TOPアメリカン・プロレスWWE 2011年 →WWE:TLC 12/18/11

WWE:TLC 12/18/11の分析


名勝負 なし
好勝負 なし

@US王座戦:ドルフ・ジグラー(ch)vs.ザック・ライダー
 ジグラーは基本技をキレのある動作と抑揚でもって魅せてくる。
 今年の初めから既に見られた素養ですが、
 オーソドックスである事は時に無味乾燥になります。
 それが後一歩物足りない要素でした。
 しかし日本公演で見せたようにアピール能力が伸びてきた。
 試合の場面に合わせた表情や身振りが加わる事でよりドラマチックに映ります。
 腹筋までしていましたが、自分自身で浮ついた雰囲気を引き締めていたのも良い。
 流石にPPVですから日本公演のようにアピール過多では困ります。
 最盛期に突入したな、という印象でこのままトップ王座に移動して欲しい所です。
 一方のライダーはどこを取ってもジグラーには敵いません。
 試合運びも良質な技とWooWooWooアピールに支えられており次第点です。
 しかしムーブに意識的に浮遊感を加えているのが良い。
 プロレスは2人でやるものですから
 一部の能力に関してナンバー・ワンでなくても良いものです。
 その代りオンリー・ワンの存在である事は求められる。
 その浮遊感が金を払ってでも見たいものとまでは言わないが、
 スキット以外のリング内で少なからずそうあれたのは大きい。
 中々良い試合。

Aタッグ王座戦:コフィ・キングストン、エヴァン・ボーン(ch)vs.プリモ、エピコ
 エピコ、プリモ相手で比較的幅のある攻防を行える背景があるせいか
 これまでのエアブーンの試合の中では型が弱く流れが悪くなっている。
 プリモ、エピコの方も孤立のさせ方は焦点が不明瞭。
 そして終盤はプリモ、エピコの攻めなく終わる。
 ポテンシャルが無駄遣いされている印象しか受けない。
 少し悪い試合。

Bテーブルズ・マッチ:ウェイド・バレットvs.ランディ・オートン
 双方のフット・ワークは軽く、
 同時に打撃はボクシングのように重い。
 会場中に予め配置されたテーブル群に対して丁寧に攻防を見せていく。
 集中力の高い乱戦で感心しました。
 ただしそれは表裏一体の感想であった事が判明する。
 わたくし、テーブルズ・イズ・リーガルかと思っていましたが
 テーブル葬で決着のテーブルズ・マッチだったのでした。
 そうなるとどれも等価な見せ場でしかなかった事になる。
 そして実際この試合に第2ステージは用意されていません。
 憎しみと疾走感が上手く作り出されているから、
 ここからフォール、テーブル葬を織り交ぜて激化すれば素晴らしい試合になったでしょうね。
 詰まる所テーブルズ・イズ・リーガルの方が良かったよね、というお話。
 平均的な良試合。

Cディーバズ王座戦:ベス・フェニックス(ch)vs.ケリー・ケリー
 何度もやっているので
 ハードコアな(言い過ぎか)ケリーとストロングなベスの絡みは
 必ず一定のレベルを満たすようになっている。
 ケリーのロープ・ワークに溜息をつくのもお約束。
 試合時間との兼ね合いで
 ディーバの試合において肝となる中盤が軽いので
 トイレ休憩ではない箸休めの試合(余り褒め言葉になっていないが)になっている。
 少し悪い試合。

Dスレッジハンマー・ラダー・マッチ:トリプルHvs.ケビン・ナッシュ
 (ラダーを使って上空のスレッジハンマーを取れば凶器として使用可能というルール)
 HHHは拳を鋭く打つレスラーでしたが、
 体重の増加に伴い意図的かどうかは兎も角重みのある拳にシフト。
 それはナッシュと同タイプの拳です。
 お互い一歩も引かずになぐり合うので迫力があり、
 思った寄り良い試合になるか!?と期待感が芽生えてきます。
 フェンス、実況席とコンスタントに場所を変える事で面白い攻防。 
 普通なら試合の大勢を決定づける場外戦のスポットでもひるまず、
 お伽噺の住人のような化け物っぷりを続けます。
 HHHがラダーを使ったユニークな4の字でナッシュの脚を破壊するも
 パワーは封じられず場外落下する、という印象な中盤を挟んで終盤へ、という展開。
 率直に言って想像以上に面白かったですね。
 しかし元々グダグダな試合になるだろうな、という予測があったにも関わらず
 全力で攻めあった事実に対する驚きの麻薬が根底にはある。
 序盤はHHHvs.テイカーのような必殺技安売りと元となる考えは変わらないし、
 中盤は良質な展開ながらHHHの間が劣化している事は否めない。
 ここまでは良いが終盤になると誤魔化し切れず観る方を冷静に戻してしまった。
 そもそもこのルール、ラダーを上る事は必要条件ではありません。
 他の試合より明らかにスポットが詰め込まれて憎しみに満ち溢れた戦いであるはずなのに
 相手を叩きのめすという目的から試合が徐々に乖離していく。
 攻防の場所を移すという方法論も終盤においてはそれを助長するだけです。
 また最後の威圧的な表情をしたHHHによるハンマーを使ったフィニッシュ。
 試合を通じてここまでナッシュの脅威を高めてきたのに、
 一気に制裁の雰囲気に転換するのはナンセンスです。
 勿論ナッシュが6週間欠場するストーリーから考えれば
 こういう終わり方の方がやりやすいとは思いますけどね。
 平均的な良試合。

Eシェーマスvs.ジャック・スワガー
 シェーマスはそろそろベビーフェイスが板についてきたか。
 ハイ・テンションな攻めと展開上ペースを落とすべき所とが齟齬を起こしていない。
 スワガーも日本公演でも見せていた良い攻め方を見せています。
 ただ試合時間が短いためショート・カットで構築しており
 その犠牲として余り読後感が残らない内容となっている。
 悪くない試合。

F世界ヘビー級王座戦、チェアーズ・マッチ:マーク・ヘンリー(ch)vs.ビッグ・ショー
 5分しかない試合ですが接触前の時間が地味に長い。
 筋書き通りの一言で説明のつく内容です。
 椅子一発一発の扱いも軽い。
 ヘンリーが負傷していたという事だし、
 長くした所で何が良くなるというものでもない。
 ですからチェアーズ・マッチというルールを利用して絵だけ作ったのはある意味正解ともいえる。
 悪い試合。

G世界ヘビー級王座戦:ビッグ・ショー(ch)vs.ダニエル・ブライアン
 レベル・ロックを決めるかと思ったがカバーだけで終了。
 ヒールとして後にアピールするネタのためだろうが
 MITBによるものとはいえ王座移動なんだから、とは思う。
 Rawの結果では即座にヒールになる事はないようだが、
 個人的な予測ではコールと合体して掌返したヒール・ターンをやりそうな気がしている。

HIC王座戦:コーディ・ローデス(ch)vs.ブッカーT
 ブッカーTはリズムの取りにくいステップから打撃。
 でもこれがブッカーTでもあるので劣化とは言えない。
 以前と同じく好ましくない、と言うだけ。
 このPPVの中で2回襲撃されていた割に
 ブックはダメージも見られず押せ押せ。
 かといって感情が走っている訳でもないので
 ドラマは作られずブッカーTが試合しましたよ、という内容だけ。
 一度ダウンするとコーディの誘導についていけず、
 コーディが、ブックがダウンしている事に何かと理由をつけてあげようと苦心する始末です。
 試合開始時にベルト攻撃でも決めて最初からダウン・ベースにした方がやりやすかったのでは。
 最後のスピン・ルーニーの盛り上がり方は
 完全にレジェンドの技お披露目に対する盛り上がりと同質。
 悪い試合。

IWWE王座戦、TLCマッチ:CMパンク(ch)vs.アルベルト・デル・リオvs.ザ・ミズ
 3人の関係性が密接に絡み合わないと実現しない攻防はないし、
 デル・リオとミズがパンクの前では共闘するという展開もそんなに凝ったものではない。
 しかし驚くべきはそのテンポです。
 攻撃され引っ込んだ3人目が
 表舞台に戻ってこれる1回目の機会で必ず戻ってくる。
 スリリングなアクションで面白く、
 また誰にでも分かりやすいハード・ワークであるため盛り上がりやすいですね。
 ハイ・テンポで攻守を入れ替える内容においては
 誰がどの行動を行っても同じという考えに陥りがちですが
 デル・リオが行うべき所はデル・リオが、
 ミズが行うべき所はミズが、
 パンクが行うべき所はパンクが、と
 それぞれ自然に自分の役割をこなしている事には感心します。
 また手錠のアイディアは実にユニークでした。
 最後の前振りになっているので単なるネタでないのも良い。
 只個人的には身動き取れなくなったパンクがダウンし、
 ミズとデル・リオの攻防に1回焦点を当てた方がよりダイナミックに展開が見えた印象を受けましたね。
 好勝負に少し届かず。

総評
 内容(良質な試合群)、カード(レジェンドの試合復帰)、結果(衝撃の王座移動)と三拍子揃っています。
 また10試合と試合数が多い事から
 全体的にテンポの速い試合が多く、一気に見れる大会となっています。
DVD Rating:★★★☆☆
(執筆日:12/20/11)

注目試合の詳細

IWWE王座戦、TLCマッチ:CMパンク(ch)vs.アルベルト・デル・リオvs.ザ・ミズ
 パンクが2人に蹴りかかるもミズ、デル・リオにぼこぼこにされる。デル・リオ、ミズは視線を交わすもまずはパンク狙いで一致した様子。2人でパンクを持ち上げロープの上に落としたりブレーン・バスターを決める。場外に下りてラダーを取りに行く。ロドリゲスを威嚇したミズの隙を突きデル・リオが椅子で突く。ラダーを持ったデル・リオにトぺ・スイシーダ。椅子を持ってリングに入ろうとする。ミズがその隙を突いて殴りかかる。椅子を踏み台にとびかかる。パンクはかわすとハイ・ニー。椅子へのブルドッグを狙う。ミズが防ぎ椅子へのバック・ドロップ。場外に下りラダーをリングに入れようとする。デル・リオが襲い掛かりエプロンに立てかけられたラダーへショルダー・スルー。ラダーをリングに入れようとする。パンクがスライディング・キックを狙う。かわされるもラダー越しに蹴り飛ばす。テーブルへのブレーン・バスターを狙う。デル・リオが後ろに着地しテーブルへのジャーマンを狙う。パンクが防ぎネック・ブリーカー。ミズがパンクを椅子で突く。椅子を叩き付けようとする。パンクはかわして鉄柱に誤爆させると椅子をミズの背中に連打。ミズをフェンスの上にのせると椅子を踏み台にハイ・ニー。リング中央にラダーを立て上っていく。ベルトに届きそうになるもロドリゲスが入ってきてパンクに手錠をかけラダーとつなぐ。デル・リオがスーパー・キック。
 ラダーを上っていく。パンクは起き上がるとラダーの支えを蹴り壊して自由になるとラダーを倒す。手錠でデル・リオを殴りつける。ロープにラダーを立てかけるとデル・リオにショルダー・スルーを決めて落とす。場外にラダーを取りに行く。その後ろからミズがラダーを持ってリングに入る。気づいたパンクをミズがラダーで攻撃。ラダーを上っていく。パンクが引きずりおろしGTSを狙うも防がれる。エプロンに出すと場外へのトルネードDDTの体勢。デル・リオが駆け上がって延髄切り。パンクは場外テーブルの上に落ちる。デル・リオはミズをテーブルにぶつけ椅子を叩き付ける。ラダーを使ってアーム・バー。パンクに椅子を叩き付ける。椅子を使ってアーム・バー。
 リングに入りラダーを上っていく。ミズ、パンクがリングに入る。2人でラダーを倒すとデル・リオはロープを跨ぐように落下。パンクとミズがなぐり合う。クローズライン相打ち。全員ダウン。
 ロドリゲスがラダーを上っていく。ミズとパンクがラダーを倒す。ロドリゲスが場外テーブルの上に落下。パンクがGTSを狙う。ミズが逃れスカル・クラッシング・フィナーレを狙う。パンクがコーナーに押し込みバック・エルボー。突進。ミズはかわしてコーナーに激突させると手錠をターン・バックルにつなぐ。ミズはわざと目の前に立って挑発する。パンクの拳は届かないがハイ・キックがヒット。ミズがダウン。パンクは金具を外そうとし始める。一方でデル・リオとミズが起き上がり中央にラダーを立てゆっくりと登っていく。パンクが金具を外してラダーを上っていく。天辺で2人を殴りつける。ミズを殴り落とす。デル・リオにハイ・キックを決め落とす。ベルトに手を伸ばす。ミズが脚を引っ張り落とす。ラダーを上っていく。パンクが引きずりおろしGTS。ラダーを上っていきベルトを取る。
[Winner:CMパンク(18:50)]

試合結果

@US王座戦:ドルフ・ジグラー(ch)vs.ザック・ライダー(新チャンピオン!)
Aタッグ王座戦:コフィ・キングストン、エヴァン・ボーン(ch)vs.プリモ、エピコ
Bテーブルズ・マッチ:ウェイド・バレットvs.ランディ・オートン
Cディーバズ王座戦:ベス・フェニックス(ch)vs.ケリー・ケリー
Dスレッジハンマー・ラダー・マッチ:トリプルHvs.ケビン・ナッシュ
Eシェーマスvs.ジャック・スワガー
F世界ヘビー級王座戦、チェアーズ・マッチ:マーク・ヘンリー(ch)vs.ビッグ・ショー(新チャンピオン!)
G世界ヘビー級王座戦:ビッグ・ショー(ch)vs.ダニエル・ブライアン(新チャンピオン!)
HIC王座戦:コーディ・ローデス(ch)vs.ブッカーT
IWWE王座戦、TLCマッチ:CMパンク(ch)vs.アルベルト・デル・リオvs.ザ・ミズ