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50-60年代のプロレス:流智美の黄金期プロレス50選 Vol.1 戦後悪役の権化 東郷&シークの分析


名勝負 なし
好勝負 なし

約3時間50分。

グッド・オールド・デイズ。古き良き時代。
若い頃は良かった。今時の若者は・・・って老人が愚痴れば
若者は反発するってのがお約束。
今回のアメプロ黄金期50年代の特集をしたこのDVDもその例には漏れません。
現代プロレスしか見てないファンにとっては
投げという投げもなくマット・レスリング中心の白黒映像なんて
つまらないの一言で切り捨てられてもおかしくありません。
それでもじっくりと腰をすえて見れば
今のプロレスは進化したのではなく、只変化しただけではないだろうか
何か根本的なことを見失ってやしないかと
考えさせられるプロレス省お墨付きの教科書であることが分かってくるのです。

このDVDはシカゴTVからの試合のみで構成されていますが、
生き字引きこと流智美大先生の解説がついているので
そのレスラーの歴史を知ることが出き、
普段の実況付き試合と違って
こういう楽しみ方もあるのかと目から鱗な内容になっています。

まずはヒールとはいかにあるべきかってのがこの第1巻のお題目。

根っからのヒールっていうとジャパニーズ・レスラーとアラビアン・レスラーってのがお決まり。
ソビエト・レスラーは70年代ぐらいから。

1.グレート東郷
 アメリカで超一流レスラーになったのは
 この人グレート東郷と馬場ぐらいか。
 戦争敗北者としての陰鬱な雰囲気を纏い
 ダーティ・レスリングでヒートを買い
 最後は引き分け狙いにいくという。
 技も少ない50年代において
 一極集中だけで2,30分の試合の試合が出来る所こそ
 超一流の証です。
 1,2試合目は中堅相手でそこそこの試合ですが

Bグレート東郷vs.バーン・ガニア(5/16/52)
 東郷は実にうさんくさい笑顔と仕草で試合前から沸かせます。
 試合は基本的にガニアのレスリング。
 それを壊さないよう東郷は受身で貢献するぐらいですね。
 短時間の確立されたやり取りを
 どう長時間に渡ってワン・パターンだと退屈させずに見せるか、に挑戦しています。
 1本目は素晴らしいフィニッシュでスリーパーを食らったガニアが
 (そう、この試合はスリーパー対決でもありますね)コーナーを蹴って潰しカウント3。
 後にブレットが同じ動きをしたことが記憶にありますね。
 1本落とすもスリーパーを炸裂させて優位に立っている東郷が
 そのまま勢いで押していくのが2本目。
 リアリティーある遺恨を描き出し、観客も東郷に憎しみをぶつけます。
 3本目はガニアが荒々しい攻めでリベンジ。
 爆発的な盛り上がりを生んでいます。
 勧善懲悪で大きな盛り上がりを生んでいますが
 もう1つ2つ要素が加わってほしいところですね。
 好勝負に少し届かず。
 (執筆日:3/4/12)

 グレート・ヤマト、ミスター・モトの試合はおまけみたいなもの。
 戦争経験がないので陰鬱な雰囲気が無く
 東郷に比べると見劣りします。
 それでも4試合目はヤマトの唯一の映像であったり
 (全盛期にマネージャーでもある奥さんに射殺されてしまったので)
 馬場のアメリカ時代の好敵手ダーネルが首を骨折しながらも
 ドロップ・キックまで放つプロとしての姿など見るべき点は多いです。
 また日本人悪役たるもの
 そのスタイルは柔道か相撲の2つしかないってところも押さえておくポイント。 
 モトはハワイアン横綱で日本の横綱と
 リングの中で試合したこともあるとか。
 この試合をするためにシカゴを離れたからこそ
 東郷が活躍する枠が開いた訳で
 廻り合わせってのは面白いものです。

2.ザ・シーク 
 狂人ギミックでキャメル・クラッチの瞬殺キャラ。
 目の肥えたファンからもなぜ支持されたのか
 その訳がこの試合から見えてきます。
 素晴らしいインサイド・ワークと柔軟な体を生かし
 時間切れなどのしっかりした試合を何度も何度も繰り広げ確固たる実力を知らしめたからこそ
 狂人キャラをやっても、ふとその片鱗が自然と見え
 ファンを納得させるという訳です。
 まさに40年計画。 
 収録されているどの試合も
 シークの本領発揮しまくり。
 しかしベビー陣はそれに対抗するだけの力量はなかったのが少し残念です。
 東郷に比べるとやや派手なので受け入れやすいでしょうね。

↓あと星一つはひとえに私が現代プロレスからのファンであるという理由だけです。
やや高いし万人向けとは言いにくいものの
素晴らしいDVDです。 
DVD Rating:★★★★☆

注目試合の詳細

B3本勝負:グレート東郷vs.バーン・ガニア(5/16/52)
  東郷は笑顔で握手に応じず人を食ったようにお辞儀。
  ガニアの素早い動きに翻弄され東郷は苛立っている。
  ガニアがアーム・ドラッグからキー・ロック。
  東郷はロープ・ブレイク時に不意打ち。
  ガニアもやり返す。
  ガニアが執拗なヘッド・ロック。
  お辞儀をする余裕すら見せる。
  東郷が髪を掴んで頭部を攻める。
  ガニアも腕攻めでペースを取り戻す。
  東郷は卑怯な戦法からヘッド・ロックに捕らえ拳を押し当てる。
  ガニアもラフになり拳をたたきつけていく。
  東郷も間を外しペースを乱そうとする。
  ガニアがアマレス・タックルからマット・レスリングへ。
  東郷もアーム・ロックに返す。
  ガニアは逃れるとドロップ・キックから猛攻撃。
  ロープに絡まった東郷にスピアー連発。
  東郷はヘッド・バッドで迎撃するとスリーパー!
  ガニアはコーナーを蹴り上げカバーの体勢にする!
  1,2,3!ガニアが先取!
  東郷がベア・ハグ。
  ガニアが逆にベア・ハグに返す。
  東郷は絆創膏が取れ流血。
  東郷は焦り頭部へ集中攻撃し追い込んでいく。
  ガニアは逃れると殴りつけていきドロップ・キックへ。
  東郷は避けて自爆させると首にチョップを叩き込みスリーパー!
  東郷が2本目を取る!
  試合開始前に回復したガニアは殴りまくり蹴りまくる。
  東郷も投げ飛ばし場外に落とす。
  東郷はガニアが戻ってきたところで不意打ち。
  ガニアはショルダー・タックルにニー・リフトと荒々しい攻めを見せる。
  東郷はヘッド・ロックで何とかペースを落とそうとする。
  しかしガニアは防いでいきエルボー・スマッシュからスリーパー!
  レフェリー・ストップで2対1!ガニアが勝利!
  東郷は負けを認めず抗議している。


Gザ・シーク、アート・ニールソンvs.ラリー・シェーン、ビリー・ゴエル
  ニールソン対シェーンで試合開始。
  ニールソンが腕を取る。
  シェーンはなんとか逃れようとするも髪を掴まれたりして防がれる。
  細かなタッチを繰り返しロープを悪用したりしてシェーンの腕を執拗に攻める。
  シェーンはシークを殴りつけていき交代に成功。
  ゴエルはシークに攻め入るも腕を取られ捕まる。 
  逃れても相手陣営のため2人目に邪魔される。
  それでも交代に成功。
  シェーンはドロップ・キックを連発していく。
  ニールソンは慌てて自陣に逃げていく。
  ニールソンはシェーンの脚を取りドロップ・キックを防ぐ狙い。
  シェーンが攻撃に回ったと思いきやニールソンはレフェリーの目を盗んでチョーク。
  シェーンがシークを攻めタックル連発。
  しかしシークは飛び上がってダメージを軽減しボディ・スラムに返す。
  ゴエルはペースを落としシークを弱らせていく。
  ニールソンがリングに入って相手の攻撃の邪魔をする。
  シークは何とかニールソンとタッチ。
  しかし流れはベビー・チームのまま。
  ゴエルがニールソンの腕を攻める。
  交代したシークは劣勢だったがタックルを飛び上がって受け流すと
  ゴエルの背中にタックルを決めアラビアン・バック・ブリーカー!
  1本目を先取する!
  出てきたシェーンがシークにタックル連発。
  避けられるや肩に飛び乗り首4の字へ。
  ゴエル対ニールソンになる。
  体格で勝るニールソンはベア・ハグにパンチ。
  ゴエルはシークにボディ・スラム連発。
  シークは体勢を入れ替えチョーク。
  レフェリーは反則を取り1対1となる!
  シークはロープで勢いをつけゴエルにショルダー・タックル。
  もう一発狙うもショルダー・スルーに返される。
  ゴエルはドロップ・キックを決めシェーンと交代。
  シェーンも急降下ドロップ・キックを決め向かっていく。
  ヒートしているシェーンはニールソンにパンチも繰り出す。
  ニールソンはベア・ハグやロープを使った攻撃でペースを落とし一方的に攻めていく。
  交代したゴエルはシークに必殺技のジャックナイフ固めを狙うも決めるに至らない。
  劣勢になるもゴエルは反撃しシェーント交代。
  シェーンがタックル、ドロップ・キックと猛攻をかける。
  ヘッド・シザース連発もパワー・スラムに返される。
  シークは投げ飛ばしていく。
  シェーンがタックルに行く。
  コーナーのニールソンがシェーンの脚を払う。
  これが反則を取られ2対1でシェーン、ゴエルの勝利!  

試合結果

@3本勝負:グレート東郷vs.ザック・マーコフ(?/?/50)(1-0)(戦意喪失)
Aグレート東郷vs.グレート・ジョニー・バルボー(4/4/52)(DQ)
B3本勝負:グレート東郷vs.バーン・ガニア(5/16/52)(2-1)
Cザ・グレート・ヤマトvs.ビリー・ダーネル(8/28/54)(タイム・リミット・ドロー)
Dミスター・モトvs.マイティ・アトラス(1?2?/?/50)(タイム・リミット・ドロー)
Eザ・シークvs.ハリー・ルイス
Fザ・シークvs.ビル・メルビー(タイム・リミット・ドロー)
G3本勝負:ザ・シーク、アート・ニールソンvs.ラリー・シェーン、ビリー・ゴエルス(2-1)