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WWE:Bret Hart vs. Owen Hart seriesの分析


名勝負 オーエン・ハートvs.ブレット・ハート(Wrestlemania X 3/20/94)

WWF王座戦、ケージ・マッチ:ブレット・ハート(ch)vs.オーエン・ハート(Summerslam 8/29/94)
好勝負 WWF王座戦、アイアン・マン・マッチ:ブレット・ハート(ch)vs.オーエン・ハート(House Show 7/9/94)

ノー・ホールズ・バード:ブレット・ハートvs.オーエン・ハート(Raw 3/13/95)

@オーエン・ハートvs.ブレット・ハート(Wrestlemania X 3/20/94)
 オーエン、ブ レット双方にとってマスターピースと言える一品です。
 兄弟対決を意識させスペクタクルを感じさせる展開に
 それを上回るハードで絶妙な攻防が重なり螺旋のラインを描きます。
 その螺旋は一貫した論理性と流れによって補強され
 理想と違う事無く最高到達点、歴史的な名勝負のレベルにまで届きました。
 (執筆日:9/1/09)

AWWF王座戦、ケージ・マッチ:ブレット・ハート(ch)vs.オーエン・ハート(Summerslam 8/29/94)
 (反省も兼ねて以前書いたものを残しておく)
  WMで至高の兄弟対決を見せたこの2人が
 ケージ・マッチで激突というと聞こえが良いけれど・・・
 世界中のどこを探してもこの試合程過大評価されているものは見つかりませんよ。
 内容としては、
 (ケージor扉から脱出を狙う)
 →(ケージを活かした雪崩式系の投げor防いで技を1つ決める)の繰り返し(カバーは1回も無し!)。
 何を目指しているかは何となく分かるんです。
 1つには、いつ決まるか分からないスリリングな一面を与える。
 そしてもう1つ、これがメインでしょうが
 通常形式で行う、グラウンドからどう動かしてどう戻すか、
 というクラシック・スタイルをケージ・マッチに応用しようという挑戦的な試み。

 この方法の大きな問題はですね。
 挑戦的な試みではなく縛りプレイに過ぎないという厳然たる事実です。
 グラウンド・サブミッションがダウンになり
 動かし方は扉かケージかの2通りだけ
 しかも実質的に行ってそれは単発と同等となる訳ですから
 よっぽど上手くやらないと恐ろしく単調な一戦に陥いる事です。
 そして単調になった時これは「必殺技をカウント2で返すのを繰り返す」事と同質になり
 スリリングさも消し飛びます。

 只ややこしいのは2人がこの縛りプレイを上手くやれていない訳でも無いって事です。
 体をどれだけ出すか、どれだけダウンするか、
 そのまま降ろすのか投げるかの選択、
 難しい課題という事を考えれば良くやっていたと思います。

 しかしそれを台無しにしたのが試合時間です。
 31分という長すぎる時間の前に
 それぞれの微妙なさじ加減は消え去るも同然です。
 実際大きなカットが1つ入り18分になっている
 日本語版ビデオの試合は結構楽しむ事が出来ました。
 それでもこの時間で再構築しても
 ぎりぎり好勝負いくかどうかのレベルだと思いますけどね。

 ついでながらこのコンセプトはまったく抗争にあってませんでしたね。
 WMで勝利しKOTRも制覇し日陰者から脱出を図るオーエンは鬱々とした憎しみをぶつけ、
 それに対してブレットも覚悟を決めて迎え撃つ、
 ってのがストーリー・ラインですからね。
 まあ、そもそも極端過ぎるので
 WWFでは似つかわしい状況が考え付かないですが・・・
 向こうで5スター・マッチの評価を受ける理由が分からない。
 世界10番目の不思議に認定です。

 (ここからリレビュー)
 問題は私の微妙な勘違い、間違いにありました。
 まずカバーしないのは勝利方法が脱出オンリーだからです。
 当然カバーはしない。
 当たり前ですね。

 またレビューを書くに当たり自ら複雑に難しくしていた。
 単純に94年のブレットの、表現を重ねずとも最高峰に重い異常なインテンシティーに驚くべきだったし、
 それによって実現される、相手に合わせず脱出を狙っても
 50%/50%のシーソー・ゲームの鬩ぎあい、とそこに付与された勝利への執念を見せれる事に感嘆するべきであった。
 概念的に見方は正確だったと思うが、
 それを本当に理解していたならば詳細レビューを書くに当たり、
 映像を所々で止める、という行為がこの巧みに組み合わされたガラス細工の均衡を壊す危険性に気づくべきであった。
 それはどのようにでも時間を取れる行動の中で、
 彼らが繊細な微調整と感覚で選択した実際の間、それと私が感じる間をずらす事になったし、
 その間は観客のエネルギーを取り込むように設計された間であったから、
 それを放棄した結果、単調だと感じたのは自業自得であった。
 また以前の見方をアップデートするならば
 リング中央を基点とした水平線のオールドスクールだけに留まってはおらず
 後半はケージ天辺の境界に視点を向けたV字型のニュー・スクールを生み出している事も書き記しておかねばならない。
 彼らは特異的な世界においてリアリズムを作り出し、死闘のレベルにまで高めた。
 ただここまで分かってもその ゲーム的な脱出ルールに対して
 日本人的気質のせいなんだろう、最後の一歩のりきれない所があるので、
 その点だけ減点し文句なしに名勝負と変更する。
 (執筆日:6/4/10)  

BWWF王座戦、アイアン・マン・マッチ:ブレット・ハート(ch)vs.オーエン・ハート(House Show 7/9/94)
 フレアーと初の60分アイアン・マン・マッチを行い凡戦に終わってしまったブレットが再びこの形式に挑みます。
 試合開始時はほぼ接触なしでオーエンのヒール・キャラ・アピール。
 髪を掴まれたと偽りの抗議を行ったのをきっかけに
 ブレットがしつこくアーム・ロックをかける際に本当に髪を掴んだりします。
 続いてはオーエンが髪を掴んで主導権を徐々に奪い返していきます。
 大変オーソドックスなやり口で退屈とはいわないが特に面白いといえる程ではありません。
 しかしこの10分間が土台となって
 その後の韻を踏みつつ交える細かい小技が面白いテイストを醸す結果になっています。
 18分経過してオーエンがキッチン・シンクを決めると
 それまでの韻を踏む密着レスリングから打って変わって打撃による腰攻めになります。
 しかしそこにある上手さは同じものです。
 試合を抽象的に捉えて、
 技が生み出す音のリズムに気を払い、その大小の組み合わせによってハーモニーを生み出し、
 ロープ・ワークなどの移動が生み出す流れで加速・減速を行うという事です。
 ブレットが中々反撃できない攻防をじっくりと描き40分弱で1本目を終えます。 
 2本目はオーエンが脚攻めで追い込みます。
 脚攻めをはじめてからそれで仕留めるまで6分間かかっていますが、
 それでも面白いのはやはり脚の攻め方に
 戦略とは無関係のリズムがあるからです。
 ここまで素晴らしいと文字通り脚攻めオンリーだけで魅せられる。
 ぎりぎりで凌いだブレットが脚を引きずりながらも
 いつも通りの上質な攻めのコンビネーションで盛り上げていきます。
 残り5分になれば終盤の攻防ですが
 技自体のレベルではなくそれを実行するテンポによって終盤らしい攻防に仕上げているのは流石です。
 これは手に汗握るものがありました。
 サドンデスになり最後は良い意味で予想通りのフィニッシュで幕を閉じました。
 彼らのプロレスは基本的に70年代のプロレスからリアルな要素を抜いて韻の要素を加えたような格好で
 80年代のキャラや90年代の過激さを持ち合わせていません。
 WMで見せたような自由なレスリングを封印し、60分地道にやる事でどこまで成果を生めるか、
 その点に関して少し懐疑的な態度でもって見始めたのですが
 予想の一歩上をいく内容に仕上がっていて改めて94年のブレットに感嘆させられたのでした。
 文句なしに好勝負です。
 (執筆日:4/15/11)

CWWF王座戦:ブレット・ハート(ch)vs.オーエン・ハート(Action Zone 9/29/94)
 (CMカット2回あり)
 この2人ですから上質なレスリングを行うのですが
 The Zoneの試合だからほぼ一方的なシーンで作られており
 最後もコーナー上からロープに落ちただけでカウント3という呆気ないフィニッシュになっています。
 TV放送としては上出来なんでしょうが
 何回も戦っているでしょうにわざわざこれを選出した理由が良くわかりません。
 平均的な良試合。
 (執筆日:10/8/09)

Dノー・ホールズ・バード:ブレット・ハートvs.オーエン・ハート(Raw 3/13/95)
 どちらも正確無比のプロレスをしますね。
 オーエンは嫉妬に満ちた感情を上手く押し出しており、
 一方ブレットは感情の表現に欠けるものの
 その中で異常に正確に相手にダメージを与える行為が逆に際立つ。
 95年ということで過激度は抑えられているものの
 ノー・ホールズ・バードということで場外乱戦での演出も加わっており概ね成功している。
 最後までテンポを落とさず緩急でもって魅了しきりました。
 ぎりぎり好勝負。
 
Eブレット・ハートvs.オーエン・ハート(Raw 11/18/96)
 期間が開き、両者の立ち位置も変わったということで
 改めて考えながら韻を踏んでいますね。
 オーエンのターン・バックルを使っての腰攻めはユニークだったが、
 ブレットに王者としての格もなくなりジェラシーが前に出てこないのは
 この数え歌としてはちょっと魅力に欠けるのが正直なところ。
 最後はオースチン乱入によって終了。
 平均的な良試合。

 (執筆日:3/14/13)

注目試合の詳細

なし

試合結果

@オーエン・ハートvs.ブレット・ハート(Wrestlemania X 3/20/94)
AWWF王座戦、ケージ・マッチ:ブレット・ハート(ch)vs.オーエン・ハート(Summerslam 8/29/94)
BWWF王座戦、アイアン・マン・マッチ:ブレット・ハート(ch)vs.オーエン・ハート(2-2→サドンデス)(House Show 7/9/94)
CWWF王座戦:ブレット・ハート(ch)vs.オーエン・ハート(Action Zone 9/29/94)
Dノー・ホールズ・バード:ブレット・ハートvs.オーエン・ハート(Raw 3/13/95)
Eブレット・ハートvs.オーエン・ハート(DQ)(Raw 11/18/96)