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Cirque de Soleil:Alegriaのレビュー


内容 若さのエネルギー、優雅さ、力強さを称えるバロック的頌歌。

Alegria とは、気分、すなわち心の状態。 スペイン語で「歓喜」を意味するこのショーのテーマはいろいろあります。 権力、そして年月を経て権力の委譲、昔の君主制から近代的民主主義への発展、老年、青年 - これらは、Alegria のキャラクターたちがそれぞれの人生を演じる背景です。 王に仕える道化、吟遊詩人、物乞い、年老いた貴族、子供たちが、クラウンとともに彼らの宇宙を作り上げます。クラウンだけが、時の流れとそれに伴う社会の移り変わりに抗うことができます。
(公式HPより)
(2001年シドニー公演からの収録)
演目リスト ・シンクロトラピス: 2人による2つの空中ブランコでのアクロバティックな演技。
・ファスト・トラック:ステージをクロスするX字トランポリン上での演技。
・ファイア:両端に火がついた棒を振り回す演技。
・フープス:エレナ・レブによるフラフープの演技
・ストロングマン:クラウンの乗った台車を怪力で持ち上げる演技。
・フライングマン: バンジー・コードを使った跳躍や飛躍の演技。
・ロシアンバー: ロシアン・バー(しなりのある細い板)を使用したアクロバティックな演技。
・コントーション: 弾力性とバランスに富んだ優雅でしなやかな形や動きの演技。
・エアリアル・ハイ・バー: 舞台上部の高い装置を使った跳躍や回転のアクロバティックな集団演技。
レビュー プロレスにおいて技を見せるために技を打つのは二流である。
試合の流れにおいて適切な選択と、試合の流れを作るための意図的な選択が求められる。
このアレグリアでは演目と曲調の一体感が目を引く。
曲のリズムやストーリーが求めている事に身体が反応していく。
さあ技を成功する事が出来るでしょうか、とドラムロールを流すより
ずっと表現的で生命力を感じさせる。
その身体的な動き自体も他と一線を画している。
指先までコントールされた一枚絵になる動きや、
悠然とした間や緩急は一流レスラーのそれと引けを取らない。

演目を見ていこう。
シンクロトラビスは幻想的な衣装が目を引くこのショーにおいて
バックグラウンドとしてすっと入ってくる、導入としてうってつけの演目。
ファスト・トラックは地味だがこのショーの中でも曲と人のリズムが一致していて気持ちよい。
ファイアはエレメントへの祈りであり、
フープスはもはやフラフープがついた生物の一生だ。
ストロングマンでは演者の怪力と道化の受身とでもいうべき仕草に
プロレスのリアルと仮想の入り混じりを見るだろう。
フライングマンには世界を攪拌するように動くバンジー・コードと一体となった地球的美しさがある。
ロシアンバーは演目上、上記の記載と異なりドラムロールを流して見せるやり方で感心はしない。
コントーションは演じるのが子供故に表現力が不足しフープスとも見せ方が被っているのが問題。
それはあたかもメイン前のディーバズ・マッチのような按配で、この2つは少々クライマックスへの高まりを疎外している。
最後を締めるエアリアル・ハイ・バーには人工物の幾何学的美しさがある。
そして演目の間に挟まれるピエロは円熟味を感じさせる内容で
私風景を映し出す中で観客の視点を移し、ステージの非現実との境界を溶かしていく。

芸術的な幻想忌憚で、名曲Alegriaと共に深く記憶に刻まれるショー。
お勧め度 ★★★★☆