TOPアメリカン・プロレスWWE 2011年 →WWE:Vengeance 10/23/11

WWE:Vengeance 10/23/11の分析


名勝負 なし
好勝負 なし

@タッグ王座戦:エア・ブーン(エヴァン・ボーン、コフィ・キングストン)(ch)vs.ドルフ・ジグラー、ジャック・スワガー
 エア・ブーンは序破急の位置づけが明確で良い。
 序盤の連携技のレパートリーは増えていて、
 タッチ成功時のボーンの蹴り連打は豊かになっている。
 終盤はコフィが跳躍力を絡ませて相変わらずスケールが大きい。
 鉄板の盛り上がりを生みましたが、
 少々単純化し過ぎているきらいはある。
 効率的とはいえ必殺技で展開を一気につなげているし、
 終盤もコフィの攻防のみで突っ走っていました。
 前回に比べてジグラー、スワガーのタッグ力も発揮されませんでした。
 オープニングとしてはこれで良いが、再戦としてはちょっと物足りない。
 まあまあ良い試合。

AUS王座戦:ドルフ・ジグラー(ch)vs.ザック・ライダー
 ライダーの間をおかずに突っかかっていくスタイルは良いでしょう。
 しかしそのために行動量が増えているのに
 いちいち行動に印象付けを加えているのはくどい。
 必然性のない味付けが各所で見られ、
 ゆとりのない流れは試合を乱しています。
 ジグラーは分かりやすいキャリーを見せているが、
 ライダーの現状を鑑みるとどの程度動くべきかをもう少し詳しく伝えなければいけない。
 少し悪い試合。

Bディーバス王座戦:べス・フェニックス(ch)vs.イヴ・トーレス
 イヴは蹴りとクイックを織り交ぜてスリリング且つユニークな攻防を行えるし、
 ベスもパワー・アピールを適切に置いて強大な壁になる事が出来る。
 だから試合として可能性は感じた。
 しかし要所でもないのにベスをロープに固定したのは意味不明だし、
 やれるからといって只々アクションを重ねるだけでは能がない。
 ディーバの試合で展開を安定させると観客が興味を失う可能性があるものの
 何かやっている、という事実だけで観客が賑わう事に何の意味があるのか。
 出来るなら何をするかで、自らを証明すべきです。
 悪い試合。

Cシェーマスvs.クリスチャン
 クリスチャンの良質な受け身と差し込む打撃によってシェーマスの重さが戻ってきました。
 ベースの立ち位置を取り戻したのは大きいですね。
 しかしそれはあくまでベースに過ぎません。
 クリスチャンの安定した試合運びと良好な観客への働きかけの中迎えた終盤では
 シェーマスの攻防の精度の悪さ、ディティールの無さが出て
 この大会の中でも一番大技が適切に扱われていないグダグダな攻防となってしまいました。
 平均レベル。

Dザ・ミズ、Rトゥルースvs.CMパンク、HHH
 HHHがひどいの一言。
 ベビーフェイス側とはいえフレアーとの関係が深いHHHにとって
 本来重い意味を持つはずの4の字を序盤で使う上に、
 それをかけた状態でのパンクとの手の掴み方は精度が低く、
 レフェリーが気づいていない状況に無理がある。
 パンクが短い孤立をした後のタッチ成功時には
 持ち技として認知されているものを大判振る舞い。
 本当に試合の中での技の意味づけ、的確な技使用が出来なくなりましたね。
 このHHHの陰に隠れた事もあってパンクも特に褒めるべき行動をしていません。
 ミズ、トゥルースですが序盤の段階で彼らのカラーは発揮されていました。
 しかし派手な連携技があるタッグでもありませんから
 相手がたいしたアクションをしてこなければそれに合わせて
 自らの価値も自然に下がっていってしまう。
 ナッシュ乱入による決着で試合が持ち直すきっかけもなく終了です。
 少し悪い試合。

Eコーディ・ローデスvs.ランディ・オートン
 コーディがリアルタイムで判断するのに対し、
 オートンは流れを読んでいる。
 オートンがゆったりとヘビー級としてふるまうのに対し、
 コーディはここぞで軽量級の技を使って自らを下に下に追い込んでいる。
 中盤にコーディが背中に狙いをつけて攻めていますが
 まったく勝利に近づいている印象を受けませんでしたね。
 コーディはよりヘビー級に近いスタイルに改善する必要があります。
 特に今回のオートンのようにコーディに合わせて鋭い受け身を取ってくれない相手には。
 ムーンサルトは不要で、むしろマスクを叩き付ける、のを常時フィニッシャーにするぐらいで良い。
 格の差があるのは承知の上で、
 それでもコーディが現IC王者という立場から1つの試合の中で鬩ぎ合う事は出来ると期待していたのに
 コーディがまだまだトップに届かない事だけが伝えられた内容。
 平均より少し上。

F世界ヘビー級王座戦:マーク・ヘンリー(ch)vs.ビッグ・ショー
 最後がスーパープレックスによるリング倒壊エンドで、それが全てな試合ではあるものの
 そこまでの戦いの中でこれまで積み上げてきたヘンリーの強さがまったく見えなかった事は非難せざるを得ない。
 戦略的に膝を狙う展開に出てはいたもののそれだけなら他の誰だって出来るレベルです。
 ヘンリーが王座を持つに値する所まで浮上できたのは
 重量級の強さ、怖さを提示した上で戦略性を味付けしたから。
 重量級は余り持ち合わせていない戦略性だからこそ、そこに希少価値が生まれたのです。
 前提条件を満たさなければ退屈で技術的にも見るべきものがない試合でしかありません。
 終盤前に様式立ててフィニッシュへの流れは紡いだものの
 エンディングありきの能力発揮でしかなかった。
 評価としてはエンディングのサプライズ込みで平均レベルといった所か。

GWWE王座戦、ラスト・マン・スタンディング:アルベルト・デル・リオ(ch)vs.ジョン・シナ
 リングが倒壊したまま試合を行うという
 これまでにないシチュエーションによる雰囲気があります。
 試合開始はロドリゲスを絡めたデル・リオの蹴り。
 これでシナがあっさりダウンしたのは勿体ない。
 ベビーフェイスvs.ヒールとはいえ特別な雰囲気の中行うのですから
 その雰囲気に試合を合わせるためのレスリングが必要でした。
 企業側がレスリングを奨励していない事情は酌みますけどね。

 最初はシナの良くある問題点として片づけ、それ以降のリングでの戦いはどうか。
 デル・リオの蹴りがお手軽に使われていて、
 その蹴りに一種類の意味合いしかないのはデル・リオの良くある問題点です。
 一方でシナの特殊形式における底知れぬ表現力には目を見張るものがあります。
 リングが傾いている状況を反映させた技シーンがありましたし、
 ロープ・ワーク不可で技の置き方が限られる中で
 同じ技の連続技に打開策を見出したのも素晴らしい。
 ダウン・カウントに対する意識も人一倍強いものがありました。
 デル・リオもこのシナの領域についていって試合を運んでおり、
 両者の融合という点ではこれまでの中で一番でしょう。

 壊れた鉄柱を利用したスポット、デル・リオのスリーパー、
 リングからフェンスへの放り投げなど特殊な状況下ならではのスポットもあり、
 実に素晴らしい試合ですが好勝負と呼ぶにはバック・ステージの攻防に問題がある。
 このバック・ステージの攻防は良くある筋書をなぞるだけのもの。
 まともに試合を行えないHHHには打ってつけでも
 形式を試合の中で表現していたこの2人には無用の長物です。
 メインとしてのボリューム感を出すための選択肢ですが、
 かつてシナvs.エッジでもあったかと思いますが、
 どうしてもリング⇔バック・ステージ間の移行がラスト・マン・スタンディングというルールとフィットせず浮いてしまうのです。
 シナの場合、前半を通常形式、後半をラスト・マン・スタンディングと分けずに
 試合の最初からラスト・マン・スタンディングとして行いますから余計にネックになる。
 バック・ステージ・シーン前後でどこまでの攻防をやるかというバランスも考えなければいけませんし、
 理想はやはり序盤をレスリングで水増し、
 中盤で場外戦を入れるとしても戦場は入場ステージまでに抑えるという形だったと思いますね。

 後は業界初のシチュエーションという事で個人的にはこの状況を活かしたフィニッシュを望んでしまいます。
 何度もある状況ではないのですからデル・リオのサブミッションで終えても良かったと思いますよ。
 ギブ・アップでなくてもレフェリー・ストップという判断もありますし。
 まあリングの傾きは分かりにくいですし、ロープ+ターン・バックルはシナvs.ウマガで既に使っていますから
 結局のところ乱入+ベルト攻撃という王道がベストなのかもしれません。
 ただその試行錯誤がなくて一択で決まってしまっているんじゃないかと思う事がWWEを見ていると時々ありますからね。
 
 好勝負に少し届かず。

総評
 AからFは基本的に失敗試合に属しますが
 カードの配置の妙ですらすらとみていける。
 そしてセミのインパクトあるエンディングを受け継いでの
 メインの1試合で大会の印象を強く決定づけているので
 実質的には1試合のみの大会ですがそれ以上に楽しめる。
 (執筆日:10/24/11)
DVD Rating:★★☆☆☆

注目試合の詳細

GWWE王座戦、ラスト・マン・スタンディング:アルベルト・デル・リオ(ch)vs.ジョン・シナ
 リングポストが1本倒れているためリングが傾き、ロープが緩んでいる状態。
 ゴングが鳴るなりデル・リオはロドリゲスをシナの方に押し飛ばす。担いだシナを蹴り倒しストンピング。ダウンしたシナに蹴りをいれ鉄柱にもぶつける。引 き寄せられたシナがショルダー・スルー。ボディ・スラムからエルボー・ドロップを3連発。起き上がったデル・リオにジャブを打っていく。デル・リオは食ら いながらも蹴りで倒す。ドロップ・キック。カウント4。バック・ドロップ。もう1発。3発目。カウント7。シナがAAを狙う。デル・リオがのがれバック・ クラッカー。カウント5。ブレーン・バスター。2発目。3発目を狙う。シナが逆に投げる。カウント6で同時に起き上がる。
 シナがフライング・ショルダー・タックル連発。You can’t see me。ロープがないのでそのままファイブ・ナックル・シャッフル。AAへ。デル・リオがのがれジャーマン。カウント5で起き上がったシナは近くのデル・リ オを即座に蹴りつける。ガット・レンチ・スープレックス。カウント4で起き上がったデル・リオにクローズラインを放つ。デル・リオがかわしバック・ブリー カー。シナを倒れた鉄柱の下敷きにすると鉄柱越しにダブル・ストンプ。カウント8で起き上がったのを見て突進。シナがカウンターで担ぎAA。カウント6で シナが起き上がる。カウント8で起き上がったデル・リオを担ぐ。邪魔してきたロドリゲスを蹴り飛ばす。デル・リオがその隙を突きスリーパー。もがくシナに ボディ・シザースを決めグラウンドに引きずり込む。気絶したとしてスリーパーをほどきカウントを要求。何とか起き上がったシナを場外に放ろうとする。シナ が体勢を入れ替えフェンスにぶつける。デル・リオが振り返しシナを鉄階段にぶつける。ロドリゲスがシナに襲い掛かろうとする。シナがロドリゲスを担ぎ壊れ た鉄柱をまたぐように股間にぶつける。リングに戻ったシナにデル・リオがドロップ・キック。シナがドロップ・トー・ホールドを決めると壊れた鉄柱の上に倒 れる。シーソー式に鉄柱が跳ね上がりロドリゲスは更に股間を打つ。シナが鉄階段を担ぎデル・リオに投げ飛ばす。デル・リオはかわすと殴り倒す。鉄階段を持 つとシナにぶつける。カウント8で起き上がったシナが殴りつけていく。
 そのまま入場口を通ってバック・ステージへ。
物ののったテーブルをぶつける。横にあったキャスターつきの棚を倒してデル・リオを潰そうとする。デル・リオはかろうじてかわすとその棚の上でファルコ ン・アロー。シナがカウント7で起き上がるも倒れこむ。デル・リオが照明の前に置いた衝立をシナの上に倒していく。カウント8でシナが起き上がる。会場に 戻ってくる。ロドリゲスがシナに突っかかる。その隙をついてデル・リオがシナをV字のシンボルにぶつける。テーブルの上にもたれさせると入場セットを上っ ていく。シナが起き上がりデル・リオを引っ張ってテーブルの上に落とす。カウント8でデル・リオが起き上がる。観客席を通ってリングサイドまで戻ってく る。
 デル・リオがシナを実況席に放る。シナがデル・リオをフェンスにぶつけロドリゲスにクローズライン。デル・リオがシナを鉄柱に背中からぶつけ延髄切りを 狙うも鉄柱に誤爆。シナは担ぐとスペイン語実況席の横に置いた鉄階段を上っていく。スペイン語実況席へのAA。リングに戻りカウントを要求。ミズ、トゥ ルースが乱入してきてシナを殴り倒す。ミズがシナにスカル・クラッシング・フィナーレ。トゥルースが続けてSTO。デル・リオがカウント5で起き上がる。 シナがぎりぎり起き上がる。デル・リオが力を振り絞ってリングに上がりベルトを叩き付ける。デル・リオは勢い余って場外に転げ落ちるもフェンスを支えにカ ウント8で起き上がる。シナが起き上がろうとするもカウント10。デル・リオの防衛。
[Winner:アルベルト・デル・リオ(26:59)]

試合結果

@タッグ王座戦:エア・ブーン(エヴァン・ボーン、コフィ・キングストン)(ch)vs.ドルフ・ジグラー、ジャック・スワガー
AUS王座戦:ドルフ・ジグラー(ch)vs.ザック・ライダー
Bディーバス王座戦:べス・フェニックス(ch)vs.イヴ・トーレス
Cシェーマスvs.クリスチャン
Dザ・ミズ、Rトゥルースvs.CMパンク、HHH
Eコーディ・ローデスvs.ランディ・オートン
F世界ヘビー級王座戦:マーク・ヘンリー(ch)vs.ビッグ・ショー(ノー・コンテスト)
GWWE王座戦、ラスト・マン・スタンディング:アルベルト・デル・リオ(ch)vs.ジョン・シナ