタリアのフィレンツェから。
もう少し時間をかけても良いのでは、と思うほど一つ一つを短くしています。
そのために本人達はまだ序盤をやっているつもりなのに
あっさり中盤に移ったような錯覚を受けましたね。
オートンはやたらショルダー・タックルを使っていました。
ユニークな使い方もありましたが、
全体的に奇をてらった印象の方が強かった。
中盤はクリスチャンの支配。
細かい攻防が付随しつつ基本に違わない試合運びで上質でしたが、
この2人にしか出来ない物ではなかった。
しかし後半になるとオートンの美しいムーブ、
クリスチャンのカウンターが冴え魅力的な一進一退の攻防となります。
ロープ悪用フォール、レフェリーのカウントが遅れるなどの演出もあり盛り上がりましたね。
中々良い試合。
(執筆日:12/9/11)
C世界ヘビー級王座戦:ランディ・オートン(ch)vs.クリスチャン(Capitol Punishment 6/19/11)
クリスチャンはヒール・ターンに当たりヘタレ・キャラを与えられていないのに
最初に殴り倒され、やたら自爆が多い等自分の価値を落としています。
ヒールになって打撃重視のスタイルになった事で
試合構築に全般的に関与できるようになりましたが、
その試合は思っても見なかった方向に転んでいきます。
オートンが序盤に気だるさを見せて前振りをすると、
鉄階段に叩きつけられた中盤から脳震盪の影響を前面に出してきます。
ヘッド・バッドによる意識のさせ方や、変則的な技使い等
それは顔芸に留まらない、レスラーだからこその脳震盪を語る素晴らしい表現でしたが、
それが完全に試合を食ってしまってオートンは脳震盪に打ち勝てるかが焦点になり、
クリスチャンの存在意義は薄れてしまっている。
終盤の攻防もRKO、キル・スイッチの切り返し多用により流れ作業的になっており
その状況を打開するには至りませんでした。
やってる事は興味深いし、それを実現する事は凄いとも思うが、
試合自体のクオリティは前の2試合を下回ってしまいました。
平均的な良試合。
D世界ヘビー級王座戦(反則でも王座移動):ランディ・オートン(ch)vs.クリスチャン(Money in the Bank 7/17/11)
オートン凄いねぇ。
打撃の印象は余りないオートンだけれども
今回心理戦が焦点とあって素晴らしい拳を見せています。
クリスチャンも似た見せ方をしているけれど実体の持たせ方は桁違いです。
以前は間が突出していたけれども今のオートンは技、アスリート性、役者、オーラ、全てが揃っている。
オートンを見に行くという事が成り立つ状態です。
まあその一方でオートン単独で完璧であるという事が、
共同作品の試合としてはもう一歩、って事に繋がっているのも相変わらずです。
クリスチャンはストーリーにのっとってインサイド・ワークを多用していましたが、
オートンがこれほど高い状態にあっては自身が相応するアピール程度の意味合いしかなく
オートンを撹乱する意味合いは見ていて感じませんね。
意図的に打撃を織り交ぜたりして感情を揺さぶる意図はちゃんとあるんだけども、
それが中々伝わる仕事内容になっていません。
頭の中にあるアイディアは良いけどそれを実現する体がついていっていない。
だからこそオートンが唾吐きだけで切れたような錯覚を生み出してしまう。
本人の至らない部分が原因とはいえ勿体無い事ですね。
また新たな側面を見せてきた良試合でしたが
Capitol Punishmentのようにオートンがクリスチャンを食ってしまった内容。
平均的な良試合です。
(執筆日:7/19/11)
E世界ヘビー級王座戦、ストリート・ファイト:クリスチャン(ch)vs.ランディ・オートン(House Show 7/30/11)
ルイスビルからSS前の一戦。
抗争終盤になって両者の関係性のバランスが取れてきた旬の時ですね。
まずはオートンのクールな技を仕切りながら一つ一つ見せます。
クリスチャンが掻き乱そうと戦略的に動くも失敗するという攻防。
オートンもしっかりクリスチャンの意図を読み取っていますね。
クリスチャンが王座を持って逃げようとし、
それをオートンが追って乱戦化、テンポ・アップと実にスムーズな流れで中盤へ。
カウンターをばっちしの場面に配置しながら構築。
ここぞで敢えて接触せず間を開ける事で綺麗な流れを作りますね。
そしてその流れに相手が攻防をのっける事を提示し更により良いものにしている。
同時に竹刀を利用して複雑になり過ぎないようにしている。
やっている側、見ている側どちらにとっても分かりやすさは少なからず必要ですからね。
定番の必殺技のカウンター合戦が行われるも
この試合はその後も様々なカウンターが冴える攻防が潤沢にある。
キル・スイッチが炸裂するもカウント2で返されるシーンさえあります。
最後は椅子、コーディ、デビアス乱入で印象的に決着。
文句なしに好勝負です。
試合後オートンが3人にRKOを決め華々しく締めました。
(執筆日:12/9/11)
F世界ヘビー級王座戦、ノー・ホールズ・バード:クリスチャン(ch)vs.ランディ・オートン(Summerslam 8/14/11)
打撃からの早めの進行でノー・ホールズ・バードの戦いへの前準備を済ませている。
クリスチャンが逃げようとする展開、凶器追加でエンターテイメントな部分が前面に出てきますが
その実、優れた技術と相互の融合こそが本当に注目すべき部分です。
アティテュード時代のような限界ラインの一方向的な押し上げとは違う、
凶器や必殺技を織り交ぜた後どうやって元に落ち着かせるかというアフター・フォローまで必要な高度な構築がある。
また場をテンポ良く移しながらの押し引きの攻防にはクリスチャンのキャラが含まれている。
一進したら一退すべきという汎用的なものではなく
ヘタレで自信過剰なクリスチャンがどういう時にやられどういう時に反撃すべきかという考えが出来ている。
これこそこれまでの試合で成し得ていなかった点です。
ラストはオートンが制裁するような絵格好でしたが、遂にオートンvs.クリスチャンになった内容。
オートンの凶器に対するリアクションも芳醇で素晴らしかったですね。
ぎりぎり好勝負。
G世界ヘビー級王座戦、ケージ・マッチ:ランディ・オートン(ch)vs.クリスチャン(Super SD 8/30/11)
面白いものです。
1戦目でオートンは生まれ変わり、
2戦目以降クリスチャンの存在を食い続けた。
6戦目でクリスチャンは遂に対等な存在価値を提示し、
そしてこの8戦目でクリスチャンは優位な貢献者となった。
歴史に残る数え歌には変遷がある。
クリスチャンはケージ・マッチで場外は使えないとはいっても
エプロンはケージの内にあるじゃないかと考え、
フットワークによる戦術性をもたらしている。
ヘタレ・ヒールはケージ脱出にばかり目がいってこの単純な盲点には気づかなかった。
かなり斬新な試みだと思うし、そして成功している。
一方でやはりケージ脱出もケージ・マッチの上で大きな要素である。
この試合ではピンフォール・ルールも適用されているので、
@ケージ上から脱出するA扉から脱出するBピンフォールを狙いに行くC脱出前に痛めつける
が勝つ上での方法論になる。
限られた選択肢の中から最適な物を選ぶ事にかけてはクリスチャンの方が上である。
この試合において驚嘆する程素晴らしい組み合わせを見せている。
それに伴い緩急の指揮もクリスチャンが担当する事となっている。
この数え歌で初めて試合の中核を担う役割を持ったクリスチャンは
気が大きくなったか自分が主役だ、と間をゆったり取る場面がありましたね。
いや、これは些細な事で良いとか悪いとかいう話ではなくちょっと気になっただけ。
この試合をしたクリスチャン自身を誇らしく思って良い仕事ぶりでした。
オートンに関してはベースで言えばクリスチャンに合わせた
変調の試合運びになっていて本来より完成度は少し落ちていたかもしれない。
今回はこれまでと違いオートン単独で語るべき事はほとんどない。
そして最後にふれるのがカウンター合戦です。
表面的に見たときにこのカウンター合戦こそが
オートンxクリスチャンの特色と受け取られているかもしれない。
そしてそれはチェーン数の数で凄さが語られているかもしれない。
それは確かに真です。
さてここでチェーンしていく事の負の側面について見てみたい(チェーン・レスリングは除く)。
ex.オートンがRKOを狙う→クリスチャンがキルスイッチに返そうとする
→オートンが押し飛ばす→クリスチャンがコーナーからクロス・ボディを狙う
→オートンがカウンターで空中RKO。
例えば上のようなチェーン。
こういうのは一つ一つ積み重ねながら作り上げていく。
そうなると新しく追加した末尾の技は生き生きとしているが、
そこまでのチェーンは前回をなぞる形で無味乾燥になる。
そんなことが良くある。
ではこの現象は避けられないことなのか。
そんな事はない。
解決方法は2つある。
1つ目は単純で原点に立ち返る事。
カウンター合戦の理屈は「これはどうだ、これが駄目ならこう変化したらどうだ」という事です。
チェーン数が多くなっても原理は変わらない。
試行とリアクションによって成り立っている事を理解し相手の状態、心情に注意を払った上で行う事。
2つ目。
1つ目の解決方法は正確には完璧とは言いがたい。
なぜならチェーン数が多くなると"読み"が発生するからである。
相手に切り返される事を前提で技を打つというのも決して戦いから外れた事ではない。
だからこの意味合いを付与して初めてカウンター合戦は完璧となる。
それを無視してチェーンの攻防をしようとしたならそれは自身が学習能力がないという表現になってしまう。
ところがこの"読み"というのがくせものである。
精度の高い読みでチェーンを行っていると信じさせなければならない。
精度が低く見えればそんな不確定な物に打って出るより
技を決める状況を作り出す事の方がより戦略的ではないかという事になる。
では精度の高い読みとはどうやって表現されるのか。
ただただ淀みをなくし、タイミングをジャストに合わせていくしかない。
第3者、そう神の意思のままに動いているという印象まで与えられれば最高です。
これにて2つの解決法を示したが、
1つ目の方法は私を持つ事である、2つ目の方法は私を没して宇宙と一体化することである。
これらは一見背反するように両立する事は極めて難しい。
しかしオートンとクリスチャンは第6戦目でこの両立をなしえている。
この試合のカウンター合戦はこれまでとはまったく違う境地である。
長々と書き連ねてきたが、
要するにクリスチャンがトップ王座の試合で本当の主役になれて、革新したという事、
そしてオートンとの抗争が生んできた物が一線を越えて信じられない境地にまで達したという事が言いたかったのです。
CMカットにより12分しか見られない、オートン単独の役割がたいしたことない、
それは確かにネックになるがこういわざるを得ない。
ぎりぎり名勝負です。
Hランディ・オートンvs.クリスチャン(SD 9/30/11)
オートンは卓越されたセンスと練習から身につけた綺麗なフォームの技に
余分な装飾的動きを、スムーズさをまったく損なうことなく付け加えている。
実に美しいですね。
それを常識に囚われないカウンターのタイミングでも行っています。
特に回転してテーズ・プレスを仕掛け、クリスチャンがカウンターでスパイン・バスターに返したシーンなんか素晴らしかったですね。
ストンピングもハードで抗争のかいあるものでした。
勿論こういう攻防が出来るのもクリスチャンが相手だからこそで
それは数え歌序盤のようにオートン単独によってもたらされたものではない。
技を連発することによる流れ、カウンターのインパクト、持ち技が炸裂する爽快さ、
それら各要素が非常にバランスよく織り交ぜられています。
2人がキャリアを終える前にもう1度抗争を再燃させて欲しいものです。
10分程でダブル・カウントアウトという結末を迎えて、
後はコーディ→シェーマス→ヘンリーという乱入劇。
ぎりぎり好勝負です。
Iランディ・オートンvs.クリスチャン(SD 7/5/13)
オートンがショルダー・タックル後すたすたと歩いて
これが何でもない前触れであることを示す上手さ。
単なる型のなぞりではありません。
実際にすぐに細かいカウンターを入れていく。
徐々に技も決まって行きますが、
その爽快感は抗争時のそれには見劣りしてしまいますね。
ただ多彩なカウンター、空振りRKOも健在で
いまだに2人だけの境地を保っていることを証明していて嬉しい。
平均的な良試合。
(執筆日:7/?/13)
Jランディ・オートンvs.クリスチャン(RAW 8/26/13)
何度も戦っているので
王道の攻防から更に変化をつけていますね。
RKOに続けてパワー・スラム空振りまで行っています。
しかし少々やりすぎで、そのために流れは若干歪みを見せています。
また、オートンがアピール要素にも重きを置いた結果、
クリスチャンのスター・パワーのなさが顕著に現れていて
オートンから視線を奪い返せない状況となっています。
まあまあ良い試合程度。
Kランディ・オートンvs.クリスチャン(SD 2/7/14)
クリスチャン打撃の振りとステップが一致していない感あり。
リズムに若干の乱れが見られます。
オートンはそのクリスチャンの状態を見てとってか、
はたまた今のヒール・スタイルを維持することを優先し、
ライバリティに頼らず自身の試合構築に土台を置いていました。
適度に良い攻防も散見されるが数え歌ではないですね。
まあまあ良い試合。
注目試合の詳細
なし試合結果
@世界ヘビー級王座戦:クリスチャン(ch)vs.ランディ・オートン(新チャンピオン!)(SD 5/6/11)A世界ヘビー級王座戦:ランディ・オートン(ch)vs.クリスチャン(Over the Limit 5/22/11)
B世界ヘビー級王座戦:ランディ・オートン(ch)vs.クリスチャン(House Show 6/10/11)
C世界ヘビー級王座戦:ランディ・オートン(ch)vs.クリスチャン(Capitol Punishment 6/19/11)
D世界ヘビー級王座戦(反則でも王座移動):ランディ・オートン(ch)vs.クリスチャン(新チャンピオン!)(DQ)(Money in the Bank 7/17/11)
E世界ヘビー級王座戦、ストリート・ファイト:クリスチャン(ch)vs.ランディ・オートン(House Show 7/30/11)
F世界ヘビー級王座戦、ノー・ホールズ・バード:クリスチャン(ch)vs.ランディ・オートン(新チャンピオン!)(Summerslam 8/14/11)
G世界ヘビー級王座戦、ケージ・マッチ:ランディ・オートン(ch)vs.クリスチャン(Super SD 8/30/11)
Hランディ・オートンvs.クリスチャン(ダブル・カウントアウト)(SD 9/30/11)
Iランディ・オートンvs.クリスチャン(SD 7/5/13)
Jランディ・オートンvs.クリスチャン(RAW 8/26/13)
Kランディ・オートンvs.クリスチャン(SD 2/7/14)