TOPアメリカン・プロレス個人物・特集DVD→TNA:Kurt Angle Champions Disc Two

TNA:Kurt Angle Champions Disc Twoの分析


名勝負 TNA王座戦:カート・アングル(ch)vs.サモア・ジョー(Lockdown 4/13/08)
好勝負 3代目IWGP王座争奪戦:カート・アングル(th)vs.永田裕志(新日本プロレス/TNA 1/4/08)

2枚、約6時間55分です。
Cカート・アングル、AJスタイルズ、トムコvs.サモア・ジョー、ケビン・ナッシュ、エリック・ヤング(Turning Point 12/2/07)
 ホールが見事に欠場して、
 もうこの試合の売りはなくなりましたが
 試合前にジョーがシュート発言をして最大の見せ場を作ってくれました。
 試合はジョーの発言で15分の予定が10分に削られ
 ホールがヤングになってアドリブが必要になった他
 上記発言でナッシュとジョーはぎくしゃくしていて必然の結果として悪い。

Dウィナー・テイク・オール:カート・アングル(TNA、 IWGP ch)vs.サモア・ジョー(X、Tag ch)(Hard Justice 8/12/07)
 これで4戦目ですがその中で一番悪いです。
 これといった攻防がなく最後はカレンが絡んで・・・
 平均的な良試合程度。
 また全王座を賭けるというのは非常に馬鹿げていて団体にとって良いことではない。
  
EXディビジョン王座戦:カート・アングル(ch)vs.ジェイ・リーサル(No Surrender 9/9/07)
 PPVでXディビジョンと当たるのはこれが初かな。
 それぞれ階級の違う相手の魅力を引き出していて中々良い試合に。
 メインが控えているためそこまでじっくりやらなかったのもあるんでしょうが
 取り敢えずカートはXディビジョンともできそうだという事で安心です。

FTNA王座戦:カート・アングル(ch)vs.スティング(Bound for Glory 10/14/07)
 カート、ロートル化説もささやかれる中
 俺はまだ出来るぞとカートが気を吐きました。
 初めこそ見合う場面もありましたが
 すぐにスティングを掌握し
 踊らせながら熱戦を展開。
 祭典のメインなのに乱入祭りにしたのも
 このカードなら仕方ないことでしょう。
 カートは450°スプラッシュを見せてくれました。
 そしてスティングも最後の最後でやってくれました。
 バットを真剣白羽取りするシーンで
 反応が遅れて頭部で受けたのに
 防いだ振りして試合を進めるも流血してしまうという
 コメディー大賞物の傑作スポットを披露。
 これには何度も巻き戻し→再生をさせられましたよ。
 予想以上の出来で中々良い試合。
 しかしこんなのがTNAの年間最高試合賞獲得しているんですよね。
 これではファンにTNAの修正を期待できそうにもない。

GTNA王座戦:スティング(ch)vs.カート・アングル(impact 10/23/07)
 一夜でカートに王座を戻したのを褒めるべきか、
 そこまでしてBfGのメインを演出するか、と叱るべきか。
 それが問題だ。
 試合は昨夜に続いてカートがグッド・ワークを見せましたが
 impactスケール+チープ・フィニッシュでは
 平均より少し上という評価。 

H3代目IWGP王座争奪戦:カート・アングル(th)vs.永田裕志(新日本プロレス/TNA 1/4/08)
 投げと場外での間空けを効果的に使いながら
 カート、もしくは永田しか知らなくても通用する舞台作りをすると
 終盤はレスリングの素地を利用し
 カート対ベノワを思わせるような中々いかした必殺技の攻防を見せます。
 派手な見た目に比べ深い領域でのクロスはありませんでしたが
 太平洋を越えた初対決という事を考えると上出来です。
 ぎりぎり好勝負。
 それにしても永田の白目が受け入れられている世界というのは何か変だ。
 永田はにらめっこ選手権に出れば良いのですよ。
 そうすればまさしく世界の永田になって
 フレアーと日本人ファンなんて紹介されませんぜ。

ITNA王座戦:カート・アングル(ch)vs.サモア・ジョー(Lockdown 4/13/08)
まず試合前にカートがカレンを退場させた事を評価します。
 不透明決着が多いという事を
 番組内で暗に認め改善する意思を示しました。

 さて試合ですが・・・
 カートよ、天晴れ。
 MMAスタイルでやると予告されていたとはいえ
 MMAを要素としてではなく
 風景として直輸入するとは思いませんでした。
 まずマウントを取って
 のりかかってパンチするなりサブミッションを狙いにいったりというアレですね。
 その間に純プロレス・ムーブをハイ・スポットとして挟む。
 言うなれば今までの物が
 プロレスで持って格闘を表現した物ならば
 これはMMAで持ってプロレスを表現しています。

 TNA信者に媚びて大外れになるかと穿った見方をしていましたが
 これは衝撃的且つ革新的なアイデアです。
 観客は微妙な反応で只騒いでいる感がいつもより強いですし、
 つまらないなんて声も聞かれますが
 そんな奴は放っておきなさい。
 時代の先端を行く芸術家が大衆に理解されるとは限りません。
 ゴッホしかり。カフカしかり。
 カート・アングルよ。
 この試合を誇りに思いなさい。
 この日TNAはTrue Wrestlingになったのですから。

 もう1つ素晴らしい点を書きとめておかねばなりません。
 MMAに合わせダメージ値を見せずに
 決定打という要素を取り入れた
 アンチ・クライマックス方式を取っているのですけれども締め方が妙手であります。
 この特異な空間を切り分ける境界装置として使っていたケージを
 最後の最後で原点回帰させ武器として1回だけ使います。
 ああ、真に素晴らしい。

 次に欠点を振り返ります。
 まずジョーが敗北したらプロレスをやめると宣言しています。
 このストーリー・ラインは頂けません。
 純プロレスならともかく
 ここまでMMAを取り込んだ試合には合いません。
 拒否反応も予測できた状態で
 会場の観客の注意をリングに向ける要素を取り除くのは危険です。
 観客は試合を殺し得るという事は
 毎度のようにWWEを見上げているTNAなら理解していたはずです。

 そして何より最大のミステイクは、
 いやこれを過ちと表現するのは酷でしょうか、
 では最大の惜しむべらく点は、と言い直しますが
 この舞台に立つべき者はジョーではなかったという事です。
 ジョーは幾多の格闘表現をし
 その中でムーブをMMAからデフォルメさせましたが
 そこで表現しているのはあくまで
 強さを欲するという原初的欲求による格闘であり
 格闘競技ではありませんでした。
 それ故プロレスラーである彼が
 MMAの定型的攻防をそのまま真似する事が要求されるこの試合で
 完全に力を出し尽くせたか、それは大いに疑問です。
 彼は最善を尽くしましたが
 非選定者のトップに過ぎませんでした。

 では選ばれし者は誰か。
 このアイデアが自身を完全に成就できる人間は2人います。
 1人はプロレス、アマレス双方の
 最高の経歴を持つゴールド・メダリスト、カート・アングルでした。
 折りしもWWE脱退後彼はMMAに興味を示します。
 それは経歴を利用したアングルである可能性は多分にありますが
 実際にMMAのトレーニングをしていた事は間違いありません。
 そしてこの世界には”二重の歩く物”が存在します。
 それこそブロック・レスナーその人でした。
 アマレス、プロレスのキャリア、
 MMAへの興味(彼は実際に行動に移したという点で異なりますが)。
 それは非常に酷似しています。

 カート・アングルとブロック・レスナー。
 この舞台でこの2人が闘っていたならば
 名勝負というレベルを越えて歴史になっていたでしょう。
 私はそれを試合中常に想像してしまうのです。
 ジョーはレスナーの存在に破れ
 運命を覆すことができませんでした。

 Lockdown 2008の一戦は
 カート・アングル対サモア・ジョーの数え歌のトップに位置すると共に
 2008年の年間最高試合候補に挙げられる試合となりました。
 TNAの歴史の中でヘビー級の試合としてはトップにランクしますし
 プロレスという歴史の中でも進化の1つを示したという点で特筆に価します。
 ぎりぎり名勝負。
 私はカート・アングルがインディーの野に降りた事を初めて感謝したのでした。


総評
 まとめ方はWWEに比べ下手な印象を受けますが
 カートの個人物は作られていませんし(ビデオこそありますが)
 意外にボリュームがあるので
 TNAを見ていないもののカートが気になっている方にはお勧めできます。
 試合前のストーリー・プロモも収録されているのも良いですね。
  これはWWEも見習うべきだと思います。
 一方でTNAを見ている方には特にお勧めしないですね。
 注目の試合も多い訳ではありませんし・・・。
 個人的にはオーディオ・コメンタリーが欲しかったですね。
 (執筆日:1/7/09)
DVD Rating:★★★☆☆

注目試合の詳細

E3代目IWGP王座争奪戦:カート・アングル(th)対永田裕志

  カートが不意をついて襲いかかる。
  喉に足を押しつける。
  永田はカートの胸を突く。
  つき返してきたカートにエルボーを入れロープに振ろうとする。
  カートは振り返すとベリー・トゥー・ベリー。
  ジャーマンを狙う。
  永田がバック・エルボーで防ぐ。
  カートは張り手を決めるとロープに走る。
  永田がベリー・トゥー・ベリーを決める。
  顔面へのスライディング・キックへ。
  カートは避けると場外に逃げて間を置く。
  リングに戻る。
  レスリングの攻防から永田がヘッド・ロック。
  ロープに振られショルダー・タックル。
  ロープに走りビッグ・ブーツへ。
  避けられるもドロップ・トー・ホールドから永田ロックII。
  カートがすぐにロープへ逃げ場外に出る。
  間を置いてリングに戻る。
  バックの取り合いからカートがリスト・ロック。
  永田が取り返す。
  カートがエルボーを打っていく。
  永田がロー・キックで打ち返していく。
  ロープに振ろうとする。
  カートは振り返すとクローズラインへ。
  永田は避けると延髄切りへ。
  カートは避けるとベリー・トゥー・ベリー。
  カバーするもカウント1。
  アッパーカート。
  ロープに振ろうとする。
  永田が振り返しバック・エルボー。
  チン・ロック。
  ロープに振りクローズラインへ。
  カートは避けると脚にスピアー。
  永田がたまらず場外に避難。
  カートは後を追うと脚を攻撃。
  リングに戻して脚攻め。
  4の字に捕らえる。
  永田が反転させようとするも防がれる。
  永田がロープを掴む。
  カートは引き続き脚攻め。
  レッグ・ロックを狙う。
  永田は蹴りつけて防ぐと永田ロック。
  (ここからCM)
  カートがロープに脚をかける。
  永田が腕に蹴りを放ちビッグ・ブーツへ。
  カートは避けるとジャーマンを決める。
  (ここまでCM)
  もう1発。
  3発目。
  肩紐を外すとアングル・スラムを狙う。
  永田は避けるとエクスプロイダー。
  カバーするもカウント2。
  ブレーン・バスター3連発へ。
  カートが3発目を防ぎ脚を取るも
  永田が永田ロックIIに切り返す。
  カートが決められたまま脚を取りに行きアンクル・ロック。
  永田ロックIIに切り返す。
  アンクル・ロックに切り返そうとする。
  永田が蹴り飛ばし突進してきた所を永田ロックII。
  カートは回転して起き上がるとアングル・スラム。
  カバーするもカウントは2。
  ムーンサルトへ。
  永田は避けるとニー・ストライク。
  雪崩式ベリー・トゥー・ベリーも決めるがカウント2。
  永田ロックII。
  永田ロックIIIに移行しカバーに持っていくもカウント2。
  バックを取ろうとする。
  カートが脚を取るも永田が蹴飛ばす。
  打撃の打ち合い。
  永田がビッグ・ブーツを打てばカートもクローズラインを決め両者ダウン。
  永田がベリー・トゥー・ベリーを決めるもカウント2。
  ニー・ストライクへ。
  カートが受け止めアンクル・ロック。
  脚を巻きつけタップを奪う。


FTNA 王座戦:カート・アングル(ch)対サモア・ジョー

  カートがカレンを退場させゴングが鳴る。
  打撃で牽制。
  カートがロー・キックを放つ。
  ジョーがロー・キックを打ち返す。
  受け止められるや脚を取りに行く。
  カートがアンクル・ロックを狙うも
  ジョーの方が早くアンクル・ロック。
  カートがロープを掴む。
  カートが押し倒し倒すもロープ・ブレイクで離れる。
  カートがタックルからマウント・ポジション。
  パンチを入れるもロープをつかまれる。
  カートがタックルを狙いに行く。
  ジョーは頭部を蹴り飛ばすとマウントにいこうとする。
  カートは下になりながらも不利にならないようにもって行きロープを掴む。
  ジョーがカートの足を踏みつけ腰投げも次にいけず逃してしまう。
  もう1度腰投げで倒そうとする。
  カートが耐えバック・ドロップ。
  上にかぶさり変形のチキン・ウィング・クロス・フェイス。
  ジョーがロープに脚をかける。
  ジョーを殴りつけフロント・ヘッド・ロック。
  逃れられるもベリー・トゥー・ベリー。
  カバーするもジョーがロープを掴む。
  アッパーカートで倒すとマウントでパンチ。
  アーム・バーを狙う。
  ジョーがカバーの体勢に持っていこうとする。
  カートがロープを掴む。
  ジョーが殴り返しロープに走る。
  カートが脚にラリアット。
  4の字を決める。
  ジョーが苦しんでいる。
  何とか反転させるもカートがすぐロープを掴む。
  ジョーの脚を蹴りつけレッグ・ロック。
  同時にヘッド・ロック。
  ジョーは起き上がるとロープに走る。
  カートがベリー・トゥー・ベリーを狙う。
  ジョーが耳を叩きラリアット。
  両者ダウン。
  カートがコーナー上へ。
  ジョーがマッスル・バスターを狙う。
  カートがサンセット・フリップに切り返しアンクル・ロックへ。
  ジョーは体を反転させ蹴飛ばすと突進してきたカートにSTO。
  カバーするもカウント2。
  カートがサミング。
  ジョーがパワー・ボム。
  カウント2で返されるやストロング・ホールド。
  ロープに這い寄るカートを中央に戻しSTF。
  カートが決められたままアンクル・ロックを決める。
  ジョーが痛みの余りロックを外す。
  ジョーが体勢を入れ替えクロス・フェイス。
  カートが何とか逃げロープを掴む。
  レフェリーと言葉を交わしているジョーに突進。
  ジョーがクロス・フェイスに捕らえる。
  カートは起き上がるとアングル・スラム。
  カバーするもカウント2。
  アンクル・ロック。
  ジョーが反転して蹴飛ばそうとするも防がれる。
  反転させるとスリーパーに引きずり込む。
  カートはレフェリーを掴んで動きロープを掴む。
  レフェリーに文句を言うジョーにカートがアングル・スラムを狙う。
  ジョーは逃れるとケージにぶつけスーパー・キック。
  そしてマッスル・バスターで1,2,3!
  ジョーの勝利!

試合結果

@カート・アングル、AJスタイルズ、トムコvs.サモア・ジョー、ケビン・ナッシュ、エリック・ヤング(Turning Point 12/2/07)
Aウィナー・テイク・オール:カート・アングル(TNA、 IWGP ch)(新チャンピオン!)vs.サモア・ジョー(X、Tag ch)(Hard Justice 8/12/07)
BXディビジョン王座戦:カート・アングル(ch)vs.ジェイ・リーサル(新チャンピオン!)(No Surrender 9/9/07)
CTNA王座戦:カート・アングル(ch)vs.スティング(新チャンピオン!)(Bound for Glory 10/14/07)
DTNA王座戦:スティング(ch)vs.カート・アングル(新チャンピオン!)(impact 10/23/07)
E3代目IWGP王座争奪戦:カート・アングル(th)vs.永田裕志(新日本プロレス/TNA 1/4/08)
FTNA 王座戦:カート・アングル(ch)vs.サモア・ジョー(新チャンピオン!)(Lockdown 4/13/08)