TOPアメリカン・プロレスWWE 2011年 →WWE:Wrestlemania 27 4/3/11

WWE:Wrestlemania 27 4/3/11の分析


名勝負 なし
好勝負 なし

◆ザ・ロックが登場し前説。

@世界ヘビー級王座戦:エッジ(ch)vs.アルベルト・デル・リオ
 エッジの相手の攻めに対するダメージ表現は余り良くありません。
 場外に転がったりと移動の受けで試合を作る一方で
 ストーリーを奏でるには余りに印象度に欠けるのです。
 デル・リオの欠点を補えず、
 小さい理屈が通っていてもスケールが広がらない内容が続きます。
 アーム・バーの攻防を用意した点は良いですね。
 こうやって攻防を作って重層的に重ねるのがこのカードの目指すべき方向性です。
 ただし本来の能力からすればもっとスリリングに出来るはずです。
 今回のエッジは悪い意味でベテランとしての倦怠感がありましたね。
 RR優勝者の試合がオープニングでSDレベルとは信じられない。
 平均より少し上。
 またクリスチャンが本当に只のセコンドでしかなく何もアクションを起こさなかったのは悲しいですね。
 それならデル・リオに勝たせては駄目でしょう。

Aレイ・ミステリオvs.コーディ・ローデス
 ミステリオは相変わらず旬にのっかりながらも(今回はキャプテン・アメリカ)
 微妙なコスチュームを披露です。
 一方試合振りはどうだったかというと悪くはない。
 ジェリコ戦以降ベテランならではの工夫が光るようになり今回もしかり。
 マスクを奪ってのヘッド・バッドも面白いですね。
 問題は相手との取るべき関係性に対して見誤っている事です。
 ミステリオの実績、防具(膝具、フェイス・ガード)といったサイド要素からして最低でも対等関係が要求されます。
 今回はミステリオの仕掛けがことごとく潰される形でしたが、
 案の定それをドラマに発展させる事が出来ていません。
 さて本題のコーディの事を話しましょう。
 彼には驚かされました。
 ナルシストからオペラ座の怪人を彷彿とさせられる怪人に昇華させていますね。
 その間は単にそうする事で動きが重く見えるからだけではなく
 不気味さをも醸す意図が込められており成功している。
 そして動く時はクイッキーでセンスある技を次々と披露してくれる。
 滞空式スーパープレックスの見せ方は特に優れていましたね。
 相手の膝具への狙いが散逸だったのだけが問題です。
 ただしこれはそもそも全体設計に言える事で
 要所に配置する事で綺麗にまとまる結果にはなっているが
 ベースに組み込まれていてそこに乗っけて+αを生み出す要素にはなっていないのです。
 これは再戦のために取っておいても良かったですね。
 コーディの異才に未来が見えた内容。
 平均的な良試合。

Bウェイド・バレット、ジャスティン・ガブリエル、ヒース・スレーター、エゼキエル・ジャクソンvs.ビッグ・ショー、ケイン、サンティノ・マレラ、コフィ・キングストン
 8人で2分・・・。ご冗談でしょう。
 ケイン、ビッグ・ショーの強さもなければコズロフ欠場の意味合いも生まれていない。
 Correは連携力どころか技を1つすら決めた印象が残っていない。
 誰も能力を発揮していないし、それをレスラーのせいにするには時間も絶対的に足りない。
 組まない方がまし、といわせる内容です。
 ひどい試合。

Cランディ・オートンvs.CMパンク
 これは良い事なのでしょうか。悪い事なのでしょうか。
 オートンは最近のように相手無視の乱戦をせず、
 打撃を控えて間を取ってから技を打っています。
 普通に考えれば復調傾向に戻った、という事になりますが、
 あれだけスタイルに固執していただけに
 モチベーションが落ちてその結果抑え付けられていた本来の能力が戻ってきたとも受け取れる。
 復調にしろ現状のままでは丸くなった、良いレスラーのワン・オブ・ゼムになる危険性を孕んでいるので
 どちらにせよ要経過観察なのは変わりません。
 話をこの試合自体に戻すと技の打ち方以外にも良い面はありました。
 早い段階で膝を痛める表現に入りましたがシリアスにセルを続けています。
 その際顔芸を前に出さず役者である前にレスラーであったのも好印象です。
 まあオートンの過剰な顔芸はもっぱら攻めで出るので
 本人が意識して抑えたかは断定出来ませんが
 終盤でポイントを絞ってじっくり間を取って毒蛇オートンの表情をした所を見るとオートンを信じても良い気がします。
 オートンの長所はほぼ全て出ていますが、
 上述のようにそのレベルはと言うとまだ全開には程遠いものです。
 パンクが観客を煽り、観客がストーリーを感じる間で試合を進行させ、
 優れたカウンターで繋げて行った、その補佐的役割もまたこの試合に欠かせないものです。
 両者の能力を知るが故に化学反応が起きなかったのはもどかしかったが、 
 少なくとも両者がそれぞれ魅力を出して良い試合に仕上げたのだから納得出来る。
 平均的な良試合。

D(レフェリー:スティーブ・オースチン):マイケル・コールvs.ジェリー・ロウラー
 ネタとしては面白いのです。
 コールがバリケードの中に縮こまる様子は笑えるでしょう。
 問題は笑える事と面白い試合が出来る事は違うという事で
 それを理解せずに試合時間を与えてしまった事です。
 そして2人が想像以上に試合を運ぶ事が出来なかったという事実。
 コールは素人です。
 ノン・レスラーとはいえリングに上がる以上満たすべきレベルというものがあります。
 ジェイ・レノを思い出させます。
 ロウラーはロートルです。
 もはや観客との一体感を感じ取る能力はありません。
 オースチンはマンネリです。
 ストーリー上とはいえやる気のないレフェリングは試合の緊張感を失わせます。
 最後はいつも通りスタナーを放つだけ。
 スワガーは馬鹿です。
 コールが反撃する糸口を与える役回りにも関わらず
 オースチン含めたブックに縛られた結果、
 試合開始直後に襲いかかるも返り討ちにあって数秒で存在価値を失いました。
 悪い冗談。
 TNAと張り合ってワースト・マッチ・オブ・ザ・イヤーでも狙おうというのでしょうか。
 ひどい試合。

Eノー・ホールズ・バード:アンダーテイカ―vs.トリプルH
 09年と比べて見劣るHHHのパンチにテイカーは押されインサイドワークで対応する。
 テイカーはここにきて弱さを、人間味を見せようとしている。
 しかしテイカーはキャラを確立したのも、
 試合運びを成長させたのも、ボリューミーな終盤を実現させたのも
 全てその源泉は強さにあります。
 20年以上それをやってきて正反対の物を短期間で手に入れられる訳がありません。
 正反対の物を求めた結果、
 それまで長い間かけて築き上げてきた土台の崩壊は加速します。
 場外を利用する事で維持した序盤の後は単一風景。
 受身はハードです。
 身体を犠牲にしてでもこの大一番をこなさなければならない、という義務感、意気が伝わってきます。
 しかしHHHとテイカーの間には何も生まれていない。
 理解もなければ創造もない。
 レスラーは作り手として戦い手になり、作品を生み出すならば
 その間のプロセスがそっくり抜け落ちていると言って良い。
 ハードなスポットは試合のテンションを下げない、という
 ネガティブな目的でのみ存在し単発で羅列されている。
 そしてそのスポットに対する受けはHHH対HBKを思いこさせる過剰な物なので
 設定も何もなく、必殺技は必殺技としての価値を失い、空白だけが残る。
 カート戦のようにサブミッションを織り込む事もないので重層せず、紛い物の四天王プロレスです。
 最後に一応の救いはある。
 フレアー対HBK戦から続くエモーショナル系演出からのHHHのツームストン。
 この一発は観客にテイカーの敗北を信じさせる事に成功しました。
 そしてその1点さえこなせば歴史に残る風物詩にこの連勝記録はなっているのです。
 試合内容ではなく試合前の実績だけで許容させたオーバーブックな内容ながら
 最後に一矢だけは報いて格好をつける事に成功している。
 平均より少し上。

Fドルフ・ジグラー、レイクールvs.ジョン・モリソン、トリッシュ・ストラタス、スヌーキ
 トリッシュ対ミシェルでスタート。
 トリッシュがスポット頼みだったのが気になりましたね。
 技をしっかり打てる状況を見るとベースもまだ安定してそうなものです。
 しかし何故そんな戦い方になっているのか、その疑問はすぐに解けました。
 他の面子で試合する気がなかったのです。
 驚くべきことにモリソン、レイラ、ジグラーが試合権利を得る事はありません。
 レイラは1回蹴られただけ、ジグラーはカットとスターシップペインを受けただけです。
 それしか印象に残っていないというのではなくそれしかしていない。
 スヌーキは試合せず、最後にタッチするので
 人形同然の相手に技を披露して下さいという役回りでした。
 是非はともかくハンドスプリング・エルボー自体は綺麗でした。
 ひどい試合でしたが、これをやれと言われたのだから仕方ない。
 6人は求められた事をしっかりこなしただけです。
 そんな事を求めるブッカーが悪いのです。。

GWWE王座戦:ザ・ミズ(ch)vs.ジョン・シナ
 何とか良い試合として終えられる可能性はあったのに・・・。
 まずミズは間を更に伸ばした空白を使いこなそうとしている。
 悪意を表現した結果、小物っぽさも薄れている。
 方法論が膠着気味な問題点はありますが、
 オートンとの抗争の時よりも大きくなった事を感じさせます。
 シナはパンチ一発でダウンし、ダウン・モードに入るのはひどかったですが、
 モードに入ってからはポーズが出来ないリアルタイムの作業の中で考えながら変則的に動いている。
 いや正確に言えばそう動いているように見える可能性があった。
 実の所、シナの心は珍しく掻き乱されていました。
 それが変則的な形で表に出てきていた。
 災い転じてそれが不幸中の幸いとして拾われなかったのは
 2人の世界観の中でのアスリート性、つまりカートで言うそれとは同じではありません、
 アスリート性と言うより生の部分といった方が良いかもしれない、を作り出せなかったからです。
 それは大技、必殺技が前倒しになったからですし、
 前倒しになったからといってHHH対テイカーのように
 そこまでの出来如何に関わらず許可されるという事もないからです。
 そして最大の原因はダブル・カウントアウトから全てをぶち壊す終末が訪れるからです。
 まずダブル・カウントアウト自体について。
 もし先ほどの生の部分が作り出せていて
 シナがダウンしたままではなくリングに戻ろうとしていたならアリです。
 でも現実はそうじゃない。
 そもそも期待を外しはしないというWMメインの信頼感からして
 ダブル・カウントアウト後の再開というネタは十分に効果を発揮しませんしね。
 ザ・ロックが現れ再開になりますが、
 ザ・ロックは登場に時間をかけ過ぎ、喋りすぎで完全に試合を分断しています。
 試合後もわずか1分の内容でザ・ロックがシナにRawでの仕返しをしただけ。
 悲しいかな、映画俳優としての契約の話云々で
 WMでロック・ボトムを決めるよりもRawでAAを受けた方がインパクトがありました。
 まあそれは些細な事です。
 ザ・ロックが完全にスクリューした形です。
 誰のためのWMなのでしょう。
 ザ・ロックのためのWMだというのでしょうか。
 TNAばりのエンディングで大きく評価を落としました。
 悪くない試合。 

総評
 「RR優勝だ」っていうと、「オープニングで敗北しろ」っていう。
 「レスラーだ」っていうと、「参加させない」っていう。
 でも「素人だ」っていうと、「14分やろう」っていう。
 そうして、更に、悲しくなって、
 「レスリング・エンターテイメントなんだろ」っていうと
 「リング・コメディーだよ」っていう。
 架空でしょうか、
 いいえ、現実。
 (執筆日:4/4/11)

DVD Rating:☆☆☆☆☆

注目試合の詳細

Eノー・ホールズ・バード:アンダーテイカ―vs.トリプルH
 盾を持った戦士が登場。左右に開くとその裏にはHHHが。マントと冠を脱ぎ捨て入場。続いてテイカーが入場。ゴングが鳴る。HHHが殴りつけていく。テイカーがHHHを場外に捨てる。HHHが場外に下りてきたテイカーを殴りつけていく。テイカーはHHHを引いて鉄柱にぶつける。SD実況席の蓋を外す。HHHが突進しテイカーをバリケードに叩きつける。リングで待ち受ける。テイカーは起き上がるとリングに入り殴りかかる。ロープに走りフライング・ショルダー・タックル。腕をとるとコーナーに上る。HHHが引っ張り投げ捨てる。クローズラインで場外に落とす。フェンスに振ってぶつける。実況席の蓋を外し叩きつける。実況席でのぺディグリーを狙う。テイカーがチョーク・スラムを狙う。HHHがぺディグリーを狙う。テイカーがリバース・スープレックスに切り返す。リングに戻る。場外のHHHにダイブを決める。鉄階段に叩きつける。鉄階段の上で担ごうとする。後ろに逃れたHHHにヘッド・バッド。突進。鉄階段の上のHHHがカウンターでパワー・スラムを決め実況席葬。
 リングに戻す。リングに入り振り向かせようとする。テイカーがチョーク・スラム。カウント2。ヘッド・バッド。ラスト・ライドを狙う。HHHがコーナーに押し込む。殴りつける。10カウント・パンチへ。テイカーが耐えラスト・ライドへ。HHHは後ろに逃れるとぺディグリーを狙う。テイカーが担いでスネーク・アイズ。ロープに走る。HHHがカウンターでスパイン・バスター。カウント2。場外から椅子を持ってくる。椅子を叩きつけようとする。テイカーがビッグ・ブーツ。椅子を手にすると背中に叩きつける。椅子を振りかぶる。HHHが蹴りを入れぺディグリー。カウント2。コーナー上に載せ雪崩式技を狙う。テイカーがすり抜けラスト・ライド。カウント2。首を掻っ切るポーズ。ツームストン。カウント2。椅子の上へのツームストンを狙う。HHHが後ろに逃れ椅子へのDDT。両者ダウン。両者ロープを掴んでなんとか起き上がる。HHHが蹴りつけぺディグリー。カバー。カウント2。起き上がるとぺディグリー。カウント2。
 起き上がると椅子を持って背中に叩きつける。2発。倒れていろ、と言って計10発弱叩きつける。ロープを掴んでテイカーが起き上がる。HHHが頭部に椅子を叩きつける。テイカーがなんとか身体を動かす。HHHは倒れていろ、と言う。テイカーはそういうHHHの喉を掴む。しかし弱弱しくHHHが振り払う。HHHは起き上がったテイカーに首を掻っ切るポーズ。クローズラインをかわすとツームストン。カウント2。HHHは信じられない表情で後ずさり。スレッジ・ハンマーを持ってくる。ロープを掴もうとするテイカーを中央に引っ張る。テイカーがヘルズ・ゲートに捕える。HHHはもがいている最中にスレッジ・ハンマーを落としてしまう。体勢を起こそうとするも崩れる。スレッジ・ハンマーを披露も振り下ろす力はなく落としてしまう。弱弱しくタップする!テイカーが19−0に連勝記録を伸ばす!
[Winner:アンダーテイカ―(30:00)]

試合結果

@世界ヘビー級王座戦:エッジ(ch)vs.アルベルト・デル・リオ
Aレイ・ミステリオvs.コーディ・ローデス
Bウェイド・バレット、ジャスティン・ガブリエル、ヒース・スレーター、エゼキエル・ジャクソンvs.ビッグ・ショー、ケイン、サンティノ・マレラ、コフィ・キングストン
Cランディ・オートンvs.CMパンク
D(レフェリー:スティーブ・オースチン):マイケル・コールvs.ジェリー・ロウラー(DQ)
Eノー・ホールズ・バード:アンダーテイカ―vs.トリプルH
Fドルフ・ジグラー、レイクールvs.ジョン・モリソン、トリッシュ・ストラタス、スヌーキ
GWWE王座戦:ザ・ミズ(ch)vs.ジョン・シナ(ダブル・カウントアウト→再開)